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我が家のホットケーキ事情


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記事:若杉亜美(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
時は、大パンケーキ時代。
と言いたくなるくらい、十数年前、パンケーキが大流行していた。
調べたところ、2008年頃。海外の有名なパンケーキ屋さんが東京に続々登場し、テレビやSNSでおいしそうなパンケーキ店の特集や投稿を見るたび、地方に住む私は「いいなー」と羨ましい気持ちで、SNSのいいね、を押していた。
当時学生だった私は、主に金銭面で、気軽に東京へは行けなかった。
こんなにも世の中にパンケーキがあふれているのに、行きたいお店に行けないなんて。
一時の流行にのりたいから、なんてミーハーな気持ちがないわけではなかったけれど、小学生の頃から大のパンケーキ好きを自称していたからには、行かない選択なんてなかった。
子供の頃の休日の朝は、両親の気まぐれでよくファミレスのモーニングを食べに行っていた。
「ガストに行くよ」
その一声さえあれば、どんなに眠たくても飛び起きて、いつもより早めに出かける準備をした。そしてもうこの時には食べたいものは決まっている。モーニングメニューの中にあるパンケーキセット。
店内に入りメニューを見てほかのメニューを試してみたくなるものの、後悔するのが嫌でいつも冒険はしなかった。
朝マックも休日の朝ご飯の定番だった。もちろんパンケーキセット一択。朝マックのパンケーキは、三段重ねてあって、特別感があった。バターを丁寧に一枚ずつ塗って、上からたっぷりメープルシロップをかけて三枚重ねて食べられるのは、子供のころの私には最高に贅沢な気分を味合わせてくれた。
定番ではなかったけれど、たまーに、ロイヤルホストへ連れて行ってくれる日もあった。
決まってパンケーキセット。大人になった今も、時々モーニングを食べに行く。大人になってからは、子供の頃と比べていつでも行ける余裕があるからか、ほかのメニューを頼むこともあったけれど、結局パンケーキセットに落ち着いている。
そして、お店で食べるだけでなく、我が家のおやつの定番は母が焼いてくれるホットケーキだった。平日、学校から帰ってくると玄関からふんわりと香る甘い匂いに、わくわくした。学校嫌いだった私は、おやつにホットケーキを食べると、学校で起きた嫌な出来事もすぐに忘れることができた。おやつの時間だけではなく、朝ごはんとしても、たまにホットケーキが登場した。平日の朝はなかなか起きられずにウダウダと布団に中にいたけれど
「ホットケーキ焼けたよ」
という母の声を聞いてすぐに飛び起きることができた。朝のパンケーキは少し特別でバナナが入っている。その日は一日中ご機嫌でいられた。
ほかの家庭と比べたことはないからわからないけれど、少なくとも私の友人たちの家庭と比べると、かなりホットケーキ登場率が高い家庭だったと思う。逆に、友人の「そんなめったに食べない」という言葉に驚いたし、友達も我が家のホットケーキ率に驚いていた。
2008年のブームがきてから4年後の2012年。
社会人になってある程度余裕ができた私は、ついに東京でパンケーキデビューを果たすことができた。めったなことではホットケーキが出てこない家庭で育った友人と。
Bills、カフェカイラ、サラベス、PaulBassett、など有名なところへ赴いては、そのお店の雰囲気とパンケーキの味に驚いたり満足したり。とくに今までフワフワした食感のパンケーキを食べたことがなかったので、口に入れた瞬間にふわっと溶けてなくなるのは新体験だったし、山盛りのフルーツたちがパンケーキの上にちりばめられてキラキラしているのも胸をときめかせたし、一人では食べきれない量のパンケーキに、海外を感じたり、たくさん五感を感じることができた。どのお店もおいしくて満たされて、また行きたいと思うけれど、いつも「なんかちがうんだよな」と思っていた。
パンケーキを食べた後にすぐ「ホットケーキ食べたい」という謎感情が湧いてくる。突き詰めて考えて、「家で食べるホットケーキが一番好き」と気づいたときは衝撃だった。
あんなに羨望していたお店のパンケーキを食べて、家で作るパンケーキが一番だと思うなんて。だけど納得もした。子供の頃の幸せな記憶と紐づいているからだ。
家に帰って来た安心感と一緒に食べたホットケーキ。
冬の朝は、石油ストーブの上にフライパンを置いて作ってくれたホットケーキ。いつもそんなことしないのに、冬だけの特別感があって大好きだった。
たまに気まぐれで父が作ってくれたホットケーキは、母が作るものより分厚くて、正直言って食べにくかったけれど、おいしかった。
昭和9年生まれの、「男は料理するもんじゃねぇ」と常日頃言っていた祖父が、私が一人でホットケーキを焼いていて苦戦している姿を見て、一緒に手伝ってくれたこともあった。しかもフライ返しでホットケーキを上手に裏返していて、料理できるじゃん、と驚いた。そしてようやく気が付いた。我が家のホットケーキ率が高かったわけじゃない。この家の娘が狂気的にホットケーキが好きだから登場率が高くなっていたのだ。
 
 
 
 
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2023-06-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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