おいしい寿司を食べたければ騒がしい店を選ぶべし《ふるさとグランプリ》
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記事:なみ(ライティング・ゼミ平日コース)
「どこのお店にしようかな」
旅行先での食事選びは、結構悩みますよね。
スマートフォンで検索して、評価が高いお店を調べて行ってみても、なんだかいまいちだったり。
実際にそんなお店に行ってみると、長蛇の列で時間を無駄にしてしまったり。
でもせっかくの旅行だから、美味しい物を食べたい!
ですよね! せっかくの旅行だもの、おいしいお店に行きたいですよね!
分かりました、分かりました。
そんなあなたに、岩手県宮古市という港町で、新鮮な海鮮を食べて育った私が責任をもって、美味しいお寿司屋の見分け方、お教えします。
美味しい寿司屋、というと、代表格として東京銀座にあるような、静かな店内で食べる雰囲気を想像されると思います。
まるで伝統芸能を目の前で見せてもらっているような、熟練の職人さんの技を含めて楽しむ、まさに大人の空間といったところでしょうか。
都会の高級寿司店の売りは、なんといっても職人の腕前です。
多くの寿司ネタは、東京から遠く離れた場所から輸送されてきます。
しかし、長距離間の輸送だと、どうしても新鮮さが損なわれてしまいます。
その新鮮さを補うのが、職人さんの技術なのだと思います。
職人技に集中するには、やっぱり静かな店内がいいです。
では、地方でもやっぱり、がんこ寿司職人が黙って食えと注意してくるような、静かなお店がいいのでしょうか。
いいや、私の自論は真逆です。
地方における美味しい寿司屋選びのコツ、それは、騒がしいお店を選ぶべし、です。
店の外からも、店内の話し声が聞こえてくるくらいがベストです。
ちょっとくらい、どんちゃん騒ぎしている方が、いいかもしれません。
え、うるさくて嫌だ?
いいんです、ちょっとうるさいなと思うくらいが、良いお寿司屋の証です。
私が、騒がしいお寿司屋を勧めるには、理由があります。
その理由は、映画や舞台などに出演する役者を決める時の、オーディションを想像してもらえれば分かります。
アカデミー賞を受賞した映画、「ララランド」をご覧になりましたか?
この映画は、主人公が、女優志望であることもあり、彼女がオーディションを受けるシーンが何度も出てきます。
「ちょっとこんな演技をしてみて」
そう指示をされて、監督や脚本家の前で主人公は、演技を始めますが、ここで考えてほしいのは、主人公ではなく、監督等のクリエイター側の視点です。
監督たちの目は真剣です。
自分が精いっぱい想いを込めて作った作品の俳優選びは、映画や舞台そのものの出来を左右します。
監督や脚本家、演出家はプロです。
自分が手掛けた作品の役者選びは、真剣そのもの、必ず見届けたいものの一つでしょう。
役者とか、舞台とか言われても、なんだか遠い世界の話のような気もしますが、小学生、中学生の頃を思い出して、想像してみてください。
自分で描いた絵が、市内小中学生絵画展覧会に出品されることになったら、実際にその展覧会に見に行きたくなりませんか?
展覧会はどんな雰囲気の場所なのか。
他に選ばれた生徒の作品はどんなものなのか。
自分の作品は、どんな配置で飾られているか。
自分が手をかけて作った作品は、出来上がった状態まで見届けたいのが、クリエイターの心理なのかもしれません。
私がうるさい寿司屋を選ぶのを勧める理由は、そこにあります。
美味しいお寿司を食べたいのなら、美味しい寿司を創造するクリエイターが集まるお店に行け、ということです。
寿司でいうクリエイターとは?
技術が売りである、銀座の寿司屋の場合は、寿司職人です。
では、地方の場合は?
漁師です。
地方の寿司屋の売りは、何といっても新鮮さです。
ただ漁をするだけでなく、新鮮さを保つのも漁師の腕の見せ所なのです。
漁師の仕事は、命がけです。
きっと明日いつも通りに漁に出ますが、もしかしたら帰ってこれるかも分からない。
東日本大震災の通り、岩手県沿岸部は昔から津波が多い場所でありまして、漁中に津波が発生するリスクもあります。まさに命がけです。
実際、漁師に嫁いだ私の伯母は、東日本大震災で命を落としました。
漁場の近くに自宅を構えていた多くの漁師が、亡くなっています。
まさに仕事に命をかける漁師たちは、命を懸けて得た魚やウニ、ホタテの味を知っています。
本物の味を、その舌が覚えています。
命を懸けて自分たちでとってきたものを、わざわざまずいところで食べる義理はありません。
漁師が集まるお店こそ、当たりの店です。
美味しく調理してくれるところで、うまい酒を飲みたいんです。
もうお気づきですね、私が騒がしいお店を勧める理由に。
ちょっとうるさいお店の、声の主は、地元の漁師たちです。
命をかけて採ってきた魚たちを、大事に扱ってもらえて、おいしくしてもらえるお店。
そんな寿司屋に、漁師さんたちは集まります。
だから、地方の港町に行ったときは、うるさい店に行った方がいいんです。
舌の肥えた漁師さんたちが満足するお店。
命をかけても納得できる味。
そんなお店にぜひ、挑戦してみてください。
え、やっぱりうるさいって?
いいから騙されたと思って入ってみてください。
漁師たちの歌声もきっと、いい酒の肴になりますよ。
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