ライティング・ラボ

○○は なんて なくのかな? 1歳の娘に聞いた結果……!



記事:西部直樹(ライティング・ラボ)

 

 

結婚して数年して子どもが出来た。
妻の妊娠がわかった時、二人で話し合ったことがある。

 

まだ見ぬ我が子へ

 

どんな子が生まれても、私たちの子どもだ(私が高齢なので、遺伝子の劣化から、そんな心配をしていた)

 

本が好きな子にしたい。

 

3年騙しくらいをしかけよう(まあ、お父さんは実は金星人だよとか、他愛のない嘘をついて騙してみたいと思ったのである)

 

最初のことは、幸い杞憂に終わった。

 

二つ目、最初の子どもは、妻のお腹にいる頃から本の読み聞かせをし、生まれてからはまだ文字もわからない頃でも、これでもかと絵本を読んで聞かせた。
お陰で、本が好きな子どもになった。
図書館や書店、Book○○○に出かけるというと、何より喜ぶ子どもになった。
本が好きになりすぎて、試験期間中でも試験とは関係のない本を読んでばかりで、親としては嘆くことしきりではあるが……。

 

三番目は、もう、どんなことをいったか忘れたので、子どもたちはいまだに騙されたままである。多分、おそらく。

 

夫婦して、ロジカル系の講師をしながら、お笑いは好きである。
人のを見て笑うより、人を笑わせる人になりたいと思っている。

 

ディベートをしているというと、ガチガチの冷たい論理派と思われるが、ロジカルな人たちは、冗談もうまい。笑いの一つのツボは、予想を外すことにある。
ロジカルな落としどころがわかっていれば、それだけ逆に外し方も心得たものなのだ。

 

上の子が小さい頃は、家の中ではこんな会話がよくなされていた。

 

「いやあ、これって○○だよね」
「ふ~ん」
「なに、それ、今突っ込むんでしょ、せっかくのボケが……」
「え、そうだったの。ごめん、もう一回」
「いやあ、これって○○だよね」
「……なんだよ、それ!」
「遅い! もう一回」
「ええ~~、ご飯は?」
……

 

と修羅場が続いていたのである。

 

二人目の子ども、娘はこんな家庭内お笑い特訓道場を見て育ったのである。

 

二人目の子どもは一人目に比べると写真が少ないように、子育てはけっこう手を抜いてしまうのだが、読み聞かせは、それほど手を抜かなかった。
赤子の頃から、絵本を見せ、読み聞かせていた。

 

娘が一歳の頃だったろうか。
ブルーナの絵本をよく読み聞かせをしていた。
ブルーナは線のはっきりとした絵を描く画家である。ミッフィの生みの親だ。

 

その絵本は、動物が一ページに一つ載っていて、小さな子にはわかりやすい。

 

「これは、犬だね」
「これは、猫だ」
「これは、牛だよ」とか
子どもは何度も同じ本を読みたがるので、読む親は飽きてくる。けっこう辛い。

 

同じ絵本を同じように読むのに飽きてきた頃

「これは、わんちゃん、ワンワンだね」

「これは、にゃんこちゃん、ニャーニャー」

 

と、少しひねりを加え、さらに数十回目からは
「これは?」
「わん、わん」
「そうだ、いいねえ、これは」
「にゃ~」
と、指した絵の動物の鳴き真似をするようになった。
すべての動物が鳴くわけではない。
滅多に鳴き声を上げないキリンなどは、「それはね、じ~ら~ふ」って鳴くのよ。と適当に教えておいた。
全部適当だと、いずれ困るかも知れないので、さかなは「鳴かないねえ」と真実も伝えるのは怠らなかった。

 

何十回目か、いつものように読んでいた時のことだ。

「これは」と犬の絵を指す。
「にゃあ」
「それは、ねこ! ワンワンでしょう」
と少々のボケをかましてくようになった。
「じゃあ、これは」と、キリンを指す。
「……」
「そう、鳴かないねえ」
そして、「これは、なんて鳴くのかな」とカメを指した。
娘は、自分の右手の人差し指を自らの口に持っていき、そっと噛んだのである。

 

「おお、かめ、ね。それは、指をカメでしょう!」と突っ込んだ。
娘はどうだといわんばかりに笑っていたのである。

 

恐るべき一歳である。

 

と、素敵なボケを噛ましてくれた娘も、はやローティーン、思春期前期、気むずかしい年頃になってきた。

 

「○○ちゃん、可愛くなってきたね」と、世辞でも言おうものなら、すかさず、
「なに、それ、キモイ! 臭い!!!」

 

と突っ込まれるのである。
やれやれ。
楽しいボケと突っ込みは、彼女の思春期が終わるまではお預けのようである。

 

 

***
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2015-08-04 | Posted in ライティング・ラボ, 記事

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