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額の中にいる彼女の美しさ

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:草間咲穂(ライティンゼミNEO)
 
 
その人は額に収まる写真を見ながら、静かにたたずんでいた。
物悲しそうにも、愛おしいものを見つめるようにも見えた。
昨日、湘南天狼院でのことだ。
 
 
昨日は湘南天狼院を会場に実施している天狼院の講座の一つ、
パーフェクト•ポートレートゼミの受講生による個展の最終日だった。
 
 
個展のタイトルは「Requiem」。
そこに映っているのは全て同じモデルさんだった。
 
 
約10点ほどの作品をゆっくりと一つ一つ眺めながら、
私も自然とその人の隣に立った。
 
 
「素敵な作品ですね」
 
 
思わずそう声を掛けると
 
 
「ありがとうございます」
 
 
と返ってきた。
その人が撮った作品だった。
 
 
その瞬間に佇まいが自然と物語る、その人の色々な感情のことを思った。
 
 
「このモデルさんは、凄くいいモデルさんだった。
誰よりも繊細で柔軟で、特にすごく手が綺麗だった。」
 
 
 
 
 
そう聞いてもう一度作品を見ると本当に綺麗だった。
いわゆる誰もが認める「美人」という訳ではないかもしれない。
でも、その人が言う繊細さが、手先を通じて伝わってくるのを感じた。
 
 
口元に当てた手先、桜を撫でるように優しく包むような手、
本当に美しいと思った。
 
 
個展のタイトルは「Requiem」。
 
 
実はそのモデルさんは4月に亡くなっていた。
私たちは同じ方向を見ながら、その人は静かに話してくれた。
 
 
「ポートレートをもっと撮りたい、と思った時に、
手の美しさ、表情の豊かさ、何よりも人としての暖かさに魅力を感じて
何度も何度もオファーをして撮らせてもらったのが彼女だった。
 
 
桜の咲く季節から、サンタの格好をする季節まで。
変わったお化粧をする子で、たまに付けまつげが取れたりして、
直すのが大変だった。
 
 
でも、すごくいい子で、お願いをするとすごく柔軟にやってくれた。
先生には男っぽいな、って言われたけど、独特の雰囲気があって、
手が本当に綺麗だった。
 
 
旦那様が送ったtwitterでそのモデルさんの死を知って、びっくりして。
死因は詳しくは分からない。
でも精神的に少し繊細だったと思う」
 
と。
 
 
四季を経て、また次の季節を迎えようとした今年の4月に、
彼女の死を知った時、すぐ旦那様に写真展をやらせてほしい、
彼女だけで埋め尽くされた写真展にしたい、とオファーをしたそうだ。
 
 
そして快諾をされた作品の集大成が今目の前に展示されている作品だった。
 
 
すでに展示会用の作品を決めていたところだったという。
でも、彼女の死を知った時、全てを白紙に戻して改めて彼女を偲ぶ、
彼女を愛していた人たちに送る写真展にしたい、そう思って準備した作品が、
私の目の前に並んでいた。
 
 
それを聞いた時に、涙が出た。
目の前に映る、額に収目られ絵ている彼女の事を本当に綺麗だと思った。
そしてとても残念に思った。こんなに美しいのに、この世にいないなんて、とどうしても思ってしまった。
 
 
「いや、本当色々トラブルがあって大変だった!
一度USBに入れたと思ったデータが入ってないし、引き伸ばしたら全然色が違うし、
もうバタバタだったんだから〜」
 
 
そう笑って話す言葉を聞きながら、
額の中にいる、会った事もない彼女を見つめて、
こんなに美しいのにどうして、という事をやっぱり考えてしまっていた。
 
 
学生の頃、たまたま見てすごく印象に残っているプロモーションビデオがある。
久しぶりにふとその映像を思い出した。
 
 
女性たちに自らの本当の美しさを気づかせる実験を収めた映像「Dove Real Beauty Sketches(ダヴ リアルビューティー スケッチ)」
 
 
シャンプーなどどで有名な「ダヴ」が作ったショートフィルムで、5500万回再生され、カンヌ国際広告祭で賞も受賞しているものだ。
表題は「自分の美しさは、自分では実はわかっていない。」というもの。
 
 
映像の中で鍵となるのは、FBIでトレーニングを受け、人々の証言を基に似顔絵を書き続けた男・ジルによる2枚の似顔絵で、1枚は女性たち本人が自分の顔の特徴を伝えたもの、もう1枚は、全くの他人がその女性たちの特徴を伝えて書かれたもの。
 
鏡でいつも見ている自分と、本来のその人の顔の印象を見比べるというのが実験の内容を収めたものだ。
 
 
証言に基づき似顔を描くジルが描いた2つの似顔絵によって見えてくるのは「自身が考える自分のの美しさ」と「他の人から見た自分の美しさ」に驚くべき違い違いがある、ということ。
 
 
実際に描かれている絵を見るとその違いは歴然で、この実験を受けたすべての女性が自分が思っている以上に美しいということに気づく。
 
 
生きていると色々なことがある。
でも、誰にもでやはり魅力はあると思う。必ずあると思う。
でも自分では気がつかないこともあると思う。
だから思った時にはちゃんと伝えよう。
かつて印象深かったその映像のことを思い出し、改めてそう思った。
 
 
もし彼女が生きていたら、とても美しい、本当に綺麗だと伝えていたのに、
額ごしの彼女を見つめながら、悔しさと同時に
写真を通じてそれを知る、ということ切なさをとても感じた。
 
 
 
 
***
 
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