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メディアグランプリ

本と地球儀のことばにできない関係


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記事:井村ゆうこ(リーディング倶楽部)

 
 

子どもの頃、地球儀はおもちゃのひとつだった。くるくる回してよく遊んだ。そのうち、知っている国の名前を探すようになった。日本を探した。テレビで見た国を探した。地理や歴史の教科書にでてきた国を探した。大人になってからは、行ってみたい国と日本の距離を測るように、地球儀を回転させている。
死ぬまでにあと何ヵ国訪れることができるだろうか。残念ながら世界中の全ての国を旅することはできそうにない。だから私は、本を探す。まだ知らない世界を教えてくれる本を探す。いろんな本をみつけた。そのなかに、世界の「ことば」を教えてくれる本があった。
 

タイトルは『翻訳できない世界のことば』。
著者は、さまざまな国で暮らした経験を持つ作家兼イラストレーターの、エラ・フランシス・サンダースだ。本の中には、ひとことでは別の言語に置き換えることができない世界のことばが、色彩豊かなイラストと共に紹介されている。机の上に地球儀を置いて、もう何度も開いた表紙をめくる。世界のことばを探すショートトリップの始まりだ。
 

「おなかの中に蝶が舞っている気分。たいてい、ロマンチックなことや、すてきなことが起きたときに感じる」
こう表現される感覚を、ひとつの単語で表す国がある。地球儀でみると日本からそう遠くないように感じられる海に囲まれた国、フィリピンだ。公用語としても採用されているタガログ語で「kilig(キリグ)」と言ったら、恋のはじまりを告げる合図だ。
地球儀に目をやって、南シナ海の海岸に降り立った自分を想像する。沈みゆく太陽を眺めながらうっとりした表情を見せる女の子の姿を思い描く。「きっと今、キリグなんだね。おめでとう」とこころの中でつぶやけば、気分は旅人だ。
 

更にページを繰っていく。
夫が、悪いふるまいを妻に許してもらうために贈るプレゼントのことを『龍のえさ』と表現する国を見つけた。日本からは飛行機で12時間はかかる、大陸の西に位置する国だ。地球儀を回して、かつてはふたつに分断されていた地に降り立ってみる。カフェのテラス席に腰を落ちつかせ、ビールの入ったグラスをかたむける。いい気分で通りに目をやると、大きな体の男性と長身の女性がジュエリーショップに入っていくのが見えた。数分後、一回り小さくなったように見える男性と、満足そうな表情を浮かべる女性が店から出てきた。
「思った以上に高い、Drachenfutter(ドラッヘンフッター)買わされちゃったんだね、お気の毒に」と思いながらも、私は女性に勝利を祝うウィンクをおくる。
どこの世界に行っても、怒れる龍を沈める最強アイテムはプレゼントなのかと納得しつつ、旅人気分を味わう。
 

訳者である前田まゆみ氏が、あとがきで述べている。
『それぞれの言葉がまるで映画のワンシーンのように投げかけてきてくれる物語の切れ端を、読者のみなさんと共有出来れば、本望です』
私は声を大にして伝えたい。共有していますと。
更に声を張り上げて届けたい。本の横に地球儀を置くことで、映画を観ている観客としてだけではなく、映画の場面に居合わせた旅人として、物語を味わっていますと。
 

飛行機に乗って、海を渡ることだけが旅ではない。私たちは本を開くことによって、世界を旅することができるのだ。本はガイドブックに限らない。小説でも、エッセイでも、ビジネス書でも、「世界」を描いている本は無限にある。私たちは無限に旅ができる。

 

旅は世界を見せてくれるのと同時に、自分の生きている国についても教えてくれる。私たちの気づいていない日本の姿や、他の国から見た日本のかたちを目の前に広げてくれる。
『翻訳できない世界のことば』の中にも、日本のことばが4つおさめられている。普段なにげなく使っていることばもあれば、どういう意味かと問われたら即答できないことばもある。著者のフィルターを通して伝えられるワンシーンは、何度もくりかえし観て慣れ親しんだ映画のシーンであると同時に、リメイク版のような新たな空気を感じさせるシーンでもある。
地球儀を回して、宇宙から日本を眺めてみる。悪くない。悪くないぞ、日本。世界に伝えることばを持っている。世界に伝えたいことばを持っている。
 

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、旅にでることができない今こそ、私たちが本を開くときなのではないだろうか。目を開き、世界を見るときなのではないだろうか。
私はまた、地球儀をまわす。私はまた、本を開く。
 
 
 
 

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2020-04-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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