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私の名前はハルナ。 今を生きてます。


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記事:石川ひろこ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
自己紹介をします。
私の名前はハルナです。
この写真は今の家族、ヒロコママが初めて撮ってくれた私。 結構可愛いでしょ!?
 
保護された今のお家では最初、「テト」って名前でいきなり呼ばれたけど、私その名前、好きじゃなかったの。だってね、一番最初に私をあの真っ暗な生活から救い出してくれたヤマダさんのご主人が私を見て「君は群馬県民に愛されている榛名(はるな)山みたいに多くの人に愛される様に榛名って名前にしよう」って付けてくれたんだもの。
だから、新しいお家のヒロコママとその息子のてんま君が、いくら「テト」って私を呼んでも絶対に振り向かなかったわ。
でもね、私のそんな気持ちをすぐわかってくれて次の日には皆が私を「ハルナ」って呼んでくれるようになったのはちょっと嬉しかったな。
 
そんな理由で私の名前はハルナなの。
 
もう4年半も前の事だからあまり覚えていないけど、私は「ハンショクジョ」って所で7歳まで過ごしていたの。
そこではね、毎年私はチワワの赤ちゃんをたくさん産むエース級のハンショクケンだったのよ。
私の赤ちゃん、皆可愛くてね。 美人さんが多いの。
チワワのロングコートって毛がふわふわだと喜ぶ人が多いみたい。
 
可愛い私の赤ちゃん達。 元気に育ってきたな〜と毎日お世話をするのが幸せだったな。
でもね、いつもある日を境に突然私の所からいなくなっちゃうの。
私を呼ぶ鳴き声だけ、どこからか聞こえてくるけどね、周りにも同じハンショクケンの仲間がい〜〜〜〜っぱいいてるから赤ちゃん達の声がかき消されちゃう。
 
 
最初は悲しくて悲しくて。
でもすぐにまた次の赤ちゃんを産むことになるの。
こういうものかと思って毎日生きてたわ。
ハンショクジョはそれはもう、暗くて汚い所よ。
 
私の記憶ではずっと小さな小さな檻の中で7年間暮らしていたの。
体を洗ってもらえることなんて一度もない。
耳はいつもかゆい。
手足もカビが生えていて、かゆいなんてもんじゃない。
自分の口でなめるので真っ赤に炎症している。
今も脚の毛の色は変色したままなのよ。
それによく蹴られてた。
だから今でも人間の脚が怖くてね、家族の脚がちょっと当たるだけでも大きな声で「キャン!」って鳴いちゃうのよね。 その後はしばらく震えが止まらなくなっちゃうんだから。
 
 
そんなある日、私は最後の出産を終えた。
テイオウセッカイと呼ばれ、お腹を切り赤ちゃんだけを抜き取られたの。
そして、私はそのまま、適当に処置されて死にかけた。 「ナイゾウがユチャクしている」誰かがそう言ってるのが聞こえた。
もう、このままここで死ぬのかな〜って思ってたら、明るい場所に連れて行かれたのよ。
そこからは覚えていない。
 
でも、次に気がついたらお腹が痛いのも無くなって全て終わってたの。
 
 
私、生きて明るい場所に居たの。
レイラインっていう愛犬保護団体が死にかけてた私を救い出してくれたの。
テイオウセッカイ手術後、ほぼ処置されずにお腹の中がぐちゃぐちゃだった私をすぐに病院に連れて行ってシキュウ等全部取ったらしいよ。
私みたいな犬は一旦レスキューされてからはしばらくケアファミリーと暮らすの。
最後まで幸せに過ごせるサトオヤが見つかるまでの間一緒にケアファミリーと暮らすの。
ケアファミリーとの生活。 それはね、本当にびっくりの体験だったわ。
きれいで温かいお家。
美味しいごはん。
こんな世界が世の中にあっただなんて。
あの真っ暗なハンショクジョがこの世の全てだと思っていた私は本当に驚いたわ。
あんなにひどかった耳や手足のかゆみもだんだんおさまっていく。
ビクビクしていた毎日が少しずつ楽しいものに変わっていったわ。
 
それでね。 私は脚が弱いみたいなの。 だってずっと小さな檻の中で長年暮らしてたからね。
散歩とかしたことないもの。
 
そんな私が元気に散歩へ行けるようにしてくれたのもケアファミリーのヤマダさんのおかげ。
ヤマダさんのお家には他にも違う種類の犬がいて皆で散歩に行ったな。
 
ある天気がいい朝、私は「ジョウトカイ」って呼ばれる会場へ連れて行かれたの。
 
ひっきりなしに色んな人間が私や仲間を覗き込み、抱っこしたり写真を撮って行ったりする。
私は正直人が怖い。
逃げたくなる。 でも、じっと我慢をしていたの。
 
 
そこから数日して、ケアファミリーのヤマダさんが私に向かって優しく言ったわ。
「ハルナちゃん、サトオヤさんが決まったよぉ。 これで幸せになれるね。 他にわんちゃんがいないお家だから、きっと愛情独り占めできるよ。 よかったね」と。
その頃の私、優しいヤマダさんが大好きだったのでこのお家にずっと居たいなって思ってたの。
だからね、正直もう新しい環境は嫌だった。 というか、また怖い環境に戻ることになるんじゃないかって怖かった。
 
 
でもあっという間にヤマダさんとの生活は終わり、次に今一緒に暮らしているヒロコママがいるお家にやって来たの。
 
ヤマダさんが私をヒロコママへ託し、出ていった後、きっとまた戻って私を迎えに来てくれると思っていたから1日中ずっと玄関で過ごして待ってたことも今となっては思い出話ね。
すごく不安だった私をパパや、ヒロコママやその息子のてんま君がいっぱい私に話しかけて抱っこしたり撫でてくれたわ。
ヤマダさんが恋しかったけど、ここの暮らしも清潔だし、温かいし、ご飯もくれる。
そうして段々元気になってきたというわけ。
そんなこんなで気がついたら私は、この家に住んでもう5年目になる。
自分で言うのもなんだけど、皆に愛されているのよ。
家族から「ハルナ〜、かわいいねえ」って言われなかった日は無い。
 
散歩はやっぱりまだ苦手だけど、歩いていると色んな人に「あら、かわいいお顔ねえ。 笑ってるみたいねえ」と声をかけられる。
 
ご近所さんによく言われるのは「最初、来た時と表情が全然違うね」ということ。
そんなものなのかしら。
 
過去の暗い思い出はどんどん遠い過去になっていく。
 
「犬は現在を生きる生き物だ」誰かがそんな事を言っていた。
確かにそうかもしれない。
ハンショクケンだった私は、今、何の不安も無く毎日を快適に過ごしている。
そう、本当に幸せなの。
当時、たくさん一緒に暗闇の檻の中で過ごした犬仲間の行く末は時々気になるけども。
 
でも、その過去を恨んだりはしていない。
 
人間によってハンショクケンとして生き、
人間によってそこから命からがら助けられ、
そして、今、人間の愛によって生きている。
元気に生きてるわよ。
まだまだ幸せな時間を家族と過ごしていくわよ。
 
 
私は、ハルナ。
元ハンショクケン。
いい顔して生きていくわよ。 家族と一緒にね。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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