チーム天狼院

【違和感】最近個人的によくわからない言葉第1位「青みピンク」《まみこ手帳》


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流行とは難しいものです。
やっと自分も世間の波に追いついたかと思えば、瞬く間に振り落されている。

女性向けのファッションやら化粧品やらの流行となると、なおさら。
それはもう、他の追随を許さぬスピードでぐわんぐわんと移り変わります。

 

わたしも一応女子大生のはしくれなので、
人並みにファッション雑誌を読みます。
「これ!」と決めて毎月買っている雑誌はないけれど、
美容院に置いてある雑誌だとか、立ち読みだとか、
興味のある特集を組んでいる雑誌があったら気まぐれに買うこともあります。
この間本屋で適当な雑誌をとってなんとなくぱらりとページをめくっていると、
ある単語が目に留まりました。

 

「青みピンク」

 

ほう。

出ました。謎のワード。
さぁどういうこっちゃ。
流行りの色の呼び方でしょうか。
でも、青なの?ピンクなの?そもそも青みとはなんぞや?

雑誌では当たり前のようにその単語が使われていたため、
特に写真があるわけでもなく、

結局どんな色なのかわかりませんでした。
もやもやするのでわたしはネットで検索しました。

 

どうやらやや紫寄りのくすんだピンク色のことらしい。
わたしがひねくれているからなのか、
画像を見ても「いや、ピンクじゃん!」としか思えませんでした。
青みというほど青要素をあまり感じないというか、
普通のピンクとそんなに違いがわからないというか……ごにょごにょ。
それでも同年代の女の子たちは嬉しげにこの単語を使っています。

「狙ってた青みピンクのリップ、ゲット〜!」
などと。

なるほど。確かに、
「狙ってたくすんだピンクのリップ、ゲット〜!」
よりは幾分か洒落た響きだと思います。

 

それにしたってファッション雑誌の編集部の方はよくまぁこんな不思議な造語を次々と開発していくものだ、と感心します。

そして世間の女の子たちも順応力が半端じゃない。
新しいホットワードを仕入れるとすぐに自在に使いこなしてみせるのです。
わたしは彼女らに比べてぼーっと過ごしているのでいつもワンテンポかツーテンポ遅れをとってしまいます。

みんな、すごい。

 

しかし、そもそも、ですよ。
なぜこんなに不可解なワードがいつも注目され、流行となりえるのか。
わざわざこんなややこしい言葉で混乱を起こさずに、
一目で意味が伝わりやすい平素な言葉を皆が使えばいいじゃないか。
……と思わなくもない。

 

ちょっと考えてみました。
で、なんとなく勝手に納得しました。
あぁ、これが”違和感”の力なのか、と。

 

わたしは雑誌で「青みピンク」という単語を見たとき、もやもやしました。
「は?」「どういう意味?」と思い、実際にググりました。見過ごせませんでした。
そう、この時点であちらの勝ち。思惑通りだったわけです。

心理学だかなんだかの授業で聞いたことがあります。
人は違和感を放置していると不快指数が上がるそうです。
人間は本能的にもやもやを解消して、すっきりしたい生き物なのです。

逆を言えば、もやもやするともっと知りたくなる、そして私がネットで検索したようになんらかの次の行動に出てしまう。

 

”違和感”こそ人の関心を惹きつける強力な要因なのだ。
”違和感”こそ魅力であり、魅惑なのだ。

 

そう考えると、どんなビジネスでも少なからずこれを意識しているのだとわかってきました。
たとえば新規プロジェクトを立ち上げるとき、新製品を出すとき、アオリコピーを考えるとき……等々。
一見無関係なものを結びつけたり、相反するものを一緒にしてしまったり、もしくは同義の言葉を重ねて混乱させてみる(「雌ガール」なんてまさにこれですね)。
こんなふうに恣意的に”違和感”をつくりだそうと試行錯誤しているのだと。

 

改めて探してみると、身近なところにもありました。
これもそうか、”違和感”で人を惹きつけたのか。
というフレーズが。

初来店のお客様と話すとき、私たちスタッフはたいてい「当店のことはどのように知られたんですか?」と尋ねるようにしています。すると結構な割合でこんな答えが返ってくるのです。

 

ネット上でこんな噂を聞いて、興味をもったと。

「『こたつ』のある『本屋』、天狼院書店」

 

あぁ!確かに”違和感”、なのか!
ずっと天狼院にいると、本屋にこたつがあるのなんて当たり前じゃん、という感覚になってくるのだけれど。そうかそうか、これはおかしいことなのか!
世間の人からしたらまさに”違和感”しかないのですね。
最近は『こたつ』なのに『冷やし』てしまうし。

店主三浦さんもまた、次から次へと”違和感”を生み出すのが得意な方です。
だからこそ、人々の心をがしっがしっとつかんでいくのでしょう。

 

本屋なのに、部活がある。
本屋なのに、落語をする。
本屋なのに、劇団がある。
本屋なのに、写真を撮る。
本屋なのに、遠足をする。

 

せっかく”違和感”だらけの本屋にいるのだから、
わたしもそんなへんてこな、魅力的で魅惑的な書店員でありたい、と思うのです。
言ってみれば、そう。
”違和感メーカー”に、わたしもなってみたいのです。

 

……。

「『違和感』を『つくる』」という表現もなかなかに”違和感”がありますね。
なんだかいま、自分でちょっと気に入りました。

混乱。

そろそろ、わけがわからなくなってきましたね。落ち着きましょう。

 

とにかく、雑誌でふと見つけた「青みピンク」という言葉の”違和感”がここまでわたしの脳内で思考を巡らせる起爆剤となったのです。
考えすぎて頭の中が「青みピンク」一色になってきました。

恐るべし、”違和感”のパワー!

 

 

……もうね、いいでしょう、わかった!わかりましたよ!
今日ルミネで、買ってきます!そしてつぶやいてやりますとも!

こんなふうに。

 

 

「青みピンクのリップ、ゲット~!!」

 

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