メディアグランプリ

Xたちからのラブレター


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:和田清美(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
匿名のラブレターをもらったことはありますか?
 
私はあります。40人程の女子校生たちから。
 
高校3年生の時、クラス全員で「Xからの手紙」という遊びをやりました。
方法はこうです。
・紙を1枚用意します。参加人数によりますが、B4かA3サイズで。
・真ん中に、自分の名前を書きます。見やすいようにはっきりと。
・その紙を、隣の人に渡します。一人ずつずれていくイメージです。
・合図と共に、そのクラスメイトの良いところ・印象を書きます。
制限時間は30秒。
・次の合図で隣に紙を回し、同じように記入。
・自分の紙が回ってくるまでこれを繰り返します。
・コメントに対して自分の名前は書かなくてよいです。寄せ書きの名前なしバージョンです。
・一番大切なポイント、コメントはポジティブであること。
 
タイムキーパーは、担任のお父さん先生でした。
「用意、始め!」
「はい、次!」
ぎゃー早い! うそーっ! 全然書けん! 間に合わんって!
教室に響き渡る、女子高生たちの悲鳴と紙の音。
30秒って、想像以上にあっという間なのです。
のんびり悩んでいる暇はありません。
 
「はい、次!」早い早い! バサバサバサッ。
30秒って短いわ。せめて1分欲しいんだけど。
 
「はい、次」待って待って! ガサガサ。
あ、でも1分×40人だと40分。授業時間足りなくなるからダメか。
 
「はい、次」はい! カサカサ。
ひたすら手を動かします。
先生の淡々とした「はい、次」効果もあって、ワーワーしていた教室もだんだん静かになり、ひたすら集中、回覧の手際もよくなっていきました。
 
自分の名前が戻ってきたころには、ぐったり疲れていました。
30秒毎に脳内フル回転です、無理もない。
でも、クラス全員でやり遂げた達成感がありました。
 
色が白いね。大人しく見えるけど、しゃべると面白いね。
いつも眠そうだね。よく笑っているね。
 
私へのコメントはこんな感じ。
納得のコメントもあれば、意外なコメントもあって、読んでいて面白かった。
友達とお互いのものを読み合うのも楽しくて。
自分を客観的に知ることが出来るし、相手に対して私はこう思っていたのか、と気づきが生まれました。
 
また、匿名なので、誰が書いたコメントなのか分からない。いわば忖度なし。
だからこそ説得力がありました。
その人について、30秒間ぎゅっと考える。飛び出してきた本音を捉まえて、書き留める。
私がみんなに対して本音で書いたように、みんなも私に対して本音を書いている。
 
これはラブレターだ。
クラスメイト全員が、それぞれを想って書いたラブレター。
思いがけず、くすぐったくて心地の良い手紙をもらいました。
 
終了後、違和感を覚えた出来事がありました。
クラスメイトの一人が、
「ねーねー、和田さんが書いたのどれ?」
と、自分の手紙を持って聞いてきたのです。
……それ聞いちゃうと、Xの手紙という趣旨が変わってくるよね?
答えたくないな、一瞬躊躇しましたが、結局自分のコメントを指さしました。
彼女はクラス全員に聞いて回り、誰のコメントかを判明させていました。
全員答えたかはわかりませんが、特に揉めていた記憶はないので、みんな無難に対応したのでしょう。
 
匿名だからこそ書けた言葉なのに。
突然だまし討ちにあったような気分でした。
この優しい言葉は誰が書いたのだろう? そう思いをはせる感じが楽しいのに。
ラベリングしてしまったら、その言葉はリアルになってしまう。
残念だなと思いました。
 
と同時に、変なことを書かなくてよかった、とホッとする自分もいました。
匿名ということで、無意識に気が大きくなっていたのかもしれません。
気を付けないと、と思った記憶があります。
 
匿名だからといって、何でも書いていいわけではない。
今回は、クラス内で行ったこと、30秒で書く、コメントはポジティブのみ、としっかりとしたルールがあったので、問題なく成立したのだと思います。
 
ただでさえ、書き言葉だけだと、意図が伝わらず誤解されやすいです。
人が集まる場での発言は、意識して気を付けないと、トラブルが発生しやすい。
これは、私が書きました、と隠さず言える言葉以外は書いてはいけない。
その意識が薄いから、SNSでのトラブルが後を絶たないのでしょう。
 
誰からのコメントか聞いて回ったクラスメイト、これはルール違反だったと思います。
たかが遊び、そこまで目くじら立てなくても、という人がいるかもしれない。
でも、どの場でもルール違反をする人がいるし、小さなルール違反がトラブルに発展すると理解していた方が、問題が発生した時ダメージが少ないと思うのです。
 
卒業を意識し始め、名残惜しさを感じる時期にもらった、Xからの手紙。
クラスメイトからの優しい言葉たち、コメント主を知りたがる子、自分のコメントに対する責任。
世の中、優しいだけの一筋縄ではいかないよ。
Xの手紙を通して、そんな思いがけない教訓を頂きました。
 
だから、私にとってXの手紙はラブレター、Xたちからのラブレターなのです。
 
***
 
 
 
 
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2020-09-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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