メディアグランプリ

台湾のおばあちゃんが、日本人モジモジ夫婦に教えてくれたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:きよっしー(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「目の前のご老人。席譲ろうかな? あーでもなんかバリバリお元気そう。『わしを年寄り扱いするな!』って思われちゃうかな……」
 
電車に座っている時のこと。心の中でつぶやくことが何度あったでしょうか。
 
一番いいのはハナから座らず立つことなのでしょうが、私は席が空いていたら座ります。長時間乗る場合や、短距離でもクタクタに疲れていたり体調がイマイチの時は、なおさら座りたいというのが本音。
とはいえ勝手なもので、元気な時限定で「席を必要とする人がいるのなら譲りたい」という気持ちはあったりします。
お年寄りに限らず、妊婦さん(っぽい方)も同じ。マタニティーマークを見つけたらお譲りしていますが、マークがないと妊婦さんであるという確信が持てず、「お代わりしましょうか?」と声がけするのはひょっとして失礼かも……と悩むこともたまにあります。
 
そんな折、たまたまお友だちのFacebook投稿で「席譲ります。声かけてください」マークの存在を知りました。
速攻で注文し、つい一週間前にやっと届きました! そして何度か使う機会がありました。(コロナの影響で、外出の機会が激変していますが……)
 
今のところまだ声をかけていただいたことはないのですが、良くも悪くも周りを気にしすぎの私には、このマークをつけていることでむしろ安心して座っていられます。誰かへの思いやりのつもりが、一番恩恵を受けているのは自分かもしれません。自分への思いやりになっちゃいました。
 

 
「席を譲る」といえば、台北で出会った見知らぬおばあちゃんのやさしさを思い出さずにはいられません。
 
今年のお正月を台湾で過ごし、台北市内では地下鉄を利用しました。安くて早くて、とっても便利。市民の足として欠かせないものとなっているようです。
その地下鉄に、夫と二人で乗った時のこと。
 
車両は、所々とびとびで席が空いていました。私は座り、夫は私の目の前に立ってくれていました。
すると、すぐそばの優先席に座っていたおばあちゃんが、ゆったりと立って一般の席に移動されたのです。わざわざ手押し車のようなお買い物カートと一緒に。
おばあちゃんが席を移動したことで、優先席には2つ並びの空席ができました。言葉こそありませんでしたが、おばあちゃんはにこにことした表情と身振り手振りで、私たち夫婦に「どうぞここに二人で座ってね」といざなってくれているのが伝わってきました。
ああ、なんてやさしいおばあちゃん。
 
おばあちゃんのせっかくの好意は受け取りたい。しかし、そこは優先席。
オロオロする50歳と56歳のいいオトナすぎる我々夫婦。でもでもそこは、優先席。
 
あわわわわ。おばあちゃん、ごめんなさい。
私たちが座れないままモジモジしているうちに、あっという間に次の駅に停車。乗客の出入りがありました。
すると、です。
たった今移動して一般の席に座りなおしてくれたばかりのおばあちゃんが、またもや別の席に移動されたのです。そしてそこに、2つの空席ができました。
日本人モジモジ夫婦、しかもまだまだ元気な50代の私たち二人がそろって座れるように、やさしいおばあちゃんはわざわざ二度も席を移動してくださったのでした。
 
私たちは今度こそ、席に座らせていただきました。感謝の気持ちとともに。
その後数駅でおばあちゃんは降りていかれましたが、会釈と笑顔でせいいっぱいのお礼を伝えました。
 
なんてやさしいのでしょう。本来なら、私がおばあちゃんを労わる立場なのに。
旅先の台湾でふと周りを見渡せば、一見ツッパリ(死語?)風に見える若者がお年寄りに親切だったり、逆におじいちゃんおばあちゃんが見知らぬちびっこや子連れファミリーに親切だったり。世代を超えたやさしさと思いやりの交歓が、台湾の日常には溢れていました。
 
おばあちゃんのやさしさをすぐに受け取け取れないなんとも不甲斐ない私たちでしたが、案外日本人ってそういう不器用なところがあるのかもしれません。
「最近の若者は〜」とか「最近のお年寄りこそ〜」とか「ベビーカー問題」とか、思いやりのなさを嘆くさまに時々遭遇しますが、私たちの中にも、やさしさ、思いやり、愛、利他といった美しい心が、きっといや絶対ありますもん。
親切にすることや親切にされることに、ただ照れくさかったり、不器用なだけ。ときに自分のことで精一杯で、ゆとりがないだけ……。
私はそう思うのです。
 

 
今日、元気モリモリの私。
台湾のおばあちゃんからもらった思いやりを恩送りするのには、絶好のコンディションです。
「席譲ります。声かけてください」マークによって席を譲る場面がなかったとしても、「こういうマークがあるよ」という周知にもまた価値があると信じて、今日も使ってみるのです。
 
一人でも多くの人がこのマークを使うことや知ることで、電車の中が思いやりで溢れるといいな。
そしてゆくゆくは、このようなマークの助けがなくても、電車のシーンでなくても、不器用な私たちみんなが思いやりの気持ちを照れずに伝える、受け取れる、「ありがとう」だらけの日本になるといいな。
 
台湾のおばあちゃん、不器用な私をやさしく見守っていてね。あの時と同じように。
 
 
 
 
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2020-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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