ふるさとグランプリ

親には押せない「大人のスイッチ」《ふるさとグランプリ》


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記事:サンディ(ライティング・ゼミ日曜コース)

 

ふと疑問に思う。いつを境に僕らは「青年」から「大人の男」になるのだろう?

20歳を超え、堂々とお酒が飲めるようになった時だろうか?

車の免許を取り、それまで自転車で通っていた道のりを車で運転した時だろうか?

はたまた、毎週立ち読みしている週刊誌が「少年ジャンプ」から「モーニング」に変わった時だろうか?

正確な瞬間は分からない。いつの間にか大人になっていたともいえるし、30歳を過ぎた今でもまだ完全に大人になり切れていないともいえる。

 

ただし、確実に大人のステップを踏むきっかけになったイベントというのは誰にでもある。

僕の場合のそれは人生で初めての転勤だった。

社会人2年目。25歳の秋に僕は人生で初めての転勤を言い渡された。

生まれ育った埼玉県を離れて暮らすことになった街は九州最北端にある、福岡県の北九州市だった。

 

母は東京、父は東北というバックグラウンドを持つ僕は、九州の文化というものに全くなじみがなく、方言や刺身醤油といったこっちでは当たり前の物にいちいち感動していた。傍から見ればずいぶんと変わった奴が来たと思われていたかもしれない。

 

北九州の魅力を端的に表すとするなら、「鉄と魚と人情の街」という言葉がしっくりくる。

首都圏から来た人は、一様に刺身の鮮度に目を丸くし、2015年に世界遺産に登録された八幡製鉄所を見て日本の近代化に思いを馳せるというのが滞在期間中、この街をガイドしてきた僕の印象だ。

 

しかし、この街の魅力を知ってもらうためにも、もう一歩踏み込んでもらいたい。

この街の本当の魅力、それは「鉄と魚」そのものではなく、それらに象徴される地域の人である。職業問わず「鉄の男」「海の男」といった形容詞が似合う人との出会いに僕は随分と恵まれた。

 

方言の関係もあるだろうか、東京からくる出張者は「言葉がキツイ!」とよく表現する。事実、そういった一面もある。が、無骨な態度の奥にある温かさに僕は随分と助けられた。

 

 

 

不器用で要領が悪く、仕事ができない僕を皆が育ててくれた。

いや、手取り足取り世話をしてくれたわけではない。じっと見守り「気付かせて」くれたといった方が正確かもしれない。

 

思い出に残っているエピソードがある。

今から3年ほど前に、僕はいつものように仕事帰りに会社の先輩と酒を飲んでいた。

少しお酒がまわったという事と気を許せる先輩と二人きりだったという事もあり、話題は職場の愚痴になった。

 

僕は最近上司から受けた理不尽な仕打ちを自虐的に先輩に語った。

詳しい内容は忘れてしまったが、あくまで笑いのネタとして聞いて楽しんでもらうくらいの感覚で話した内容だったと思う。

 

意外にもじっと黙って聞いていた先輩は静かに一言言った。

「お前を含めて、最近の若い奴はどう言われたかって話ばっかりするよな。今のお前に大事なのはどういわれたかじゃない、何を言われたかだよ」

その後、どういう会話をしたかは覚えていない。

 

恐らく、仮に両親に言われた言葉であれば間違いなく反発していたと思う。今も昔も僕は説教が大嫌いだ。酒の席でも、説教や自慢話が始まれば静かにその場を離れる。それを快く思わない人がいるのも承知しているが嫌なものは嫌だ。

 

しかし、信頼できる先輩に言われた一言は心に刺さった。

日頃から僕を肯定してくれ、愚痴や悩みを聞いてくれる人の一言だったからこそ、刺さったのだろう。そう、「大人のスイッチ」は誰にでも押せるわけではないのだ。

 

この日の出来事は「理不尽の上にある大儀」として僕の心のノートにしっかりと刻まれた。仕事は自省だ。他人の落ち度を探すのではなく。自分のパフォーマンスを納得してもらうために、自分が足りないことを探し、埋めていかなければ、周囲の期待に応える事はいつまでたってもできない。

 

この日を境に僕は変わった。上手くいかないのを人のせいにしたり、責任転嫁するのを避け、しっかりと自分の責任や落ち度を受け止められるようになった。

こう書ければなかなか良い話になるのだが、現実はなかなかうまくいかない。

 

 

先輩の言葉をしっかりと消化するまでには数年の年月を要した。いや、正直に言えば今も完全に実践できてはいない。自分の器の小ささに自己嫌悪する毎日は今も続いている。

ただし、振り返った時に反省は出来るようになった。

 

時折、過去の自分を振り返り、誰かに言われて反発したり、納得できなかったりした言葉の真意をもう一度汲み取り、この「理不尽の上にある大儀」を確かめるのである。

 

あれから数年が経ち、僕も部署異動により再び転勤を命ぜられた。

年を追うごとに会社からの要求レベルは高まり、能力以上のプレッシャーを受けることも少なくない。が、心折れずに毎日、サバイバルができているのはあの時、「教える」のではなく、「気付かせて」くれたあの一言が支えになっているのかもしれない。

 

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