私に○をつけてあげよう。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:ふるはしゆうこ(ライティング・ゼミ通信限定コース)
私にはなんにもない。
ずっと、そう思っていた。
個人事業という新しい分野に飛び込んだとき、「人とは違う」私をアピールしないと、同じような活動をしている人の中に埋もれてしまうと、あるセミナーで学んだ。
私は平々凡々の平坦な人生を歩んできていた。
大学にも進学したし、就職もできた。結婚もしたし、子供にも恵まれた。家も購入し、車もある。両親兄弟みんな健康。際立って、特に苦労もない。普通中の普通。とりたてて、アピールすることが何もないのだ。
冷静に考えれば、それでいいのだ。でも、その頃の私は、何にも魅力のない、平凡な代わり映えのない自分に、自信なんて少しもなく、恥ずかしながら波乱万丈な人生を歩んでいる人を羨ましくさえ思えた。
何にもない私は、自信のかけらさえもなかった。
そんな中、最近になって、私のブログを褒めてもらえることが連続してあった。
「ありがとう!」
そう答えても、そもそも自分に自信がないものだから、またまたそんな事言って。と心の中では謙遜どころか、ひねくれまくっていた。
今年の夏の初め、友人のフェイスブックに「天狼院書店のメディアグランプリに選出されました!」と記事が上がった。
天狼院?なんて読むの?メディアグランプリ?何それ。
興味津々で、彼女の書いた記事を一気に読んだ。
ふわっと、頭の中で情景が浮かんだ。心を揺さぶられた。
短い文章の中に、後味というか、なんというか。スッキリしたような。
私の心に爽やかな風が吹き抜けた。
これだ。
文章一つで、いろんな景色が見える。気持ちが伝わる。心が揺れる。
私にもできるだろうか。いや、無理じゃない?
ブログをちょっと褒められたからって…。
一瞬だけ迷ったが、私はすぐにライティングゼミに申し込んでいた。
自分を試してみたかったのだ。
ライティングゼミでは毎週2000文字の課題提出がある。
最初の提出は、何にも考えず、ただただ面白く書こうと意識して書いた。
結果は、ノミネートされず。
自信がないとはいえ、ブログを褒めてもらったことがあるだけに、少しだけ過信していた自分が恥ずかしくなった。
同時期に参加している皆さんの記事のコメントには次々と「WEB天狼院書店にアップしますね。スタッフ、アップよろしく!」とコメントが入る。
ああ、私は場違いなところに来てしまった。
皆さん面白いのだ。素人から見ても、ぐっと引き込まれる文章を書くのだ。
私はなんで、ライティングゼミに申し込んだのだろう。もうやめたい。頭を抱えた。
その時ふと、頭によぎった。
ちょっと待てよ。いつもの癖がでてきたぞ。人と比べて自分を下げる。できない自分をみて恥ずかしくなって、逃げるのだ。
もう、そういう考えはやめよう。
ひとまず、他の人の記事は読まないと決めた。
まずは、自分の経験で感じた事を書こう。
すっと思い浮かぶことは、意外と心の奥底に、忘れずに重く残っていること。ずっとその重い思いを引きずっているかといえば、そうでもない。
いろんな出会いがあり、経験があり、自分の中で昇華して、いまの自分がある。
自分の心の中を全部ひっくり返し、嫌なことにも目を向ける作業をした。見たくない、気づきたくないことを、あえてほじくり出して、いまどう思うのか、どう感じるのかを書き出して見た。自分の気持ちに素直に、降ってくる言葉を一気に綴る文章は、うん、自分でも上手くいったと思う。
逆に、ちょっと鼻の先が伸びると、そのまま文章に出てしまう。面白い発見だった。
メディアグランプリに挑戦できるのは4ヶ月間、4回の合計16回。
16回分、ネタを探すのに相当苦労した。相当苦労したが、その書きたい題材を掘り起こす作業は、何気に楽しかった。
ある時は、朝早くゴミを捨てに公園に行くときに、空を見上げ金木犀の香りに包まれたとき、ふっと書きたいことが浮かんだこともあった。
ある時は、あえて自分を追い込もうと、締め切り直前までなんにも手をつけず、一気に書き上げたりもした。
書く題材を探す中で、自分に向き合い、心の中を全部ひっくり返して見たら、「私、意外と色々あるじゃん」ということに気づくことができた。
なんにもない、フツーの平凡な人生だと、ずっと思っていたのだが、メディアグランプリに文章を提出するために、自分の人生を振り返えることを、何回も繰り返した。
「人に歴史あり」という言葉があるが、私も大きな山や谷ではないけれども、それなりに経験し、感じ、もがいて生きてきた歴史が、ちゃんとあったのだ。
平々凡々な人生だが、私の人生は魅力がない訳ではないのだ。
夫の母はいつもこういう。
「普通が一番難しい。普通が一番いい」
今となっては、本当にそう思う。平凡な代わり映えのない人生に見えるかもしれないが、人は見えないところでちゃんと歴史があり、大きな山も小さな山も越えてきている。同じ山は一つとない。違うから、面白みが出てくるのだ。
天狼院ライティングゼミを受講し、自分と向き合い、相手に響く文章を書きたいと、心の底からそう思え、燃えた4ヶ月だった。
私の人生は意外と面白い。なんにもなくはない。
そこに気づけたこと、そして書くことの面白さを知った。
このゼミに申し込んだ私に、○をつけてあげようと思う。
***
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