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天狼院通信

酷務《天狼院通信》


今から僕がいうことは、きっと、合理的な説明がつく話ではない。

いや、もしかして、合理性の先にある直感的な領域に、膨大な言葉で表されるある種の合理性があるのやもしれないが、今僕が確かに掴んでいる感覚は、僕が持ち合わせている言葉を尽くしても、おそらくその10%も本意は伝わらないだろうと思う。

春先、天狼院はファイナンス的嵐の只中にあって、それはまるで映画『フォレスト・ガンプ』でフォレストと両足を失ったダン小隊長が、嵐の中でシュリンプ船を操っていたように、いつ沈むとも知れない中で、なんとか浮いている状態だった。元々、徒手空拳からの店の立ち上げであったから、それはそれで当たり前のことだったし、そこをくぐり抜けなければならない覚悟も、オープン当初から、もちろん、胸に抱き続けてきた。

嵐が未だ収まらない中で、満身創痍に近い中で、さらに僕は困難に飛び込むことに決めた。

雑誌「READING LIFE」の創刊と劇団天狼院の創設、そして福岡天狼院のオープンである。

「天狼院ビッグバン」という一連の流れを決断し、やることを宣言した際に、毎日のようにこんな声をかけられた。

 

「本当にできるんですか?」

「無理じゃないですか?」

「人はどうするんですか?」

「お金はどうするんですか?」

 

それは親身になって心配してくれるからこそかけてくれる言葉だった。

おそらく僕は、それに対して、こう余裕の顔で答えていただろうと思う。

 

「大丈夫、心配ない。必ず、うまくいく。うまくいかせてみせる」

 

その言葉に嘘はなかった。実際にそう思っていた。

けれども、同時に、内心はこう思っていた。

 

「本当にできるんだろうか?」

「無理なんじゃないだろうか?」

「人はどうしよう」

「お金はどうしよう」

 

僕は休みを取ることはないから、起きているほとんどの時間を天狼院について考えている。

嵐の中を操船しながら、新しく「天狼院ビッグバン」に突入した僕は、まるで『天空の城ラピュタ』で小さな凧で巨大な低気圧の塊「龍の巣」に飛び込んだパズーのようなものだ。

雲の中は暗闇で、稲妻が龍のように走り、嵐で前もほとんど見えないような状況。

日々、押し寄せてくる仕事は際限がなく、いつしか「激務」は、それよりも遥かに過酷な、いわば「酷務」というべき状況に陥っていた。

朝、目覚めると7時から仕事を開始し、夜は閉店後、ときに2時や3時まで仕事をする。

天狼院から歩いて3分のところに借りた家に着くと、ほとんどの日は、布団にたどり着くことなく床で毛布もかけずに倒れるようにして寝て、朝、起きてはまた早くから仕事をするという日々を過ごし、それでも仕事は終わらなかった。

 

あるいは、今からいうことは、夢だったのかも知れない。
いつものように布団にたどり着く前に突っ伏した床で、夢か現か判然としないままに、まどろみながら見た幻覚だったのかも知れない。

 

何か、すっと通る感覚を掴んだのだ。

嵐の中、混沌とする現実の中で、針の穴を通すように、わずかに開けた航路が一瞬、確かに見えたような気がするのだ。

 

雑誌「READING LIFE」、劇団天狼院、そして福岡天狼院というひとつのラインが、かたちを成していく様を、一瞬ではあったがたしかに映像として見たのだ。

たとえば、それは死にゆく人が見るという「走馬灯」という表現に近いのかも知れない。

けれども、僕の場合は、過去ではなく、未来を走馬灯のように見た。

それは「見た」というより、「いける」という確信だったのかも知れない。

 

酷務の中で、承認欲求やら嫉妬やら、そのほかの人生を邪魔するあらゆる感覚のスイッチがオフとなって、直感が研ぎ澄まされて、大脳新皮質が合理的に計算して答えを出すよりも早く、つまり、野生動物的な本能で、「いける」と感知したのかもしれない。

 

朝、起きると、心持ちが穏やかになっていた。

心配事の尽くが、消えてなくなっていた。

 

それはまるで、高熱が引いた朝のような感覚だった。

 

静かな心持ちで、リアルに朝日の中で、倒れこむようにして寝ていた床から起き上がった僕は、揺るぎなくこう思った。

 

「必ず、うまくいく」

 

それは、自分を鼓舞する言葉でもなく、言い聞かせるための言葉でもなかった。

透徹とした感覚で、ただそうとばかり思った。

 

思えば、『フォレスト・ガンプ』では、嵐の中を辛うじて生き延びたフォレストとダン小隊長は、それまでさっぱり獲れなかったのにこれ以降、大漁が続くことになる。そして、会社が大きくなり、二人は大金持ちになる。

思えば、『天空の城ラピュタ』では、稲妻が一直線にならび「龍の巣」という嵐からの抜け道が示され、そこを抜けたパズーたちは、ついに天空の城ラピュタにたどり着くことになる。

 

混沌の中で見る光は、あるいは幻覚かもしれないが、他者には説明し尽くせないほどの揺るぎない確信をもたらす。

今、僕がいったことは、きっと、合理的な説明がつく話ではない。

いや、もしかして、合理性の先にある直感的な領域に、膨大な言葉で表されるある種の合理性があるのやもしれないが、今僕が確かに掴んでいる感覚は、僕が持ち合わせている言葉を尽くしてみても、おそらくその10%も本意は伝わらなかっただろうと思う。

 

けれども、それでいい。

逆さ流れの走馬灯で見た未来を、僕はそのまま創り上げて行けばいい。

 

そして、その確信を後押ししてくれるのは、間違いなく、この未来に共鳴してくれる方々の存在だ。

雑誌編集部の皆様とデザイナー陣、カメラマン、顧問の先生方、劇団天狼院に参加してくれている方々と女優陣、福岡天狼院に期待し、力を貸してくれる方々、すべてを支えてくれるチーム天狼院のスタッフのみんな。

何より、天狼院に通い、天狼院を支えてくれるお客様。

 

必ず、面白いことにして見せますので、これからもどうぞ僕の酔狂な夢に付き合ってくださいませ。

どうぞよろしくお願いします。

 

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2014-09-24 | Posted in 天狼院通信, 記事

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