メディアグランプリ

息子の荷物を勝手に背負っていたのは私だった


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記事:森野はるか(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「子どもを尊重しましょう」
子育て中、聞かないことはないこの言葉。
私も耳にタコができるほど聞いて、してると思っていた。
 
だけど、そうではなかったことに気付いたのは今朝のこと。
 
 
朝7時40分に起きて、驚いた私は中学1年生の息子を起こした。
「もう7時40分だよ、ママ寝坊した!」
 
えええっと、驚愕の顔で起きる息子。
いつもその次に来るのは「なんで起こしてくれなかったのー!」という八つ当たりの言葉。
不機嫌さ満開で怒りまくる息子に、「ごめんね、ごめんね」って寝坊したことを謝り、「車で送っていくから、待ち合わせてるお友達に連絡しなよ」って言うのがいつものパターンだった。わが家は山の上にあり、学校まで3キロ、歩くと30~40分かかるのだ。
 
さらに言えば夜は毎日、
「お風呂入りなさ~い」
「家庭学習タイムじゃないの? まだゲーム?」
「そろそろ寝る時間でしょ」
と、お風呂と学習と寝る時間、背中を押すのが日課。
 
子どもの時間割を揃えるとか、宿題に関しては小学校の頃から口を出さず、
忘れ物したら怒られたらいいし、不便さが分かれば次から自分でできるようになるよね、
と本人に任せていた。
なので息子は、自分の身支度は早いうちから自分でできるようになっていたし、
私は十分子どもを「尊重」していると思っていた。
 
 
でも先日ママ仲間のお母さん、子どもから見たらおばあちゃまと
何気ない会話をしていた時、それは尊重してないよね、と言われて驚いた。
 
お風呂に入るかどうか、勉強するかどうか、いつ寝るかも、子どもに任せたらいい。
もう大きいんだし、自分でできるでしょ、自分に責任持たせなきゃと言われて、目から鱗が落ちた。
 
そうか、確かにその通りだ。
叱りすぎないようにとか、勉強に対する言葉がけとか、気を付けていることはいろいろあったけど、生活習慣に対しての自分の言葉には、一片の疑いも挟んだことがなかった。
 
 
早速その日の夜、夕飯を食べながら子どもたちに伝えてみた。
「お母さんさ、きみたちに小さい子のように接していたけど、考えたら中学生なんだよね。
もう寝る時間とか自分で考えて決められる年齢だったね。ママうっかりしてたわ。
だから、これからは早く寝なさいとか言わないし、朝も起こさないことにするね。
自分で寝て、自分で起きてね。自分でできるって信じてるから。」
と、我ながらきちんと言えたな~、ヨシと思っていたら、
「ママ、前にもそんな事言ってたけど、3日位で普通に早く寝ろって言い出した」
「今回は何日もつかな」
と言い返されて撃沈……。
 
でも次の日から、夜も朝も口出しするのはやめてみた。
子どもたちは途端に夜、伸び伸びしはじめた。
そして案の定、思い切り夜更かししながらゲーム三昧。
胸の中はもやもやしつつも、本人の判断を尊重してる私えらい、と言い聞かせた。
 
 
そんな「朝起こさないよ宣言」の後の、初の寝坊。
習慣になっていたのでつい「ごめんね」の「ご・・・」まで口から出かかって、
いや私の責任じゃないわ、と黙ることに成功。
 
息子も、不機嫌顔で私に何か言おうと口を開いて・・・閉じた!
きっと息子も、ママのせいだ! と責任転嫁の八つ当たりをしようとして、
そうじゃなかったと気付いたに違いない。
 
黙って着替えて食事を食べる息子に、ぽそっと、
「頼まれれば、送らないでもないけどね」とつぶやいたら、
しばらく無言の後、
「送って」
「それ、人にものを頼む態度かな?」
「送って下さい」
「いいよ」
 
そして食事を食べ終わった息子は静かに歯を磨き、荷物を持って玄関を出たのだった。
学校に行く車中でも「今日部活あるの?」「あるよ」と、実に穏やかな会話。
 
今までだったら、寝坊した息子が起きてから学校に行くまで、
息子の不機嫌と文句が撒き散らされて不穏な空気になり、
謝っていた私がそのうち逆ギレし、
送っていく車の中で「昨日ゲームやりすぎて夜更かしするからでしょ!」と怒り出し、
息子はますます不機嫌顔という、ふたりとも全く幸せでないスパイラルに陥っていた。
 
 
そうだ、私は息子が背負うべき「自分で朝起きる」という責任を勝手に背負いながら、
重いとか文句を言っていたのかもしれない、と気付いた。
 
ああ恥ずかしい。
子どもの「責任」という荷物を奪っていたのは私だったなんて。
 
ちいさくて、全力で守らなくてはいけなかった10年前と同じスタンスは必要ない。
もう息子は私の背を追い越している。
体だけでなく心も成長していることを、つい見過ごしていたのかもしれない。
デジタル機器と同じく、子育ても日々アップデートが必要だったのだ。
そして本人が責任を負うということは、親ができることはもうほとんど無いのかもしれない、と気付いた。
 
そういえば子どもが高校生になった友達がボヤいていた。
もうすっかり、飯炊き女だよ~と。
ごはん作るくらいしかやってあげられることないもの、と。
 
確かに、もう着替えの手伝いはいらないし、一緒に公園も行かない。
徐々に自立し、そしていつか家を出ていくのだろう。
そんな日は、意外に近いのかもしれない。
 
そう考えると今、うちの中学生の子ども達に必要なのは手を貸したり、背中を押すことではなくて、自立に向けた練習だったのだ。
 
毎日の生活に追われて、そんな当たり前のことさえスッポ抜けていた私に、
気付かせてくれた育児の大先輩に報告と感謝を伝えたら、
「親が子どもを信頼して任せたら、子どもたちもどんどん変わるから、楽しんでね」
と温かい言葉が。
 
育児はやっぱり一人じゃできない。
感謝しきりである。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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