福岡女子の初恋キラー《ふるさとグランプリ》
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記事:バタバタ子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「タキシード仮面」をご存じだろうか。
そう、某美少女戦士がピンチのときに、赤いバラをピュッと飛ばし、テーマ曲が流れ、カメラが上のほうに動いて姿をとらえると、テンポよく台詞を言う、あのヒーローだ。
彼はいつでも近くに潜んでいるが、いよいよという場面まで出しゃばってこない。あくまで、一生懸命がんばるのは主人公だ。だが、それでもかなわず、絶体絶命かと思われたとき初めて、絶妙のタイミングで助けてくれる。そして、逆転のチャンスを作り、励ましの言葉をかけてくれる。優しくて頼りになり、包容力もある、理想の存在だ。
そんな彼だが、実はその正体は、よく意地悪をしてくるイケメン大学生。街中で頻繁に遭遇し、そのたびにバカにしたり、ちょっかいを出してくる。腹立たしいが、刺激的で、無視できない魅力にあふれている。
このような二面性をもつ彼の魅力に、当時の視聴者である少女たちは夢中になった。
彼女たちの人生で最初の王子様となった彼は、現在「初恋キラー」と呼ばれている。
福岡の女子にとって、まるで彼のような、初恋キラーたるスイーツがある。
福岡のどこでも買える身近な存在で、空港でも駅でも、神社の入り口でも、イベントの出店でも売っている。お土産でいただくことも多いし、自分で配ることも多い。物心つく前から、これを食べて育っている。県を代表する各種銘菓のひとつで、本場は太宰府天満宮の参道だ。
西鉄太宰府駅の改札を出て、ロータリーから右手に折れ、参道を登っていくと、両脇ににぎやかな店がギュウギュウと並んでいる。民芸品、アイドルのブロマイド、和雑貨など、いろいろな店が軒を連ねるが、やはり多いのは土産物屋やお食事処。そのガラス窓に貼られているのは、「梅ヶ枝餅あります」とのマジックの文字。
梅ヶ枝餅を売る店はたくさんある。数えていないが、数十軒はあるのではないか。気づきにくいが、参道が終わり、天満宮の境内を抜けた先にもお茶屋さんは続く。
いくつかのお店は、ガラス窓を通して、焼いているところを外から見ることができる。熟練の手つきで型をパッパッとひっくり返したり、機械仕掛けで流れるようにお餅が焼き上がったり。見ているだけでも楽しい。
どのお店で買っても、値段は同じ。種類も、黒いあんこ一種類。ちなみに、梅は入っていない。お店によって味に個性はあるが、昔から変わらず、いつも同じに美味しい。
持ち帰り用に5個とか10個とかで買うと、箱に詰めてくれる。
「おもち1個ください」と注文すると、できたてを紙に包んで渡してくれる。
サクサクのお餅と、アツアツのあんこを、ちょっとずつかじりながら参道をぶらぶらするのが太宰府スタイルである。
食べていると元気が出て、眠たくても目が覚める。寒い日などは、このお餅ひとつで、体の内側からポッポッと温まる。
ついでに、お腹も満たされてしまう。だから、他にもソフトクリームや濡れ煎餅やてんぷらなど、食べ歩きグルメはたくさん売っているが、なかなかチャレンジできない。次はお餅を我慢して他のものを食べようと思うのだが、梅ヶ枝餅の魅力が、なかなかそれを許さないのだ。
また、持ち帰った梅ヶ枝餅は、全く別の顔になる。
家に帰って箱をあけると、柔らかいビニルにくるまれた餅がぎっしり並んでいる。餅の上には大抵、小さな紙があり、梅ヶ枝餅の由来や、美味しく食べるための温め方を教えてくれる。それによると、炊き上がったごはんの上に置いて温めるのが良いそうだ。だが、普通にレンジでチンしたり、トースターで温めてもおいしい。
温めなおした餅には、焼きたてのサクサクした面影は全くない。同じ餅だとは信じられないくらいだ。どっしりと重たく、かぶりつくと、びよーんと伸びる。ホクホクと、あんこの甘さが膨らむ。ほっとする味わいだ。元気をくれるというよりは、優しく包み込み、ゆっくり落ち着かせてくれる。
こんな風に、梅ヶ枝餅は、サクサク刺激的な顔と、どっしり優しい顔を併せ持つ、二面性を備えている。どちらか片方だけでも十分に魅力的だが、その両方を兼ね備ているものだから抜け出せない。タキシード仮面のような、理想的なイケメンだってそうだ。優しいだけでなく、ピリッとスパイスが効いている。
また、どちらも身近で、物心ついた頃からずっとそばにいる。普段はその存在を忘れてしまうほどだ。だが、常に手の届くところで待機していて、ヘルプが必要なときは、さりげなく視界に飛び込んできてくれる。
さらに、なんといっても一番の共通点は、背中を押してくれるところだ。
ピンチなとき、ヘトヘトなとき。それ自体が問題を解決してくれるわけではない。だが、その魅力で癒し、元気づけ、次の一歩を踏み出す力を与えてくれる。それも、押しつけがましくなく。私たちがそれぞれ、主役たるヒロインとして頑張るためのエネルギーをチャージしてくれるのだ。
彼らは役目を終えると、スッと姿を消してしまう。後に残されるのは真っ赤なバラと、手のひらの温かさ。そして、腹の底から湧き上がる熱気だ。
彼らがくれた元気をどう活かすかは、私たち次第。
さて、もいっちょ頑張るぞ!
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