私は「コレ」で、会社を辞めます《リーディング・ハイ》
“私はコレで、会社を辞めました”
この言葉にピンとくる方! キャー、私と一緒、オーバー40仲間ですよね(笑) なんのこと? とおっしゃったお若いみなさま、小指を立てた中年男性が切なさそうにこの台詞をつぶやくという、1984年に大ヒットした禁煙パイポのCMのオチなのである。小指が何を指すか……おわかりかしら?
終身雇用が崩壊した現代、「コレ」にあたる、会社を辞める理由も多種多様になっているように思う。(女性問題で退職するなんていう、ある意味ツワモノはなかなかいないと思うが)
「コレ」= 条件の良い会社に転職するので
「コレ」= 会社がブラック企業だったから
「コレ」= 結婚するので
「コレ」= 本を読んだので ……んんん?
本を読んだ結果、会社を辞める。こんな理由、あまり聞かないのではないか。でも実在する話、私が退職を決めた理由なのである。こんな場で言うのがおこがましい私事なのだが、この夏、8年勤めた会社を退職する。退社を決心したきっかけは、本なのである。
今年から1日1冊、本を読んでいる。私が本を読むのは、読書自体が純粋に好きなことももちろんあるが、読書によって他人の経験を疑似体験し、その考えを自分に取り入れることができる、というメリットがあるからでもある。だから、できるだけポジティブな気持ちになれる本を読むようにしているし、成功している人、幸せになっている人の書く本を選ぶようにしている。
今年読んだ本には、ビジネスで成功されている方が書かれたものもたくさんあった。
『ゼロ』 堀江貴文
『天職』 秋元康 鈴木おさむ
『自由人の脳みそ』 高橋歩
量をこなすことで見えてくるものがある。それぞれ、活躍する場も年齢も境遇も違う。共通するのは、それぞれの分野で成功しているということだけなのだが、皆さん、同じことを仰っていることに気付く。
“時間とは命そのもの” by ホリエモン
“やりたいことをやるだけの時間しかない” by 秋元さん
“やりたくないことをやっている暇はない” by 高橋くん
ここまでくると、ある意味、彼らに洗脳されている気がしてくる(笑) そう、成功している人たちは、自分がやりたいことしかやっていない。やりたいことをして、暮らしていくのに必要なお金は稼いでいる。そして、この法則をいろんな本で何度も読むうちに、全くやりがいを感じていない今の仕事を辞めてしまえ、と思うようになってしまったのだ。あらら、タイヘン!
私、今の会社に就職する前までは転職マニアだった。長く続いて4年、短い会社だと半年で辞めてしまったこともある。やりたい仕事、積みたいキャリアによって会社を転職し、夢中で仕事をして納得し、次の会社に転職する。こう言えばカッコイイが、体が持たずに2-4年で会社を辞めていたというのが事実である。
そんな中で、今の会社は異例の8年。理由は簡単である。今までの会社に比べて超~楽だから。今の会社に入る際、仕事の内容より仕事のラクさを重視した。仕事はお金を得るだけの手段と割り切り、クビにならない(外資系なのでありえるのだ)程度に仕事をして、今までの会社のようにのめり込んで自滅しないよう注意していた。休みは取りやすいし出社はフレックスタイム制、夕方疲れたらヨガをしに外出して、また戻って残業する、なんて好き勝手なことをさせて頂き、有難い環境ではあった。
漠然と、定年までこの会社に居ることはないだろう、とは感じていたが、会社を辞める決定的な理由もなく、あと数年はこの会社にいるだろう、と考えていた。なので、今年前半での自分の心変わりに、本当にびっくりしている。というか、本さえ読まなければ、ぬくぬくとしたぬるま湯から飛び出すこともなかったのに、とメンドウに思う気持ちも、正直言うと、ある。
コレさえ、本さえ読んでなければ、会社を辞めずにすんだのに……
でも、『歩き続ければ、大丈夫』(佐藤芳之著)を読んで、そんな後悔もふっとんだ。著者は32歳でアフリカ・ケニアで起業して以来、73歳(2012年当時)でもまだまだ新しい事業にチャレンジしている起業家である。なんせアフリカという地で起業しているくらいの方である。広大な大地のように力強いメッセージが、私のちっぽけな不安を吹き飛ばしてしまった。
“やって後悔することなど、まずないのです”
“フットファースト(走りだしてから考える)”
“どんなにすごい人でも、「ゼロ」からのスタートです”
同じようなことを、他の成功者たちもやはりおっしゃっていた。世間的に失敗と言われる経験も、その後の成功の基礎となる。なので、恐れることなく、まず始めてみよう。70歳を超えてまだチャレンジし続けている佐藤さんがそうおっしゃる。今佐藤さんが手がけているビジネスは、もしかすると自分が生きている間に日の目を見ないかもしれない。それでも、今後の世界が良くなることを夢見て、チャレンジし続けている。ならば、私だって、何かできるのではないか。自分が本当にやりたいことを通して。
退職後のプランは特に決めていない。決めてしまうと限定されてしまいそうなので、やりたいことをいっぱいやってみて、その中でピンとくる方向で何かが始まるだろうと思っている。音楽とお酒と恋の国に長期滞在するのもいいし、小さなビジネスを始めてみるのも面白そうだと思う。集中的にしてみたい勉強もあるし、本もじっくり取り組める長編のもの、苦手な分野のものを読みたい。日本の文化の着物や日舞の世界もいいな。電撃結婚なんかしたら、専業主婦社長になって稼いでやる(笑) なーんて、たくさん書いてみるのも、佐藤さんの“やりたいことは言葉にする”のアドバイスのおかげだ。
“人生に無限の可能性なんてないのだけれど、最初の一歩を踏み出せば、今は想像もつかないほど遠くまで行けるかもしれない”
もうすぐ私は最初の一歩を踏み出す。想像もつなかいほど遠い場所、どんな風景が見えてくるのだろうか。
退職の理由を尋ねられた時、本が理由とはさすがに言えず、小指を立てることなどもっとできず(笑)、「時間がもったいないから」と専ら答えるようにしている。ホント、やりたくないことをしている時間なんて、私の人生でこれっぽっちもないのよね。
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