さよなら、黒船。《天狼院通信》
始まりはスケッチブックに書いた1枚の絵だった。
これを見せたとき、大工さんは、これならできるよ、と言った。
僕が何気なく書いた絵が、オープンまでに本当にかたちになった。
それを、僕は「黒船来航」と名づけた。
天狼院を、業界に対してインパクトを与える存在にしたい。
そんな想いからつけた名前だった。
オープン以降、黒船は、天狼院書店のメインステージとして、本を満載してお客様を迎えてきた。
一番最初の天狼院の顔は、まちがいなく、黒船だった。
そこから、天狼院の顔は、様々変化してきた。
こたつや部活、天狼院BOXや、劇団天狼院と映画、天狼院秘本、そして雑誌「READING LIFE」と、めまぐるしいほどに脚光を浴びる主役が変わってきた。
いつしか、黒船の存在が薄れてきた。
新しく入ってきたスタッフの中には、「黒船来航」という本来の名前を知らないものもいた。
このメインステージが担ってきた役割や、僕が託した想いを知らない人もいた。
それで、いいのではないかと僕は思っている。
天狼院は、オープン以来、とてつもないスピードで進化をし続けてきた。
その成長の過程で、「黒船来航」はその役割を終えようとしている。
停滞する業界に対する「黒船来航」としての役割を、天狼院は終えようとしているのだ。
もうすでに、偶像としての黒船来航がなかったとしても、天狼院は概念として十分に黒船来航を体現できる存在になったと思っている。
天狼院は、今まさに新たなるステージに進もうとしている。
もちろん、天狼院は、これまで通り、業界に対してディープインパクトを与え続ける存在でいるだろう。
けれども、誇大妄想的な革命家のフェーズを終えて、今度は本格的に、そして、徹底的にお客様に向き合うフェーズに入る。
現在お客様が求めていることはもちろんのこと、未だお客様が気づかない欲求までも、先んじて提供できる店にしたいと思っている。
それを実現するために、僕は天狼院書店「東京天狼院」を改装することに決めた。
そして、この改装の中で、役割を終えた「黒船来航」を解体することにした。
今、僕の手元にある改装の図面の中に、黒船はない。
まもなく、黒船が天狼院書店から姿を消すことになる。
そうして、黒船を見ると、感慨深い。
天狼院は、ここまでくるまで、本気で8回は潰れそうになった。
それを何とか乗り越えて、今こうして拡張期に向かおうとしている。
あらゆる苦悩の日々を、戦いの日々を、黒船は見てきた。
オープン直後、お客様がまるで来なくて、どうしていいかわからず、朝まで天狼院で様々考えぬいていたときも、
仲間が離れていったときも、
トラブルに見舞われたときも、
黒船は常に、天狼院の中心に鎮座していた。そして、お客様を迎え続けてきた。
新しい何かを創造するためには、必ず、破壊が伴う。
破壊なき創造は、小さくなった甲羅のように、爆発的な成長を阻害することになる。
ある意味、まっすぐに夢を追うということは、残酷なことなのかもしれない。
改装は、8月9日の夕方からおよそ10日間に渡って行われる。
つまり、黒船が皆さんの前に姿を見せられるのは、8月9日の夕方までということになる。
また、この姿の天狼院が見られるのも、その日までということになる。
天狼院は、大きく様変わりする。
これは、黒船は天狼院オープン当初の僕の想いの具現であって、また僕の主張でもあった。
当然、お客様にとってはどうでもいいことかもしれない。
けれども、もし、黒船に対して、そして、今の姿の東京天狼院に対して、何らかの想いを持ってくれているのだとしたら、この週末、ぜひ、天狼院にお越しいただきたい。
この空間で過ごした各々の想いを、振り返っていただきたい。
なにか、感じるところがあるかもしれない。
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