チーム天狼院

問:次の文章を読んで、「わたし」の心情を答えなさい。《ありさのスケッチブック》


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国語の長文問題に、「感情読み取り問題」ってありますよね。国語の問題は、小学校や中学校では嫌になるほど読んでいたんですが、ここ最近ピタっと解く機会がなくなりまして。どんなものだったかなあなんて思っている方、ちょっと下の問題を解いてみて下さい。

問1:次の文章を読んで、傍線の部分の「わたし」の心情を四十字以内で書きなさい。(今回は傍線の代わりに太字を使います)

「これで、帰りの会を終わります。」

この言葉と共にわたしは教室を飛び出した。
全速力で走った先にはちえみが待っていた。
いつもの帰り道へと歩みを進めたところで、わたしはさっそくちえみに質問した。

「で、話ってなに?」

そう、このことが聞きたくてわたしは走ってきたのだ。
数秒前までニコニコしていたちえみの顔が一気に曇った。

「うん、あのね、びっくりさせちゃうと思うんだけど……」

いつもハキハキしているちえみが、今日はなんとなく口が重い。
嫌な予感がした。その予感に気づかないふりをして、わたしは明るく振舞った。

「え、なにー? 鈴木君のはなし?」

鈴木君は、ちえみが片思いしている男の子だ。
ちえみは鈴木君の話をするといつも恥ずかしがって顔が赤くなるのだが、この日は青白い顔をしていた。

「ちがうの」

ちえみは困ったような表情を浮かべ、そう言うと、一息にこう続けた。

「わたし、遠くに引っ越すことになったの。だから、えっちゃんと離れ離れになっちゃうの」

ヒッコスコト二ナッタノ……ヒッコスコト二ナッタノ……
ちえみのことばが頭の中をぐるぐると回った。先ほどまで晴れていた空に雲がかかった。
ちえみが、引っ越す。毎日会えなくなる。そんなこと、理解しろと言われたって出来っこない。わたしとちえみは、いつも一緒に居る、親友だった。それが、離れ離れになってしまう。
どうなってしまうのだろうか。全く想像ができない。わたしはちえみと一生会えないのではないか、という衝動に駆られた。どうしようもない不安でいっぱいになった。

「えっちゃん?大丈夫?」

わたしは、目の前が暗くなるのを感じた。

問:次の文章を読んで、傍線の部分の「わたし」の心情を四十字以内で書きなさい。

さて、この問題の答えはなんでしょうか。

わたしが教えられたこの問題を解く場合の鉄則は、
「文章の中に答えがある」
「文章の中に書いていないことは不正解である」
「情景も登場人物の気持ちを表している」

ということでした。

小説の問題を書くときに気を付けるのはー?
登場人物、情景、感情!
なんてことも、塾に通っていた頃に何十回も答えていたので今も覚えています。

この鉄則に沿って解くと、こんなところでしょうか。
答:親友であるちえみとの別れが一生であるかのように感じ、不安に思っている。(35字)
国語の問題なんてもう3年くらい解いてないので、これで十分かわからないのですが……
まあこの文章も問題も自分で考えたものだし、きっと間違っていることはないでしょう。

感情読み取り問題、どんなものだったか思い出してきましたか?
それでは、もう一個いっちゃいますか!

さて、次の問題。
問2 次の文章を読んで、Aくんの心情として最も当てはまるものを選びなさい。

「さて、始めようか。」

今日は、これから始まるグループ活動のリーダーを決める日。リーダー候補の三人と、仲介役のわたしが集まった。Aくん、Bさん、Cさんの三人。まずは、四人がリーダーをやりたいかどうか聞いてみよう。

「まず、みんなの中でリーダーになりたいひとっている?」

三人とも、やりたい!とは言わない。何を思っているのかよくわからない、曖昧な表情だ。
沈黙に耐え兼ね、Bさんが口を開く。

「やりたくなくはないけど……」

その言葉を待っていたかのようにあとのふたりも続けて言った。

「わたしもやってもいいよ」と言うのは、Cさん。
「俺も、誰もいないならやる」と言うのは、Aくん。

はあ、これはよくあるパターンだ。出る杭は打たれる、の習慣がしみ込んでいる私たちだもの。いきなり最初から出しゃばることなんてないよね。ここは、わたしのファシリテーターとしての腕の見せ所。いろいろ質問してみよう。うーん、じゃあこのグループの理想像から。

「じゃあさ、三人にとってどんなグループになるのが理想?」

待っていました、と言わんばかりにCさんが話し始める。

「わたしはさ……」

それから、みんなで理想のグループとはどんなものか、かれこれ15分ほど話した。この議論から派生してさらに議論は深まり、達成したい目標、やりたいことはあるか、など話し込んでいった。わたしはちらりと腕時計に目を落とした。おっと、これじゃいけない。もう30分も話しているな、これじゃリーダーが決まらない。聞いているかぎり、どのひとも真剣にこのグループのことを考えているし、リーダーは誰でも大丈夫そうだな。ちょっと聞いてみよう。

