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JKの恋


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:園田玲花(ライティングゼミ・2月コース)
 
 
華のJK。
16歳から18歳の間の“女子高生”というブランドが付いている間は
何をしても許してもらえるし、世の中全てが肯定してくれるような気持ちになっていた。
 
高校に入学してから、社会人バスケチームに所属した私は
軽音楽部とバスケチーム、アルバイトと忙しい高校生活を送っていた。
 
社会人バスケチームというのは大体、中学校や小学校、民間の体育館を借りて
平日の夜や土日の昼、週に1、2回の活動がある。
参加できそうな人は事前にチームの掲示板に可否を書き込んで
使用料を払うと参加が出来るというものだ。
 
クラスメイトから紹介され、本気で全国制覇を目指す!というより
楽しくバスケに触れあっていたいと思っていた私は興味本位で行ってみることにした。
 
たまたま、自分の母校の中学校が開催地だったチーム。
中学生はバスケ部でほぼ毎日練習していたが、夜の中学校に入るのは初めて。
通いなれていた場所も、年齢と時間帯だけでこんなにも心が違うのかと驚いた。
なんだか自分が大人になったような気持ちで初めての場所に緊張しながら体育館の扉を開ける。
 
10名くらいの大人と、誘ってくれたクラスメイトが談笑しながらボールと遊んでいる。
シュートの入る音。ボールをつく音。それと少し汗のにおい。
エモい気持ちになっていたが代表のような人が近付いてきて
「りんちゃん紹介の子かな?JKだよね? 制服可愛い!」
『そうです、よろしくお願いします』
 
JKってだけでちやほやしてもらえるなんて、なんだかちょろい。
そんなこと考えながら、急いで練習着に着替えた。
 
みんなで楽しくバスケをする! ことが目的のようなチームで
試合が出来る人数が集まれば、グループに分かれて試合を始めていく、それまでは各自話している人も居れば、一生懸命練習している人も居た。
 
彼に出会ったのは、その体育館。
バスケをする男性の中で身長は低めだけれど、シュートフォームが一際美しくて
綺麗な弧を描き、リングに当たることなく シュッ、と入っていくボール。
 
あの人の“大切”になりたい。
高校1年生、初めての一目惚れだった。
 
「はじめまして、今日初めて参加した園田です。よろしくお願いします」
チームメンバーが揃い始め、なんとなく試合を始める雰囲気になって
体育館の中心に集まったとき自己紹介をする。
 
女子は圧倒的に少なかったが、真剣すぎるわけではないのでそれぞれチームに分かれて試合を始めていく。彼とは別々のグループだったが休憩時間にプレイ中の姿が見れた私は幸せだった。
 
怖いものなしだと思っていた私は、練習終わりに彼に声を掛ける。
「突然ごめんなさい。今日のプレイ見ていて、フォームがとても綺麗で感動しました! 良かったらお名前教えてくれませんか? 私、レイカっていいます。」
『セイヤやで、おおきに。ここまでどうやって来たん? 車やし送って行こうか?』
自転車で来てしまったことを心底後悔したが、初めましての人の車にこの汗だくの姿で乗るのは抵抗がある。今日は断って、次から甘えさせてもらいますと話をした。
 
セイヤさんは関西人。東京に来てから10年位経つけれど関西弁が抜けないみたい。バスケは中学校から続けていて、社会人になってからもこうやって続けていたことを話してくれた。年齢は、私の一回り上。干支が同じだった。そんなに年上の人の事を好きになったこともなければ付き合ったこともない。JKだった私は、初めて自分がJKであることをやめたくなったし、早く生まれてきたかったなとも思った。
 
回を重ねていくごとに、距離が縮まっていくのを感じた。
“セイヤさん、明日のバスケは参加しますか?”
“行くでー! 通り道やし、レイカちゃんち迎えに行こうか?”
当時周りに車を持っている人も居なかったし、なんだか急に自分が大人になったみたいだ。
 
周りの友達に相談すると、「絶対脈アリだよ! 告白しちゃえばいいのに」そうはやし立てられるが、自分自身に起きていることだ。なんとなく分かる。これは脈アリではない。完全に妹だと思われている。その証拠に一度も彼氏の有無は聞かれていないし、ボディタッチなんてものも一度もない。雰囲気も、“好きなひとに対する”ものではなく、“妹を心配する兄”のような感じだ。3人妹弟の長女の私には分かってしまう。
 
それなら、JK時代は“妹”ポジションのままで良いと思い込むことにした。周りの友達は、「彼氏とディズニー行ってきた」だの、「夜通し電話してた」だの、子どもじみたことをいっているが私の好きなひとは大人だ。私も大人にならないと、と羨ましい気持ちを出さないよう自分の気持ちに蓋をする3年間を過ごしていた。
 
“華のJK”は終わってしまったが、セイヤさんのような“大人”に一歩近付くことができた。それまで“妹”を演じつづけてきた私だったが、20歳の誕生日を迎えた週に、やっとセイヤさんに気持ちを伝えることに決めたんだ。
 
苦しくも楽しかった“華のJK”時代。
中学校卒業以来、セイヤさんという社会人を好きになってしまったことで
彼氏という存在が出来なかった。誰かに「好きです」と気持ちを伝えるのって
こんなに難しいことだったっけ?
 
大学生になってから、無事にセイヤさんとのお付き合いがスタートすることになるが
それが人生で最も手痛い恋愛エピソードになった。
その話はまたいつか振り返れたらいいな。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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