チーム天狼院

「本当の自分はこんなんじゃない」と一度でも思ったことのある人は、この本を読んでズタズタに切り裂かれればいい《リーディング・ハイ》


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天狼院書店の山本です。

「いやー、なんだか本当の◯◯が知れたような気がするよ」

魔法の言葉だと思ってました。
大学時代のある日の飲み会、同じテーブルにいたのは、最近よく会うようになった友達でした。

同じ授業で知り合い、それまでたわいもない世間話や、バイトのこと、サークルなど一通りの情報だけは知っていました。
けれどちゃんと長時間話したことはなく、大勢で話しているときのやり取りくらいしかしたことがない友達でした。

連絡先を交換して、直接やり取りを始めると、意外にも「西加奈子が好き」と好きな著者が同じだったり、「実は、高校までバスケ部でバリバリの運動部で」ということがわかってきました。じゃあ今度ゆっくり話そう、という提案になったのは、自然な流れでした。

見た目ほんわりしていて、どちらかというといじられキャラだった彼女は、3杯目の赤ワインに口をつけ始めたにも関わらず、店に入ってきたときと変わらない表情で、思った以上にきっぱりと話し出しました。

東京に出てきているけど、若いうちに消耗しつくすのが嫌だから、就職は地元に帰ろうかと思っていること。
今入っているサークルがなんだか違うような気がしたから、新しいところに入ろうとしていること。
どういう人物像になりたい? という話。

学校の日常ではこっぱずかしくて話せないような話題でも、彼女との話は止まりませんでした。
話せば話すほど、どんどん時間の密度が濃くなっていきました。けっして長くない飲みの時間だったはずなのに、気づけばあっという間に、時計は帰りの時間を指していました。

彼女のこれまで見たことのない顔に、私はなんだか嬉しくなって、思わず発したのが冒頭の言葉だったのです。

いつもは口に出さないような深い話に、お互いの距離が縮まったと感じた会、このトドメの一言を発すれば、信頼できる仲になれた証になるような気がしていました。

 

よく漫画の登場人物が、ヒロインや仲間たちに投げかけます。

「お前といるとさ、本当の自分で居られるような気がするんだ」

そのシーンを境に、2人は同じ目的を共にするパートナーになります。
一度できた絆は絶対に揺るぐことがなく、その先何があってもずっと、彼らはお互いを信じ続けるーーー

そんな美しい物語を夢見ていたのだと思います。

誰かとの関わりの中で、その人のふだん見せない一面が出てくると「あ、相手は自分に気を許してくれてるのかな」と嬉しくなり、じゃあこちらも、と「本当の自分」を差し出しました。

「本当の自分」の交換は、まるで、相手と仲良くなるための儀式でした。
その手順を踏んで初めて、私は相手のことを理解できたような気がしていました。

なんにも考えていないように見えて、実はいろいろ考えているんだぞというギャップ性のある人物像に憧れていたときもあります。

たとえば深い話をする場に出てくる自分が「本当の自分」で、ふだん日常を過ごしているときの自分は「本来の力を秘めているダークホース的な存在」だと信じていました。

「本当の自分はこんなんじゃないんだぞ」と、いつも頭のどこかで思いながら過ごしていたんです。

 

はっきり言って、この本は劇薬です。

少しでも「本当の自分」というワードを相手や自分に対して使ったことがあったり、「自分の本当の姿を、実は別に持っている」と思ってるような人にとって、治療中の傷に貼られてある絆創膏を無理やり剥がし取られ、その傷に直に軟膏を塗りこまれるような感覚を覚えるでしょう。

気づかない方が幸せだったのかもしれません。

けれど私はこの本を読んで、事実を真正面から直視せざるを得なくなりました。

「本当の自分」なんて、どこにもいないんだ、と。

私が「本当の◯◯を知れたような気がする」と言っていたのは、その人がたまたま自分の都合の良い解釈をしてくれるポジションに、その瞬間、たまたまいてくれたからでした。
自分の都合の良いように、「本当のその人」を、自分の中で作り上げていたのです。

「本当の自分」という言葉を使いたがっていたのは、傷つきやすい自分を守るための保険を常にかけていたかったのです。

何を思っても、何を口に出そうとも、どの瞬間もぜんぶ、自分に責任を持っているのは「自分」ただ一人のみだったのに。仮の自分も本当の自分も、ハナから存在していなかったのです。

 

最初、この本は、「モテ」というものを面白おかしく描いているだけの、冴えない男の日常劇だと思っていました。

ところが私の予想は、たやすく裏切られたのです。
それどこか、油断しきっていた私の心に付けられた傷からは、血がどくどくと流れて止まりませんでした。

それは、一見ぺらぺらの一枚の紙で指を深く切ってしまったときの、こんなもので切れるはずがないと思っていたのに、という驚きに似ていました。

油断していると、ズタズタにされます。

それでも、いいですか?

その覚悟がある人だけ、タイトルをお伝えしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

その本とは、漫画『モテキ』(講談社/久保ミツロウ)です。

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ただ単に、長澤まさみが可愛すぎる映画の原作マンガではありません。
ただ単に、森山未來の演技が堪能できるドラマの原作マンガではありません。

もう1度言いましょう。

これは、はっきり言って、劇薬です。

特に、これまで「本当の自分」という存在を意識したことがある人にとっては、かなり危険と言えるでしょう。

ともすれば、あなたのアイデンティティが全否定される可能性があるからです。
頼りにしていた一本の最後の綱が、この本を開くことでいとも簡単に千切れてしまうかもしれないからです。

 

けれど同時に、広げられた傷が、急速に回復し、もともと持っていた皮膚よりさらに強固なものになる、秘中の秘の薬でもあります。

激しい運動で筋肉痛を起こしているところをさらに追い込むことによって、元より何倍も強靭な肉体が出来上がるように。

「本当の自分」なんていない。

その事実が怖いはずだったのに、私は、どこからかとてつもない勇気が湧いてくるのを感じました。

そこからしか、本当の関係は築けないのです。
それに気づいたとき、今の現状ばかりに不満を漏らす自分が、いつの間にか消えていました。

もし、あなたが「本当の自分」はここじゃないどこかにいるーーーそう思っているのなら。
この本が、痛いくらいに背中をばしばしと叩いてきて、力強いエールをくれます。

ぜんぶぜんぶ「本当の自分」なら、誰かの懐に飛び込むことに、何を怖がる必要があるのだろうか? と。

 

* * *

【リーディング・ハイとは?】
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