夢があるなら秘めるんじゃなくて、その地図を広げろ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:パナ子(ライティング実践教室)
これは何としても受けなければいけない。
告知を見た時点で激しく心が揺さぶられた。私はほぼ同時に受講を決めていた。
本屋の社長が、今回の講義をもって、講師業から手を引くという。途中断念した期間があったものの、私はこの本屋で約3年間「モノを書く」ということを学んできた。それがライティングゼミだった。
プロのライターとしても活躍しているこの社長に初めて「モノ書き」の極意を学んだとき、書くのにはたくさんのプロセスが存在していること、人に読んでもらうには何に気を付けたらよいのか、文章に熱を込めるというのはどういうことかを知った。
講義が、文章を書くということが、面白くてたまらなかった。
プロとして文章が面白く書ける社長は話も非常に面白く、ファンになった。こう思ったのは私だけではないはずで、ゼミ受講者のリピート率がそれを物語っていた。
そして、この夏で最後となる社長の講義が満を持して始まった。
この講義の一番のウリはコンサル付きということだった。生徒がどんな方向性で行きたいかに合わせて社長自らコンサルティングをしてくれるというのだ。
それは、夢を語ってもいい場所を提供されたということと同義だった。
30名限定の募集はすぐに満員御礼となっていた。
生徒の顔ぶれはさまざまで既にプロのライターとして仕事をしている人、セミプロながらweb媒体で連載を持つ強者、仕事をしている傍らライティングを続けている人も大勢いた。その仕事も通訳やカメラマン、芸術関連など多岐に渡っていた。
講義が始まってすぐ、社長は言った。
「じゃあ、まず、ライティングをあなたの人生でどう活かしていきたいのか。つまり『書く目的』を明確にしましょう」
オンラインで受講している者も多数いるため、ネット上の投稿ボックスにそれぞれが書き込む形で講義が進む。
最初に私は「子育てあるあるなどを面白く発信して世の中のお母さんたちを元気づけたい」と書いた。しかし、書きながら物足りなさを感じずにはいられなかった。
いいの? 本当にそれだけでいいの? もっと奥底にあるやつないの?
そう思いながら投稿ボックスに送信した。
メッセージが届いた順に社長が読み上げていく。私は(あっ)と思った。
続々読み上げられるなかにはっきりとこう書いている人たちが大勢いたからだ。
「稼ぎたい」
みんな正直に心の内を出してきていた。
カメラマンの腕を活かしてフォトライターとして活躍したい、趣味の読書を活かして書評ライターになりたい、芸術作品を紹介するライターになりたい……みんな自分の行きたい道をきちんと自覚していた。
あぁ自分のことをもう騙せない。というかさらけ出してみたい。そう思った。
一度出した投稿を引っ込めるべく、編集ボタンを押す。
今まで憧れていた事、書いてみなよ。こんなチャンスないよ? さらけだすなら今でしょ!
私の中の林修もそう騒ぎ出していた。
私は「書く目的」の続きにこう書き加えた。
「それで、地域のフリーペーパーで連載を持ったりしたいです」
これは書くことを仕事にする、ということを意味していた。
持ちたいです! と言い切らないあたりまだ自分の弱さが露呈していたが、それでも何と言われるのか緊張しながら再度投稿ボックスに入れた。
私が住む地方都市では地域のフリーペーパーが結構な充実ぶりだ。大手インフラ企業が出しているもの、地方自治体が出しているもの、地方の編集プロダクションが出しているものなどがある。それらが郵便ポストに届くたびにワクワクして読む。写真もイラストも多く使われ紙面が賑やかで楽しいし、地域ならではの情報が詰まっている。そこに4コマ漫画やエッセイを連載しているクリエイターがいた。
(あぁいつかこんなところに自分が書いた文章が掲載されたら楽しいだろうなぁ)
そう思っていた。
思い切って投稿ボックスに入れてみたものの怖さも残った。
他の生徒はきちんとした職業や肩書がある。その本業に即したやり方で文章を書こうとしている。私には何もない。毎日ただただ兄弟の世話に追われているだけの主婦だ。
こういう時の悪い癖で「自分には何もない」がつい加速してしまう。
学校の成績だって下から数えた方が早かったし、会社員時代は仕事のポンコツぶりが目立ってお局にわかりやすくいびられたりした。
そんな私が表立って夢を語っていいのか!?
ドキドキしながら待っていると、ついに社長が私のやつを読みだした。
開口一番「これ、すごくよくて」と目のつけどころを褒めた後、その夢の攻略方法について一気に語りだした。最後の登壇ということもあってか、業界裏話も踏まえながらその道にたどり着く方法をこと細かに教えてくれた。
何しろ一番よかったのは社長が本気モードだったことだ。
何の特技も肩書もない主婦の戯言と笑わずに真剣に受け止め応えてくれた。丸腰だった私の鞘に社長が刀の差し方を教えてくれた瞬間だった。
嬉しかった。すごく嬉しかった。
私もこれから武器を磨いて戦っていいんだと背中を押してもらえた気がした。
こうして私は一人で密かに願っていた夢を初めて公言した。
夢を公言するということは、自分だけで隠し持っていた宝の地図をみんなの前で広げることだ。そうすることで、その地図を一緒に見ながら色々と教えてくれる人が出てくる。
「まず君の現在地はここだね」
「行きたい目的地はここなんだね」
「その目的地に行くには、この道を通るといいよ」
「途中この場所にはトラップがあるから気をつけな」
もしかしたら「そんなの」なんて鼻で笑われて恥ずかしい思いをすることもあるかもしれない。でもそんなの全然気にしなくていい。夢を笑う人は、おそらく夢を持っていない人だ。
自分の行きたい道があれば声に出して周囲に伝えてみる。それがもしかしたら実を結ぶ一助になるかもしれない。
千里の道も一歩から。
今日もパソコンに向かってコツコツと文章を書き綴る。もうすぐ夏は終わりそうだが、私のアツい季節は今まさに始まりを迎えようとしている。
***
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