メディアグランプリ

僕が恋したあの子に、僕は二度と会うことができないと知ったある夏の日。


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記事:たか(ライティングゼミ)

僕は、今、絶望している。
人間、こうも一瞬で絶望できるのかと感心するくらいだ。
悲しいなんてものじゃない。
絶望というのにふさわしい。
後悔先に立たず。

なぜ、僕は彼女に声をかけてやれなかったのか。
もう二度と、僕は彼女の顔を見ることも、声を聞くことも、触れることすらできない。

君は今、誰かと一緒に幸せな時を過ごしているのだろう。
君は、誰かを癒してあげているのだろう。
僕も君に癒されたかった。言うだけ無駄とはわかっているのだけど。

いつかこうなることがわからなかったのだろうか。
いつまでも待っていてくれると思ったのだろうか。

全くもって、自分の甘ちゃん加減に呆れる。
僕の人生は、大体がやらなかった後悔で埋め尽くされている。

日曜日の絶望は、中学三年生の頃の淡い記憶を思い起こさせた。

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当時、僕にはユイちゃん(仮名)という好きな女の子がいた。

ユイちゃんは、ショートヘアがよく似合うスラッとした細身の女の子だ。
彼女はテニス部に所属していて、いつも仲良しの2人と3人組で行動していた。
他の2人に比べてユイちゃんはとても活発という感じの子ではなかったが、少しクールな外見がまた良かった。

僕がショートヘアの女の子が好きなのは、ユイちゃんのせいじゃないか、と思えるほど、僕はユイちゃんのことが好きで好きでしょうがなかった。

今でこそ、女子に話しかけることに大きな抵抗のない僕だが、中学三年生の頃は好きな子に話しかけるなんて、とてもじゃないけど普通を装ってできるものではなかった。
「あいつ、ユイちゃんのこと好きらしいぜ」と変な噂を立てられるのが怖かったし、無駄に話しかけてユイちゃんに嫌われるのも怖かった。

ユイちゃんとは中学一年生の頃同じクラスだったが、会話数ゼロと言っていいほど話したことがなかった。おまけに中学に入りたての頃の自分にはひどく自信がなくて、女子に話しけること自体が、簡単にできる所業ではなかった。

三年生のいつ頃からだったかはわからないが、気づいた時には僕はユイちゃんのことが好きになっていた。話して変な風に思われるのは嫌だけど、なんとかして話したいという瀬戸際の状態で、日々悶々と中学生活を送っていた。

そんな折、ユイちゃんのアドレスを手に入れることに成功した。どうやって手に入れたのかは忘れたが、おそらく友達に協力してもらったのだと思う。ただ、僕がユイちゃんのことは好きだとは言わなかった。何か姑息な手段を使ったんだろう。

ガラケー全盛期、今と違って着信音にこだわっていた時代。
僕は早速ユイちゃんからのメールの着信音だけ特別なものにした。Mr.childrenの「花火」だ。改めて文字に起こすと、なんとも気持ちの悪い中学三年生だ。

アドレスを手にいれたその日に、ユイちゃんにメールをした。多分当たり障りの無い内容だったと思う。それでも、「花火」が携帯から鳴る度に狂喜乱舞し、来ないと意気消沈も甚だしかった。ちなみに、学校ではその後もほとんど僕はユイちゃんに話しかけることはできなかった。なんというチキンか。

ユイちゃんとメールを始めるようになって、1か月くらい経ったろうか、友達と四人でディズニーランドに行くことになった。体育祭か何かの振り替え休日だった記憶がある。僕は早速ユイちゃんにメールをした。

「今度ディズニーランドに行くんだけど、何かお土産いる?」
「えー、本当? いいの?」
「全然いいよ!! 好きなキャラクターとかいる?」
「んー、スティッチかなあ」
「スティッチね! OK!」

メールの内容を覚えているわけではなかったが、ユイちゃんがスティッチが好きだ、ということだけは今でも鮮明に覚えている。本当はこっそりお土産を買うつもりだったのだけど、「それ誰に買うの」と聞かれ、正直者の僕はごまかしきれず、ユイちゃんが好きなことが友達にバレる運びとなってしまった。

