本気で「悔しがる」ことができてはじめて本当の「面白さ」がわかる《天狼院通信》
2014年11月14日。
劇団天狼院の記念すべき旗揚げ公演の日だった。
この公演を無事に終えたとき、ステージ上の出演者たちの表情は高揚感と達成感で異様なほどに光り輝いていた。
ステージ上は、その日だけ、天狼院書店となり、お客様と出演者が入り乱れて笑顔で会話していた。
客観的にみれば、旗揚げ公演としては悪くなかったかもしれない。
チケット販売数は70枚で、そのほか、招待のお客様を入れて100名ほどがその日、豊島公会堂で旗揚げ公演を見た。
けれども、豊島公会堂のキャパは802名である。
つまり、ガラガラだったのだ。
業界の常識やキャパの大きさなんてどうだってよかった。
ただ、満席に出来なかった悔しさだけがあった。
雑誌『READING LIFE』の創刊、大きなシンポジウムの主催、そして劇団天狼院の旗揚げ公演と、11月の前半はまさに怒涛であった。
ありえないくらいの労働量で、全ての責任者である僕にはありえないくらいの負荷がかかっていた。
あの状況の中で、無事にすべてを終えられただけでも奇跡だと言う人もいたが、それも耳には届けども心まで浸透して来なかった。
完全な負け戦だった。
もう悔しくて悔しくて仕方なく、その日、風呂でひとり、号泣した。
そのことを、この前の未来ラボで登壇者の吉祥寺「小ざさ」代表稲垣篤子さんに打ち明けた。
すくと、稲垣さんは笑顔でこう言った。
「いいんですよ。悔しがって。私も頭から布団をかぶって、よく泣きましたよ」
「稲垣さんもそうですか?」
「でもね、人に見せちゃいけません。こうしてね、隠れて悔しがればいいんです」
僕はよく、人生を楽しんでますね、と言われる。確かに、毎日が面白い。
そして、稲垣さんも面白さを見つける達人だ。
僕も稲垣さんも、共通点として「悔しがる」という性質があることに、ふと面白さを覚えた。
その日の打ち上げで、稲垣さんの著書『1坪の奇跡』の担当編集ダイヤモンド社の寺田さんは言った。
「いやー、この前、三浦さんには申し訳ないことしたと思ってね」
何のことか、心当たりはなかった。
「この前の会場販売、全部売り切ることができなくて」
申し訳ないどころではなかった。僕はかれこれ8年か9年位本屋をしているが、数多経験した会場販売で、もっとも売れたのがそのときであった。伝説になるくらいに売れたのだった。
それを伝えても、寺田さんは首を横に振った。
「いや、すべて完売させるって三浦さんに約束したんで、僕は悔しくって」
それを僕は頼もしく聞いていた。
思い返してみれば、「川代ノート」で大ブレイクした、川代紗生もそうだった。
彼女は当初、とても不器用だった。危ぶむほど、不器用だった。
ただし、人一倍、悔しがる性質があった。
結果的に、彼女は天狼院のエースとなり、様々な伝説を残した。
先日、天狼院に入ってきた新人の國井まみこと一緒に下でそばを食べていた時のこと、まみこは僕にこう言った。
「私、悔しくって」
意外に思って、そばをすするのを中断してまみこを見た。
「この前のメデイアグランプリの第一戦、菜摘さんや海鈴さんが活躍してて、私は出遅れていて」
いい傾向だと思った。見た目、穏やかそうなのだが、密かにこうして悔しがっている。
そのまみこが、メディアグランプリの第二戦で優勝し、3位にも食い込んだ。
そして、ルーキーで最も早く、念願のフリー投稿権を獲得した。
悔しがることができるのは、それも一種の才能かもしれない。
どれだけポテンシャルが高かったとしても、悔しがることが出来なければ、潜在能力は潜在したままで終えるのかもしれない。
「悔しがる」ことによって、もしかして、その潜在能力が引き出されるのかもしれない。
そして、「悔しがる」強さが強いほど、達成したときの「面白さ」がより燦然とするのかもしれない。
つまり、誰よりも人生を面白がっているように見える人は、必ず、その裏で密かに誰よりも悔しがっているのだろうと思う。
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