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瀕死の表情筋をオンライン英会話で復活させる方法


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記事:前田光(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
オンライン英会話を受講し始めて、早いもので丸3年が過ぎた。
何であれ3年も続ければそれなりに身につくものではあるが、私が先生方に一番感謝しているのは英語力を向上させてくれたことではなく、英語とは全く関係のない、あるコンプレックスを完全に解消してくれたこと、そして学生時代から漠然と疑問に感じていたことに答えをくれたことだ。
 
誰かと新しく知り合ったとき、ある程度時間がたってから「今だから言うけど……」の枕詞付きで、「最初に会ったとき、実は怖かった」と嬉しくない告白を若いころにしょっちゅうされていた。
 
自分の第一印象の悪さを最初に自覚したのは、もう何十年も前、高校に入学したあたりだ。理由はよく分からなかったが、どうやら私は初対面の人からあまりよい印象を持たれないことを、このころに自覚した。
 
自分では不愛想にしているつもりもなければ不機嫌なわけでもない。無口でもないし聞かれたことには普通に答えているつもりだったが、相手に与えている印象はよくなかったようだ。
とはいえ、生来あまり気に病む性格でもないし、なんだかんだ言っても友達はすぐにできたので、大した実害はない。だから、まあいいか、噛めば噛むほど味の出るするめのような路線も悪くないんじゃないかなどと思っていた。しかし、正直なところ言われてうれしい言葉ではなかったのも確かだ。
 
さすがに社会人になればその場に合わせた対応もできるようになるし、何しろ会社にいれば外向きの「社員」の顔をしていればいいので、初対面の人に接するのはむしろ楽になった。だが、一度自分自身に対して抱いてしまった「私は人から怖い人に見えている」という思い込みはまあまあ根強いものがあり、プライベートで新しい場所や新しい人に出会うときは、すんなりそこに溶け込むというよりは、いつもちょっと身構えて助走をつけ、えいやっと飛び込む心持ちが必要だった。人付き合いが非常に苦手なわけではないが、こうした場面ではやはり緊張してしまうという人は、私だけではないと思う。
 
コロナ禍が始まる直前の9月から10月にかけて私は、フィリピンのセブ島にある英語学校に短期留学していた。
わざわざ留学する理由を、表向きには「授業料が安いし、仕事で英語を使うことがあるから」と説明していたが、人生も後半戦に入ったのを機に、もう一回だけ「勉強だけに打ち込む」体験をしたくなったという理由の方が大きい。
だが何十年ぶりかに「学校」という場所に身を置いたとき、すっかり忘れていた例のコンプレックスを思い出した。
フィリピン人の先生はいつも笑顔でフレンドリーだ。私も学生時代、あんなふうにふるまっていればよかったのだろうか。5週間の留学期間はあっという間に過ぎ去った。
 
帰国した私は同じ英語学校が運営しているオンライン英会話クラスにそのまま入会した。つい先日までリアルに話していた先生たちに再会できるのは嬉しかった。
 
オンライン授業の初日、仮想教室に入室した私は顔なじみの先生とあいさつを交わした。私のパソコンの画面には左側に先生の顔、右側に私の顔が大きく映し出されている。
「Hi Hikaru! Nice to see you again!」
先生は現地での授業と同じように、大輪のヒマワリが咲いたように笑っている。私も先生に満面の笑顔で「Hi, Kieron!」と返事をし……ていなかった。なんと、自分ではにっこり笑っているつもりだったのに、画面に映る私の顔は笑顔からは程遠いものだったのだ。 ひいき目に見てもせいぜい、会社の同僚と廊下ですれ違ったが急いでいたのでちょっと会釈しただけで通り過ぎました、程度のあいまいな笑顔だ。
留学中によくしてくれた先生に再会できて、本当にうれしかったのに、だ。
 
と同時に、なるほどこれだったかー! と長年の謎が氷解した。
私の表情筋は、私の心が感じている嬉しさのレベルに全然マッチしていないのだ。
これじゃあ初対面で怖がられるはずだと心の底から納得した。
 
それからはオンラインレッスンのたび、つまり毎日、英語とは別に心の中で違うレッスンをするようになった。画面の中の先生の笑顔を手本にして、自分が今、どんな顔をしているのか、今の自分の表情は自分の今の気持ちにぴったりくるものかどうかをチェックするようにしたのだ。
表情を作る練習だけなら一人で鏡を見るだけでもできると思うかもしれないが、そこに相手がいることでそれがシミュレーションではなく実体験になる。また、フィリピン人の先生のように相手が基本的に笑顔でいてくれることも重要だ。能面のような表情の人を相手に自分だけが笑顔になるのはかなり難儀だが、相手が笑っていると自分の顔も緩むからだ。そうやって相手の顔と自分の顔を同時に見て、実体験とリンクさせながら気持ちと表情をペアリングさせることができるのは、オンライン会話ならではの強みだろう。なにしろ私たちは、自分の顔をじかに見ることができないのだから。
 
「自分を客観視することは大切だ」などとよく言われる。
これはたいてい、自分の内面や行い、態度などを振り返る必要性を説くときに使われる言葉だが、自分の表情を客観視することもまた、それらと同じように大切なのではないだろうか。
「ノンバーバルコミュニケーション」とは、言葉以外のコミュニケーション手段、つまり態度や声色、しぐさ、ジェスチャーや視線を通じたコミュニケーションを指すが、表情もまたこのなかの重要な情報伝達ツールだからだ。そして、ノンバーバル言語で伝わる情報量が言葉で伝わる情報量をはるかに上回っているという研究結果は、掃いて捨てるほどある。
 
「笑顔がすてきだったのが印象に残っています」
 
この間あるオンライン交流会でご一緒した方から、後日こんなメッセージをいただいた。
こんな言葉をかけてもらえるなんて、昔の私だったら考えられないことだ。
コロナ禍以降、オンライン会議やオンライン学習が急速に普及した。人と人とのリアルなコミュニケーションは減り、それはとても残念な話だ。だが一方で私は、それを補うべく生まれたこうした新たなツールを使って、人間は新たな可能性を広げていくだろうと期待してもいる。
 
 
 
 
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2022-11-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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