振り替え休日の次の日、僕はユイちゃんにお土産を渡す気満々で学校に行ったのだが、ここでスーパーチキンモードが発動し、話しかけれず。タイムマシンがあったら、今すぐにでも乗って当時の自分のケツを思いっきり蹴り飛ばしてやりたい。

その日の夜、ユイちゃんに「渡せなくてごめん! 明日こそ渡すね!」とメールを打った。

翌日。英語の授業の際のクラス移動を利用して、僕はユイちゃんに話しかけることに成功した。
言い訳ではないが、僕の中学は自分のクラス以外に入ることが禁止されていて、僕はB組で、ユイちゃんはC組だった。だから、なかなか話す機会を作れなかったのだ。

「こ、これ、お、お土産! 遅くなってごめん!」

めっちゃどもりながらユイちゃんにお土産を渡した。端から見たら気持ち悪かっただろうと思う。ユイちゃんは笑顔でお土産を受け取ってくれ、「ありがとー!」とキラキラした笑顔を僕に見せてくれた。

それだけで幸せな気持ちになったと言っても過言ではない。だが、残念なことにそれ以降、まともにユイちゃんと話す機会はあまりなかった。メールでのやり取りはたまにしていたけれど、相変わらずスーパーチキンな自分の性格が変わらず、嫌われることを恐れ、メールすらだんだんとしなくなっていった。

中学卒業を迎えた3月、衝撃的な噂が耳に入った。

ユイちゃんが転校するらしい。

僕の中学は中高一貫校のため、9割以上の生徒が高校にそのままエレベーター式に進学する。
だから、当然ユイちゃんもそうすると思っていた。ところが、家庭の事情か何かでユイちゃんは転校せねばならなくなった。

僕は迷った。

100パーセント振られるとわかっていても、告白するべきか。
それとも、無難に友達(友達であったかすら危ういが)を続けるべきか。

今、自分の気持ちを伝えないと、きっともう二度と会うことはないだろう。
そんなことはわかっていた。いくらチキンの中学三年生の僕でも、それくらいは理解できた。

どうする。告白するべきか。いや、さすがに気持ち悪いから控えるべきか。第一、あのスティッチのキーホールダーのお土産はどうなっているんだ。つけてるの見たことがないぞ。そんな奴から、告白されてもしょうがないんじゃないか。うん。そうだ。どうせ振られるに決まっている。負け戦さなどやるだけ無駄だ。ユイちゃんを好きな思い出は、僕の心の中だけにしまっておこう。

結局、僕はユイちゃんに告白しなかった。そして、ユイちゃんは転校した。それ以来、僕はユイちゃんとは一度も会っていない。クラスが違うから、同窓会にも呼ばれない。

仮に、振られていたとしても、告白すべきだったのだろうか。いや、そんなこと関係なく、もっと話しておけば良かったかもしれない。そしたら、少しは変わっていたのだろうか。今思い出しても、ただの淡い思い出に過ぎず、当時の選択を振り返るのは野暮な話だ。だが、僕は自分の選択が未来を決めてしまうということを、このころからもっと学ぶべきだったのだ。

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24歳の夏。再び、僕は自身の選択ミスでとてつもなく後悔している。

絶望は、日曜日の天狼院書店で起こった。

「四代目天狼院秘本って何円だっけ?」
「あーーーーーー、ごめん! あれ片方が絶盤になっちゃって、もう在庫ないんだ」
「マジかよ!?」

その事実は僕を絶望の淵へと叩き落とした。

3か月前から存在は知っていたのに。何であの時買わなかったんだ。
僕は二度と、タイトルも、内容も、装丁も見ることができない。
「生きづらい人へ」と称された本は、今の僕にとっては喉から手が出るほど必要だったのに……!
ずっと残っていると思っていた僕が甘かった。
ちょっとチキって買わなかった僕に全面的に非がある。
中学三年生の頃から全然変わってないじゃないか!!!

後悔先に立たず。
だが、後悔から学ぶことはできる。

帰宅後、僕はおもむろにMacbookを開き、paypalで六代目天狼院秘本を購入するのだった。

 

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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-07-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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