メディアグランプリ

そして、恋だけが残った

thumbnail


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:村人F (ライティング実践教室)
 
 
恋には一生縁がない。
正直、そう思っていた。
天狼院書店の『ブックラブ』という出会い系読書会に参加してもトキメキを感じることがなかったし、婚活サイトに至っては登録する意味すらわからなかった。
だからずっと独り身のまま、楽しいような寂しいような人生を送るもんだと思っていた。
 
しかし、転機は会社のリモート研修で訪れた。
 
僕は自己紹介チャットに大好きなマイナーバンドのことを書いていた。
これは同じ推しを持つ仲間を発見できるかもしれないと期待してやっていることだが、何回試しても知っている人はいない。
そのため今回もダメだろうなと思いながら記していた。
 
だが、流れてくるチャットを眺めてひっくり返った。
「私も大好きです」
このフレーズが同じグループの女の子から出ていたのだ。
 
チャンスだと思った。
なぜならちょうど1ヶ月前、行きつけのバーである本を読んだばかりだったからだ。
それは『夢をかなえるゾウ』で有名な水野敬也氏の『LOVE理論』
つまり恋愛攻略本である。
このメソッドを吸収した直後に、超ド級の出会いが発生したのだ。
もう行くしかないだろう。
 
とはいえ、そのリモート研修はそれぞれが自宅で受けているので雑談するような時間はなかった。
だから以前の僕なら、連絡先すら交換できず嘆いて終わっていただろう。
 
しかし今は『LOVE理論』に加え、天狼院書店のゼミ『ラブレター・ライティング』で培った文章力がある。
そのため会社のチャットを駆使してLINEを交換することもできたし、どのように会話を始めるべきかもわかっていた。
 
それは相手の好きなものを聞き出し、褒めること。
そうすれば高い好感度からやり取りを開始できると知っていたのだ。
だから音楽がキッカケだったこともあり、おすすめのアーティストを質問するところから始めた。
 
紹介されたのは、全て知らないバンドだった。
まあ、それは問題ない。
今はYouTubeで簡単に聞けるから。
そうやって軽い気持ちで検索した瞬間、顔面を思いっきり殴られた感覚になった。
 
ジャケットの時点でヤバいのである。
なんというか、僕より遥かに曲を知っている人じゃないと選べない。
そういう新感覚にも程があるビジュアルをしていた。
 
そして再生してみる。
全て、ツボに入った。
間違いなく浴びるように聴いてきた中で、厳選したものを選んでくれた。
そう心から納得するセレクトだった。
そして、よこしまな気持ちでその質問をした僕は恥ずかしくなった。
だから最初のやり取りは、素晴らしい音楽を紹介してくれたことへの感謝だった。
 
ただ、彼女のLINEには癖があった。
1日に1回しか返信が来ないのである。
やろうと思えば眠くなるまでずっと続けられる現代なのに、だ。
しかも話題は彼女の推しについてだったから、もっとゴリゴリ進んでもおかしくはないはずである。
そのため、最初はもどかしい気持ちを持ちながらやり取りを続けていた。
 
しかし、これが1週間続いたタイミングで気づいた。
彼女は僕と会話をするためだけに、わざわざLINEを開く習慣をつけていると。
そう1日1回とはいえ、必ず返信をくれるのである。
このコンテンツだらけの現代でだ。
つまり、その時点で好感度も想像以上に高い。
そういう意識を持ってしまったのだ。
 
さらに流れが切れない、という現象も同時に起こっていた。
なにせ、1日に1回だけやり取りするのである。
つまり会話が中断する最大の要因「おやすみなさい」が決して発生しないのだ。
だから『ラブレター・ライティング』で培った文章力を用いればいくらでも続けられたのである。
 
だがこの流れのまま1ヶ月が経過した頃、僕は壊れていた。
返信が来るたびに5分のけぞり、メッセージを打つ時も全身を震わすようになっていたのだ。
なぜか。
最も肝心なところを知らなかったからだ。
 
そう、恋人募集中なのかわからないのである。
出会いの場所が会社の研修だったから。
そのため不安でしょうがなく、頭がおかしくなっていた。
とはいえ、この質問は超ド級のセクハラである。
タイミングを間違えると全てが崩壊する。
そう考えてしまい、二の足を踏んでいた。
 
しかし推しの新曲が直前で発売延期になり、逆に吹っ切れた。
もう聞こうと。
というか、そうしないと本当に精神が持たないレベルに追い込まれていた。
だから思い切って「彼氏いるの?」と聞いてみた。
 
YESだった。
まあ、察してはいた。
やり取りの中で「引っ越しで忙しい」とあったし。
理由はそれしかないよねと。
考えないようにしていただけで正直わかっていた。
 
とはいえ、珍しく本気になったタイミングである。
しかも同じ推しを持ち、趣味もメチャクチャ合う。
はっきり言って『ブックラブ』なら完全勝利にも程がある状況だ。
そこがピンポイントで彼氏持ちなんて!
どれだけ腐っていやがるんだ僕の恋愛運は!
 
その夜は節制もやめて久々に宅配ビザのLサイズを頼んだ。
チューハイもガブガブ飲んだ。
それでも全然酔えなかったが。
そう、若干ヤケクソになりながら涙の夜を過ごしたわけである。
 
しかし、次の朝はとても爽やかだった。
どうやら、結果はどうであれ最大の懸念事項が解決したことが大きかったようだ。
 
もちろん、何も失っていないことにも気づいていた。
それどころか、同じ音楽を愛する友達ができたのだ。
しかも、ここまで書いたことを全てブチまけてもドン引きせず、
「ごめんなさい! でもやり取りできて嬉しかったのは本当なんでこれからも仲良くしてください!」と言ってくれる。
こんな素敵な女性、運命の人より巡り合うのが難しいじゃないか。
だからいい思いしか、していなかったのだ。
 
なにより、ちゃんと恋ができた自分が誇らしかった。
僕にも女の子との会話でアホほどハッピーになり、返信のない夜を怯えながら過ごす感覚が残っていたのである。
しかも、文字だけという最難関の恋愛コミュニケーションを1ヶ月も続けられたのだ。
これに比べたらリアルで会えるイベントは遥かに簡単だし、楽しい。
そういう希望が僕の中で湧き上がっていた。
 
だからもう「恋には興味ない」なんて強がりで逃げていた僕はいない。
今は『LOVE理論』と『ラブレター・ライティング』を駆使して積極的に動いてやろうという決意にあふれている。
しかも彼女とのやり取りはそのまま『ブックラブ』にも応用できる。
だから人生史上、最も有利な形で戦いに挑めるのだ。
 
そう考えると、春の訪れが待ち遠しくなる。
今年は最高に燃えて、甘い時を過ごせるよう勝負をしていこう。
その覚悟を決めた3月だった。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



関連記事