ふるさとグランプリ

渋谷駅でいつも迷って嫌になっちゃうすべての人へ。これだけ覚えておけば、もう次は迷わないから。《ふるさとグランプリ》


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記事:あわづりつこ(ライティング・ゼミ)

「やだー、また変わったの?! 銀座線まで階段70段も登るんだって!」

「うっそ、まじ。昨日までここエスカレーターあったよね?!」

渋谷駅周辺はここのところずっと工事中だ。
2013年3月15日の東横線渋谷駅の地上ホーム最後の営業日には、たくさんの人が涙で最終列車を見送った。その後しばらくはひっそりとしていたのがウソのように、昼夜を問わず工事が続いている。

来月11月には、東京メトロ銀座線の渋谷駅ホームをずらすため、銀座線は数日のあいだ一部折り返し運転するらしい。こんな荒技まで繰り出しての大プロジェクトだ。毎日その姿を少しずつ変えている渋谷駅では、数週間から数ヶ月おきに仮設通路の位置が変わる。そのため、昨日まで通れたところが今日は行き止まり、なんてことは日常茶飯事になってしまっている。

このひんぱんな変化・変更は、この駅を行き交う多くの人を困惑させている。通勤で毎日使う人は、せっかく体が覚えた乗換え経路を数ヶ月ごとに修正しなければならない。立ち止まり、スマホの画面を食い入るよう見ているのは、ふだんは池袋・新宿をホームとして活動する人々や、他府県からの旅行者だ。増え続ける海外からの外国人旅行者が、英語表記の案内が少なく、ネットで情報を探す姿もしばしば見かける。

残念ながら仮設通路の変更は、グーグルさんに聞いてもわからないだろう。スマホの画面から目をあげて、案内板を探したほうがいい。

かといって、そこらに立っている警備員風のおじちゃんに聞くのもお勧めできない。おじちゃんたちは道案内のために立っているわけではないので、ハチ公の場所さえ説明できなかったりする。かくいう私も地元民ではあるが、東横線のヒカリエ改札でハチ公までの行き方を聞かれたら、手短にわかりやすく教えられる自信はあまりない。それほどまでに今の渋谷駅はカオスである。

そんなわけで渋谷の人気は下がっているようだ。以前から渋谷を若者・子供の街といって敬遠していた40代以上だけでなく、方向音痴の女子からの評判も良くないと聞く。できれば渋谷は避けたいよね……。

それでも仕事や用事で渋谷に来なければならない、という場合。
安心してほしい。渋谷駅に向かう途中この一つだけを心に留めておいてもらえれば、もう迷うことはない。

「渋谷駅はドラクエ、今から冒険の旅に出かけるのだ」。

これだけである。

ドラクエとは「ドラゴン・クエスト」の略称。日本だけでなく世界中で大人気となったRPG(ロール・プレイング・ゲーム)の名前である。戦いや会話をしながら、宝探しの旅をするたぐいのゲームだ。

時折大きなビルや駅を、この手のゲームに登場する「ダンジョン」に例えられることがある。ふんふん、確かにね。と思ったあなた。それを肝に銘じてほしいのだ。頭に、心に、刷り込んでほしい。ゲームの中ではなく、リアルにダンジョンを体験するのは自分なのだ、と。

乗り換えだからササっと通り抜けよう。と思うからスムーズに行けないと、“つっかえた”気になりイラつくのだ。
お城の地下から塔まで、押し寄せる雑魚モンスターを交わしながら進んでいくのだと思えば、逆流する多くの人をいかに上手くかわすかという楽しみに変わる。

今までは上りエスカレーターがあったのに、階段だけになってしまった。これだって、しんどいじゃないか、と文句をたれる代わりに次のステージの戦いのためにトレーニングの場を用意してくれたのだと考えればいい。3階分階段を登れば、けっこういい運動になる。

“通過点の駅”ではなく「楽しむリアルダンジョン」と強く意識するだけで、「迷った」は「次のステージへの道をさがす」に変わり、知らないこともわからないことも、ワクワクの種になる。

勘のいいあなたはもうお気づきだろう。
「渋谷駅で迷わないコツは、違う思い込みを持つことだ」と。

残念ながら、渋谷駅周辺の工事はまだまだ続く。すべてのプロジェクトの完成予定は2027年だという。東京オリンピックが終わった後まだ7年も続くのだ。
その変わり続ける間じゅう、わかりやすい案内システムを要求し続けることは、どの観点から見ても得策ではない。常にすべての人にわかりやすい案内システムを数週間・数ヶ月おきに作り変えるのはほぼ不可能だ、ということはちょっと考えればわかる。そんなできもしないことに期待するのは私たちのエネルギーがもったいない。

変わらない他人に期待するよりも、自分がちょっと視点を変えるだけで、見える景色が変わり、ストレスも減る。

不思議なことにこうやって見方を変えると、実際に目に入ってくるものが変わる。いつも見ているはずなのに気づいていなかった、出口のサインや矢印が目に飛び込んできたりする。長くそこにあったけど、自分が知らないだけだった出口が、実は最短距離だったと気づく。焦って「どっちだよ!」と怒りを抱えながら右往左往していた時よりもスムーズにたどり着けてしまう。
そんなことが実際に起こるのだ。新しい思い込みは、あなたに新しい景色を見せてくれる。

ああそうそう、もう一つだけ。
充分時間の余裕を持って向かって欲しい。
待ち合わせや訪問時間までギリギリの時間しかないと、充分楽しめないからね。

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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

ふるさとグランプリとは?
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