「ねえ、わたしはリーダーが誰になってもいいと思うんだけど、どうかな?」

話し込んでいた3人はぱっと私の方を見た。皆がそうだね、と頷いたが、それ以上言葉が3人から出ることはなかった。
沈黙。沈黙。沈黙。
向き合って座っている3人は、お互いけん制するかのように黙り続けている。
その沈黙を突き破ったのはBさんだった。

「わたし、やるよ」

またしてもBさんの言葉に突き動かされ、続けてAくん、Cさんも口を開く。
「たしかにBさんなら、俺は任せられるなって思ってた!」
「わたしも、Bさんなら支えるよ!」

よし、満場一致だね。ホッとしたわたしは、Bさんに向き直ってその意思を確認した。

「じゃあ、Bさん任せていいかな?」
「うん!」
そう、力強く頷いた。

「たのんだぞ!」
Aくんはそう言い、大きく手を叩いた。
つられてその場に居るみんなが拍手した。
こうして、このグループのリーダーはBさんとなったのであった。
この決定を祝福するかのように、暖かい光が私たちを包んだ。


この時のAくんの心情として、当てはまるものを選びなさい。
1.「わたし」が話し合いを進めてくれたことに感謝している
2.適任だと思っていたBさんに決まり、安心している
3.Cさんの方がリーダーに適任だと思っていたので、拍子抜けしている
4.自分がリーダーになりたかったが推薦がなかったため、がっかりしている

さて、みなさん。答えは、わかりましたか。
鉄則通りに考えれば、簡単ですよね。正解は2です!
……なんて、言いたいところですが、この問題の正解は2ではありません。
本当の答えは……
なんと、4です。

実はAくん、言葉にも態度にも出していなかったのですが、リーダーになりたかったんです。自ら立候補する勇気はなくて、他の人が推薦してくれるのをずっと待っていたんです。口では「たしかにBさんなら、おれは任せられるなって思ってた!」と元気よく言っていましたが、心の中では、”誰か、俺の方がいいって言ってくれ……”と思っていたのです。そう願うことで誰かにこの気持ちが伝われば、と思っていましたが、その気持ちを汲んでくれるひとはいませんでした。そこでAくんはがっくりきてしまったのでした。

おかしいですね。国語の読み取りのルールからすると、文章に書いていないこと、文章から予測できないことは不正解。4が答えなら、落ち込んだAくんの心情を描写する文章があるはずです。しかし、どこにも書いていない。いったいどういうことなのか。

……実は、これは国語の問題ではなく、「現実の世界の出来事を国語の感情の読み取り問題にするとどうなるか、という問題」なんです。

この問題、わたしは非常に苦手でして。
思っていること、ちゃんと言ってよー!
なんで思っていることと正反対の行動するのよ!
と叫びたくなります。

特に、怒っているひとは大の苦手で。
怒っていると、表情も変えずに黙っちゃうひとっているじゃないですか。
そうなると、何が原因で怒っているのか、どこの文脈にも書いてなくて困っちゃうんです。
わたしができるのは、おどおどと顔色を窺うことくらい。

国語の問題でなく、現実の世界だと感情の読み取り問題はどうなってしまうのか。

現実の世界では、
「切り取られた文章内」で登場人物の気持ちが読み取りきれるとは限らない。

思ってもいないことを口にするメンバーがいたとしても、「天の声」は話し手には聞こえないし、「明らかに嘘だとわかるそぶり」を見せるとも限らない。

落ち込んでいる時にあたりが暗く見えたりすることはなく、むしろピッカピカの晴天、なんてこともある。

そうです。国語の読み取りの鉄則を超えてしまうのが、現実というものなんですよね。

人生に、ナレーションはいません。
天の声が聞こえることもありません。
自分の感情に合わせて天気が変わるなんてこともあり得ません。

なんて、不自由な世界でしょうか。
周りの環境に頼ることが全くできない、それが現実なんですね。

しかし、国語の問題と同じルールも現実にあるようですよ。

「自分の思いは言葉や態度にすれば伝えることができる」

ほらね。

さあ、この一年はどんな一年にしましょうか。
わたしは素直になって周りの人に感謝を伝えたいですね。
昨年は、お世話になりました。今年も、よろしくおねがいします。
こんな短い言葉でも、きっと感謝は伝えられるはず。

今年のわたしの目標をひとつお教えしますね。
「自分の考えを伝える時に、天の声に頼らない!」

そうなんです。二個目の問題で出てきたAくんのように、はっきり言えず、態度にもあまり出せずに「察してください系」になりがちなのは、まぎれもなくわたしです。言葉にも態度にも出ないならわかるわけがないですよね。笑

わたし、この「察してください系」なせいで、片思いのときのアピールが相手に伝わったことがないんです。とほほ。

ことばにできるなら、ことばにする。
ことばに出来なかったら態度で示す。
感謝のことばはよりしっかりと伝える。

このことを大切にして、今年一年精進したいと思います。
みなさま、2016年も宜しくお願い致します。


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