メディアグランプリ

ドーハの悲劇とヒーローズ・ジャーニー


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:杉本陽子 (ライティング・ライブ東京会場)
 
 
このタイトルから、きっと私はサッカーファンの人なんだろうと思われたことだと思う。
 
申し訳ないが、私は普段、全くスポーツに興味がない人間である。
興味がないというより「憎んでいる」に近い。全くの運動オンチで幼稚園の体育の時間に体育教師にいびられたことがDNAに深くトラウマとして刻まれているのだと思う。
 
だから、毎晩夫が夕飯時に見るニュース番組の最後スポーツの時間が苦痛でならなかった。
 
(なんで他人がやっているスポーツにあんなに熱中できるのだろう)
 
大のスポーツ好きの夫を、違う星の生き物を見るかのように白い目で見ている節があった。
 
ただし、この私のスポーツ嫌いが4年のうちたった2回だけ「解除される」タイミングがある。
 
それが、冬季オリンピックのフィギアスケート、そしてサッカーのワールドカップである。
 
フィギアスケートは、スポーツというより芸術として捉えているといったほうが正確だと思う。
 
ワールドカップを応援する理由は中学時代、1993年にさかのぼる。
その年はJリーグ開幕の年で、クラス内で男女問わずサッカー熱が上がっていた。
 
同じクラスの初恋の男の子は大のスポーツ好きだった。私はちょっとでも初恋の彼と話題を共有したくて、普段は全く興味がないサッカーに興味を持つ努力をした。サッカーのルールや選手の名前を覚えることで、試合を見るのもちょっとずつ楽しくなっていった。
 
その年は、ワールドカップ予選の年でもあった。
そう、日本のサッカー史に刻まれた「ドーハの悲劇」の起こった年である。
 
私ももちろんリアルタイムで試合を観ていた。よこしまな思いでサッカーを観るようになった「にわかファン」ではあるが、そんな私でもこの時のロスタイムの失点の衝撃は今でも忘れられない。全身から脱力する感覚。泣き崩れるゴン中山、呆然と座り込むラモス瑠偉のシルエットが今でも頭に焼き付いている。
 
私は当時中3の高校受験生だった。その「ドーハの悲劇」のショックからサッカーへの関心も徐々に薄れ、受験勉強に集中していくこととなった。
 
それから19年の月日がたった。
 
なぜかワールドカップの一瞬の時だけは、あの中学時代に友達とサッカーの話題でわいわい盛り上がった楽しい記憶が蘇り、日本代表を応援したくなるのである。
 
 
先日のワールドカップ初戦の対ドイツ戦は、夫と二人で自宅のテレビで観戦した。
 
日本の国歌斉唱の時、森保監督の目には涙がいっぱい溜まっていた。その表情にぐっと心がひきつけられた。森保監督の心には、あの「ドーハの悲劇」から今までのことが思い起こされたのではないかと思った。
 
普段から、ワールドカップの時だけは熱中する私であるが、森保監督の涙を見たとたん、さらに何かのスイッチが入ってしまった。森保監督の「ヒーローズ・ジャーニー」の世界に引き込まれたのかもしれない。
 
天狼院ライティングゼミで学んだ「ヒーローズ・ジャーニー」。
 
世界中の神話を研究したジョゼフ・キャンベル氏は、数多あるストーリーを研究していく中で、多くの神話や英雄の物語の主人公たちが辿っている道のりには一つの共通点があることに気づいた。それは主人公が試練を経験し、試練を克服して成長し、真の英雄になって還ってくるというプロセスであった。
 
「ドーハの悲劇」をフィールドで目の当たりにした森保選手。同部屋だった柱谷選手の証言によれば、森保選手はその夜ベッドに突っ伏してずっと泣いていたらしい。その挫折感はどれほど深いものであったのだろう。その苦しみをバネにして、選手としても監督としても活躍し、日本代表監督として「ドーハ」に還ってきた。そのストーリーは、私の心を一瞬で熱くした。
 
もともとサッカー好きの夫は、「ドイツに勝つなんて無理だよ」と最初から半ばあきらめムードだったが、私は前半で「これはいける」と根拠の無い予感がよぎった。案の定、日本は後半に逆転した。
 
「ドーハの悲劇」は「ドーハの歓喜」に塗り替えられた。
 
 
 
私はサッカー用語や戦術がよくわかっていなかったので、より深く理解するために1度見た試合をさらにもう1度ネットで丁寧に見返した。負けたコスタリカ戦さえ全部見直しておさらいをした(夫にはわざわざ負けた試合をもう一度見るなんて意味がわからないといわれた)。対スペイン戦の前には、ドイツvsスペイン戦も観て強い選手をチェックした。朝が弱いくせに、朝4時に目覚ましをセットしてスペイン戦を一人で観戦した(夫はハーフタイムに起きてきてすぐに寝たので、あの見事な後半冒頭の6分間を見損なってしまった)。テレビでサッカーの話題が出ると、そのほかのことをほっぽらかしてテレビにかぶりつきである。
 
普段の私を知っている夫はもちろんびっくりしているが、自分の変化に一番びっくりしているのはむしろ私の方である。
 
それだけ「ヒーローズ・ジャーニー」には人を動かす力がある、ということなのかもしれない。
 
 
マイナスが大きければ大きいほど、それを乗り越えたときに周りに与えるインパクトは大きい。
 
思えば私の人生も挫折だらけであった。アラフォーで親兄弟なしの天涯孤独、無職で病気がち、借金さえある状態に陥ったこともある。
 
その挫折を経験している真っ最中に、「いつかこの時期を乗り越えて幸せになったときに、『あんなに辛いことがあっても乗り越えられた人』として、誰かの「希望」となりたいと思っていた。それが私を支える「希望」であった。
 
今では長年の夢だったカウンセラー、ライフコーチとして活動している。この仕事が有難いことは、今までの経験した苦悩や困難が一つ残らず全て、誰かを助ける糧となるということだ。
 
これまでのライティングゼミの記事においても、今までのしくじりや挫折を余すところなくさらけ出してきた。それを読んでくれたクライアントさんが、「陽子さんがそんなにたくさんの挫折を経験して今があるなんて知らなかった。私も今は辛いけどがんばりたい」という声をくださるようになった。
 
これは、私の筋書き通りなのである。
 
だから今、辛い経験をしている人に伝えたい。今はあなたの「ヒーローズ・ジャーニー」の真っただ中なのだと。あなた自身がヒーローになって、多くの人の「希望」となる未来は必ずやってくる。森保監督が身をもって示してくれたように、「悲劇」を「歓喜」に塗り替えることは可能なのだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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