僕は天狼院書店を本屋とは認めない
記事:TM(ライティング・ラボ)
2015年7月20日、リブロ池袋本店が独立してから30年という節目の年に閉店してしまった。
僕自身も、予備校時代に池袋の代々木ゼミナールの本科生だったこともあり、毎日池袋に通学していたが、1日12時間ほど勉強していた予備校生にとっては、リブロ池袋本店はいわば唯一の憩いの場であった。帰り道に勉強の本を探すついでに迷路のような店内を探検するのは、授業が終わってからのちょっとした楽しみだった。
まだ書店とカフェが一緒になったブック&カフェのようなおしゃれな書店が無かった時代。リブロ池袋本店は、埼玉の所沢に住む田舎者の僕からすると、もっとも大きくて、都会的な匂いがするワクワクする書店だった。
※余談だが、天狼院店主の三浦さんと僕は同い年。
しかも僕の地元、所沢の書店で働いていたことがあるらしい。
話をしてみると、彼が所沢にいた時も僕は地元・所沢から都心に通勤していたので、十数年前に若かりし頃の三浦さんの接客を受けていたのかもしれない。あれぐらい外見のインパクトがあると記憶に残っていそうだが、残念ながら全く覚えていない……。
閑話休題。
予備校時代にリブロ池袋本店に通っていた頃から約20年後。
利益は十分に出していたようだが、理由はどうであれ、リブロ池袋本店は閉店してしまった。
最終日の前日、お世話になったリブロ池袋本店の様子を見にいこうと立ち寄ってみたが、店内は不思議と、さっぱりしていた。お客さんも、店員も、著名人によって書かれた寄せ書きでさえも。
よく言えば明日で閉店するとは思えないほどきれいに棚に本が並んでいて、日常と違うことと言えば、いつもより少し人が多かったぐらいだ。
実際、最終日間際にリブロ池袋本店へ足を運んでいたお客さんの顔を見ても「あら。閉店しちゃうのね」程度の方がほとんどだったと思う。
今年に入り、リブロ池袋本店が閉店するというニュースを聞いたときは僕ももちろん悲しい気持ちになった。だけど、僕がリブロ池袋本店に足しげく通っていた1996年当時と違い、
今はAmazonや楽天で本を頼めば翌日、早ければ当日に欲しい本が届く恐ろしく便利な時代。残念ながらリブロ池袋本店が閉店することにより人々の生活が劇的に変わるわけではないのだ。
だけれどもリブロ池袋本店が閉店すると聞いて、それほどショックを受けなかった理由はそれだけなのか。書店が閉店することに慣れすぎているのだろうか。
いや、違う。他に理由があるはずだ。
僕自身、社会人になり実家を出てしまってから、ほとんどと言っていいほど池袋に寄ることがなくなってしまった。20代は渋谷で遊び、30代は銀座や恵比寿、六本木など年代に合った街で過ごすようになった。池袋に行っても若者だらけだし、オシャレでもないし美味しいお店がたくさんあるわけでもない。
それでもここ1年で池袋に行く機会が急激に増えているのだ。
その理由は即座に思い浮かんだ。
紛れもなく天狼院がオープンしてからなのだと。
もっと言うと、天狼院に行くために会社の近くでもないし、家への途中でもないのに好きでもない池袋の街に足を運んでいる
自分がいる。
つまり、リブロ池袋本店が閉店する前と後ではほとんど変わっていないのに天狼院がオープンする前と後で、行動が変わってしまっているのである。
では僕が天狼院に行くのはなぜなのか。
本の在庫数だって店内はコンビニよりも小さいのだから、欲しい本に巡り会える確率が高いわけでもない。だから天狼院に寄ったからといって毎回本を買うわけでもない。そう、天狼院は「書店」なのに本を買うことを目的にしている店ではないのだ。
それはよくある、書店が著者や編集者を呼んでイベントを行う最近流行り独立系書店とも違うし、サードプレイス的なおしゃれすぎるブック&カフェでもない。
一つ言えることは、天狼院ではライティングラボにマーケティングラボといった勉強系ラボから落語、英語、劇団、映画、漫画といった趣味系ラボまで様々なお客さんが主役となれる場が用意されている。天狼院のラボに行くと自分がスポットライトを浴びているような感覚を味わうことができる、そんな魅力に人々は天狼院に惹きつけられるのではないだろうか?
天狼院を通して、共通の趣味を持った人に出会い、しまいにはお客さんどうしで旅行に行ったりする。
天狼院(三浦さん)が狂っているのか、お客さんが狂っているのか、
両方なのかわからないけど(笑)、明らかに天狼院ができたことにより、劇的に人生が変わった人がいるのだ。それも一人や二人ではなく、数十人、いや、何の根拠もないが軽く3桁は超えているのではないか?
通常、小売店では自店の商圏で近隣の競合店の閉店があると
売上は10〜20%UPすることが多い。その逆もまた然りである。
だけれども、リブロが閉店したからといって、天狼院の売上が劇的に増えているわけではないと思う。もちろん日々の売上は順調に伸びていると思うのだが、それは競合店の閉店といった外的要因ではなく店主・三浦さんと、その周りのスタッフの妥協ない姿勢から生まれた結果であると思う。
周りの書店が開店しようと、閉店しようと天狼院は変わらない。たとえ隣に1,000坪の大型書店がオープンすることがあってもだ。
だから僕は天狼院を書店と認めない。書店という枠に収まらないと言った方が正しいのかもしれない。
三浦崇典という強烈な個性とパッションを持った店主が企画した天狼院の展開は、お客として見ていても予想外の企画が次々に起きる。
好き嫌いがはっきりする店でもあると思うが、「ごく普通の人の、生き方を変えてしまう」可能性を秘めていて、はまる人は本当に
はまる、取り扱い要注意の店でもある。
普通の人にとって、書店に行くために電車に乗り継いでまで行くことはあまりないかもしれないが、いわゆる代官山蔦屋書店や往来堂といった「本屋」とは違う何かを持っている。その「何か」を確かめに池袋に足を運ぶのも、悪くない休日の過ごし方かもしれない。
※ここまで書いておいて何だが、断っておくが僕は天狼院の大ファンではないし、マニアでもない。でも、不思議と足が池袋に向かってしまうのだ。その理由は天狼院の売り方にあるのだが、それはまた、別の話……。
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