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私はこれでガミガミ言うのをやめました


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:布施京(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「まったく、もう! 邪魔なんだよ!!」
「なんで、こんなとこに立ってんだよ!!」
 
サッカー部員が口々に文句を言っていた。
 
何が邪魔なのか?
 
けやきの木だ。
高さは、4階建ての校舎よりも高い。
それが、中学校の校庭の真ん中にそびえ立っていた。
おそらく、同じ中学出身者は、必ず一度は、このけやきを邪魔扱いしたはずだ。
 
中学を卒業して四半世紀。
早朝、久しぶりに母校の前を通り、あの頃を思い出した。
 
校舎は古い。昔のままだ。
 
私の息子は、4年後に中学生になる。
私と同じ、この中学校に通う。
ここで、息子が何を学び、何を感じるのか。
 
私が在学中、始業式や運動会などの校長先生のお話には、必ずと言っていいほど、けやきが登場した。
 
「けやきに見守られ……」
「けやきのように立派に……」
 
あの頃は、「ふーん」としか、思わなかった。
 
しかし、結婚し、親になり、この大きなけやきを見ていると、
「いつも、子どもたちを見守ってくれていたんだね」という感謝の気持ちが、フツフツと湧いてきた。
 
中学校は、今年で創立73年。
毎年、木枯らしに吹かれ、暑い太陽の日差しに照らされながら、子どもたちが成長するのをずっと見守ってくれていた。
 
「ずっと、変わらずに居てもらいたい」
 
心からそう願った。
けやきをもっと間近で見たくなった。
そして、ドンと構えている太い幹にも触れてみたい……。
 
だが、早朝のウォーキングの途中だった。
家に帰って、在宅ワーク。
後ろ髪を引かれながら、家に戻った。
 
帰る途中、どうしてけやきの木が、校庭の真ん中にあるのか気になった。
創立が早いか、けやきが早いか。
 
「中学の時は、疑問にも思わなかったくせに」
 
自分で自分にツッコミを入れた。
 
在宅ワークが終わり、本棚にある中学校の卒業アルバムに手を伸ばした。
アルバムの表紙は、緑に生い茂ったけやきだった。
夏に撮ったのだろうか。青空にとても映えていた。
 
裏を見ると、学校の電話番号が載っていた。
居ても立ってもいられなくなって、受話器を手に取った。
 
若い元気な女性の声が、受話器から聞こえてきた。
卒業生であることを名乗り、質問を切り出した。
 
「あのう、校庭のけやきは、学校が建てられる前からあったのでしょうか?」
「けやきですか?……ちょっとお待ち下さいね」
 
待つこと数十秒。
 
「もしもーし。400年くらい前からあるそうですよ」
「400年ですか!?」
 
私は、予想外の答えに驚きを隠せず、声にした。
 
「昔は、ここにお屋敷が建っていて、けやきはその敷地内にあったそうです。区の風景資産にもなっていますから、区のホームページを見れば、もっとわかるかもしれませんね」
 
丁寧にお礼を言って切った。
 
「400年かあ~」
 
部屋で一人、つぶやいた。感慨深い気持ちが、ひとしおだった。
中学生だったとはいえ、そんな歴史ある大木に「邪魔だよ」とか、ひどいことを言ってしまった。
 
区のホームページを調べてみると、区の「名木百選」にも選ばれていた。
ますます、頭が下がった。
 
3年間、こんな素晴らしい経歴を持つけやきのことも学ばずに、私は一体何を学んできたのだろうか。
授業は、数え切れないほど受けた。
だが、覚えているのは、応援合戦で盛り上がった運動会や、休み時間に交わす友達とのくだらない会話だった。
しかし、それらの思い出の風景の片隅に、けやきの姿は、確かにいつもあった。
でも、気にもとめなかった。そして、「邪魔」なときだけ意識した。
 
「『親』も、そんなものかも……」
 
唐突だが、そう思った。
 
いつも、見守ってくれる親。でも、親の存在を邪険にする子ども。
自分が親になってからでないと、親のありがたみに気づけない、私のような子ども世代。
でも、そうやって、世代交代が行われ、繰り返されるのかもしれない。
 
子どもを産んで、親のありがたみには気づいても、私は、まだ、見守る親にはなれていなかった。
 
子どもが通う塾の先生から、「黙る」「ガミガミをやめる」というアドバイスを何度も受けた。
親がガミガミ言うことで、子どもの脳が萎縮し育たないからだそうだ。
だが、なかなか、それが難しい。
 
なぜできないのか。
 
それは、きっと、私が、息子を信用していないからだ。
だから、自由にさせられない。
そして、私が思っている通りに行動しないと、ガミガミ怒ってしまう。
 
信用されることで、より責任を持って行動するようになるのは、大人も同じではないか。
 
息子を信用してみよう。
そして、ドンと構えて、黙って見守ろう。
あのけやきが、子どもたちにずっとしてきてくれたように。
 
邪険にされても、
いつか、きっと、邪魔なけやきのありがたみに、息子も気づいてくれるはずだから……
 
 
 
 
***
 
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2020-05-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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