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メディアグランプリ

マイ禁忌は執着を手放すスイッチ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:前田 光(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
書籍を処分するのにとんでもなく罪悪感がある。いや、あった。しかもついさっきまで。
 
私の書棚の中には、それがすべてとは言わないが、以前に読んで感銘を受けたけど長い間手に取っていない本、何年も前に興味を持って購入したのだろうが今ではなぜ心惹かれたのか分からない本、仕事で必要だから入手したが、その仕事が終わってしまったのでもう読む必要がない本、なんとなく枯れ木も山の賑わい的に並べている本、いつか役に立つだろうと思いながら、結局何十年も出番のない本、はるか昔に使った何かの教材本などが詰め込まれていた。
一回の引っ越しを経てもなお、この状態が平行移動したことに我ながら驚いている。
 
本は心の栄養だから、積読上等。
いつどこで役に立つか分からないから手放しては駄目だ。
なにしろ絶版という言葉がある以上、どんな良書だってある日突然姿を消してしまうかもしれない。
本との出会いは一期一会なのだ。
そう思って、基本的に書籍だけは手放さずに今までやってきた。
 
それが今日、本棚に並んだ背表紙に一心不乱に目を走らせながら、「もういいかな」と感じる本を片っ端から段ボールに詰めている。
まるで別人みたいだ。
 
自分でも驚きの心境の変化が起きた理由は、「いらんものを捨てろ! 手放さなければ新しいものは入って来ない!」と書かれたメモ書きが、書類の間から出てきたからだ。
私が書いたには違いないが、いつ書き残したのか覚えていない。
多分YouTubeの断捨離系の動画を視聴していたときに、ピンときたんじゃないだろうか。
だがわざわざ書き留めた理由のほうなら明白だ。
私は本を買うのにためらいがないうえ、物を捨てるのがとても苦手だからだ。
 
とはいえ実は最近、欲しい本を見つけても買うのに罪悪感を覚えるようになっていた。
「読みたい本をこんなにため込んでいるのに、まだ買うの? 読むスピードが全然追いついてないじゃん。積読にもほどがある」と、私の後ろめたさをチクチク刺激する声が頭の中から聞こえるのだ。
 
それで「欲しい~! 読みたい! でもこの本の順番がいつになったらめぐってくるか分からない」と悶々とする日々を過ごしていたのだが、今日あのメモ書きが出てきたことでふと思った。
この罪悪感を払しょくするには、ある程度の数を処分するしかないんじゃないか。
そもそも私は本当に「必要な本」しか置いてないのだろうかと。
この視点でもう一度本棚を眺めると、意外にも私にとって「賞味期限切れ」あるいは「前ほど親しくない」「もう相思相愛じゃない」状態になっている本がとても多いことに気が付いた。
 
もしかしたら、本との関係性は人との関係と基本的には同じなんじゃないだろうか。
 
考えてみれば、学生時代の友達で今も親交がある友人はごくわずかだ。
20年前に友達になった人だって、10年前に知り合った人だって、みんながみんな親しい友として付き合いが続いているわけではなく、むしろその多くは、自分や相手の内面の変化や職場など環境の変化にともなって、何となく疎遠になったり付き合いが途絶えたりしている。
 
つまり、すべての人とは必然性があって出会い、別れるタイミングが来て別れているわけで、それについては人も本も同じじゃないかと思い至ったのだ。
 
「買った時には必要だったけど、今の私にまだ必要か」
「私は今後もこの本と親しい関係を続けていきたいか。すでに終わった関係になっているんじゃないか」
この基準に照らすと、本の1/3くらいは簡単に段ボール箱行きになった。
 
その結果、何が起きたかお分かりになるだろうか。
 
書棚の1/3が空きスペースになったことで、私の脳みその中からも不要なものが捨て去られたらしく、今私はこれから、残った本の中からどれを読もうかとワクワクしているのだ。
そして同時に、今興味のある本に大手を振って没頭できるようになったと心底ホッとしてもいる。
必要ない本がたくさんあると心の底では気づいているのに、もったいないからとその気持ちに蓋をしていたのが、自分で思う以上に負担になっていたようだ。
 
そうか。
「私の脳みその中から捨て去られた不要なもの」の正体は多分、「執着」というヤツだ。
 
「執着を手放せ」
よく聞く言い回しだ。
具体的にはどうすればいいんだろうと常々疑問に思っていたが、まさか不要な本の処分がそのまま執着を手放すプロセスだったなんて。
そして、要らない本が本棚を占拠している状態が自分の読書意欲を削いでいるなんてことも想像だにしなかった。
だが現実には、私の頭の中は本でパンパンの本棚のようになっていて、これ以上はムリ!!! な状態になっていたことが、隙間だらけの本棚を眺めていると身に染みる。
私を取り巻く環境は、そのまま私の内面を反映しているのだな。
そしてその環境は、ほかでもない自分自身で用意している。
 
さあ、これで「ものを捨てるのが苦手」とは言えなくなったぞ。
効果を実感したうえで自分を騙すことなどできないのだから。
とりあえず明日は、不要な本の買取査定だ。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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