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メディアグランプリ

採血をラクにする「赤、青、キ」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:岡 幸子(ライティング・ゼミ 特講)
 
 
「出ないですね……立ってみましょうか?」
 
本気ですか? 腕に針刺したまま、立つんですか?
そう思いながら、状況が良くなる見通しもないので、私はそっと立ち上がった。
 
「あー、出てきましたね。そのままでもう少しお待ちください」
 
低血圧の自覚はあったけれど、まさか立ち上がって採血しなければならないほど血の巡りが悪いとは。まだ20代だった私は少なからずショックを受けた。帰宅後も数日間、内出血が残って腕を見るたびに嫌な気分になった。
 
採血は嫌いだ。
嫌いなことは避けたい。考えたくない。
それでずーっと何十年も採血のたびに「また立たされたらどうしよう」と思ってびくびくしてきたが、それは間違いだった
 
採血は「赤、青、キ」の3つのキーワードでラクにできる。
 
この4月、そのことに気がついた。
きっかけは、19歳の娘の採血に付き添ったこと。
採血ルームの後ろの椅子で待っていると、管理者らしい男性職員に声をかけられた。
 
「お嬢さん、ちょっと緊張がひどいようなので、ベッドで採血しようと思います。あちらの部屋に看護師が連れて行きますので、ご了承ください」
 
見ると、娘の顔からは血の気が引いて、真っ青を通り越して真っ白になっていた。荷物を預かりながら「大丈夫?」と声をかけたが返事がない。私の声は届かなかったのかも知れない。ぎこちない歩き方で、看護師さんとベッドの部屋に入っていった。
 
「若い女性には多いんですよ。迷走神経反射で血管が収縮してしまうんです。何か、トラウマになるようなことがありましたか?」
 
男性職員の言葉に、「そういえば……」と思い出す。
「中学生のときに、子宮頸がんワクチンを受けたのが、トラウマになったかも知れません。ものすごく痛かったみたいです。もともと注射嫌いだったのが、あれからひどくなって、注射恐怖症のようになってしまいました」
「子宮頸がんワクチンは筋肉注射だから痛かったでしょうね。でも、採血は注射じゃないんですよ」
 
えっ? 注射じゃない? だって針刺してるし。
そう思いかけて気がついた。
確かに採血は血を採るのであって、体内に何も注入していない。だから“注”射じゃないんだ。
 
「血管には痛みを感じる神経はありませんから、血管の中に針を入れる採血はふつうは痛くないはずなんです。皮膚の表面で最初だけチクッとしますけどね。筋肉注射は、神経がたくさんある部分に薬剤を入れていくので、それは痛いわけです」
 
説明されて納得した。採血を嫌だとか怖いとか思っていると、神経が研ぎ澄まされて、針先が少し皮膚に触れただけでもびくっとなりそうだ。緊張して身を固くしているより、リラックスしている方が痛くないのでは?
 
「いいことを聞きました。娘には後で、採血は注射じゃないことを伝えます。怖さが減るかも知れません。あと何か、採血をラクにする方法とかありますか?」
「水分を多めにとっておくといいですよ。それと、使い捨てカイロなどで血管を温めておくことも有効です」
 
なるほどー。採血は、加湿器と一緒だ。
どちらも、水を入れて温めると出したいものが出てくる。
加湿器は吹き出し口から水蒸気が出て、採血は血管から血液が出てくる。
 
幸い、娘は直前にペットボトルの水を飲んでいた。血管を温めはしなかったが、今日は暖かい。ベッドで採血してもらえたのもリラックスできていいだろう。血液が出やすい好条件がそろってよかった……。
 
そう思ってはみたものの、娘の採血にはずいぶんと時間がかかっていた。ベッドの部屋に入って15分以上過ぎている。
 
好条件なのに、なぜ?
先日見たテレビ番組を思い出した。
 
「どうして怖いと顔が青くなるの?」
出演者が答えられずにいると「ボーっと生きてんじゃねーよ!」とチコちゃんに叱られる、NHKの人気番組の質問だ。
 
答えは、「命を守るため」
 
大昔。人類はケガで出血が止まらなければ死んでしまった。出血すると死ぬかも知れない恐怖を感じただろう。出血を抑えることは命を守ることにつながった。それで、人類は恐怖を感じただけで血管が収縮し、血液が固まりやすくなるように進化した。血管が収縮すると、顔面の血の気が引いて青くなるというわけだ。
 
番組では、ホラー映画をみた前後で、人の血流がどう変わるのかを調べる実験も紹介された。怖いと感じた後の血流は明らかに悪くなっていた。流れる血球が途中の壁にぺたぺた貼りつき始める映像を見てびっくりした。
 
おそらく、娘の血液は今、あんな感じなのだろう。若いころの私の血が出にくかったのも、恐怖で血が固まろうとしていたせいかも知れない……。
 
ようやく看護師さんが戻ってきた。
採血した試験管2本を男性職員に見せている。採りたかった量には不足だけれど、なんとかOKをもらえたようだ。
 
ベッドに寝ている娘を迎えに行くと、まだ青ざめていた。腕から注射針が抜けても恐怖の余韻が残っているのだろう。
 
この、青い顔がいけない。
恐怖で顔が青いとき、血管は収縮して血液はドロドロだ。そんな状態で採血がうまくいくはずがない。
 
まず、採血の前には鏡を見て顔色を確認することだ。顔色は「赤」。これが大事。顔色が青かったら、赤くなることをすればいい。邪魔にならない場所でラジオ体操をやってみるのはどうだろう。誰かに見られたら恥ずかしくて赤くなることも期待できる。
 
そして水を飲むこと。これが「青」。
 
最後、採血は注射ではないことをよく理解して、恐怖を少しでも和らげる。気の持ちようが大切。それが「キ」。
 
さあ、採血が怖くて大嫌いなみなさん、次はこの「赤、青、キ」で立ち向かいましょう。
それでも怖いときは使い捨てカイロを持って。ベッドでの採血もおすすめです。
少しでも早く、ラクに採血が終わりますように!
 
 
 
 
***
 
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2020-04-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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