チーム天狼院

スピッツ好き書店員が、「小説」にピッタリな「テーマ曲」を選んでみた。《海鈴のアイデアクリップ》


天狼院スタッフ海鈴です。
スピッツが好きです。受験勉強のときは、飽きれるくらい聴いてました。スピッツを聴いていれば、何時間でもいけました。
寝る前の薬としても、スピッツの音楽は効きます。電気を消してから、気分によって「今日はこれを聴きたい!」という2、3曲をじっくりしっとり、心に流し込んでから眠るのが習慣でした。

暗闇の中で、イヤホンから流れるひとつひとつの声、音をひろっていると、突然ぶわーーっと、情景が流れてくる曲があります。ある小説の内容を歌っているようにしか思えなくなります。なかなかそういう曲とは出会えないのですが。不思議とスピッツだけはピッタリだと思える曲があるんですよね。草野さんの言葉のマジックですね。
今回は、私が感じた「スピッツの曲の世界観とピッタリな小説」を紹介します。私が映画監督だったら、映像化したときにはこの曲を使いたい。

1.スピッツ「ムーンライト」(アルバム『色色衣』収録)
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  西加奈子「きいろいゾウ」(小学館)

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ちょっと渋めでクールな曲。歌詞の世界観が、「きいろいゾウ」を歌っているようにしか思えないんです! ムコさんとツマが、縁側に座ってふたりで月を見上げているイメージ。出会いの理由を問うたまま終わるのも、いいです。2番のサビなんか、まさに、ツマ、こういうことやりそー! って感じ。
2番の歌詞が、秀逸。「のぞき穴」のとこです。最初は何の隠喩なのか分かりませんでした。けど、気づいた瞬間どかーん! と雷が落ちました。この世に、月をこんな風に描写できる人がいるんだ・・・とがく然としましたね。

2.スピッツ「甘い手」(アルバム『ハヤブサ』収録)
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  村上春樹「ノルウェイの森」(講談社)

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一曲を通じて、どことなく死相感のただよう曲だと思いました(スピッツの曲は元々「死」をイメージさせるものが多いですが)。聴いたときのイメージは、森の中にある一軒家。世俗から離れた静かな家の中で、暖炉の明かりだけが煌々とゆらめいている・・・そんな感じでした。
歌詞の量はけっして多くない。なのに、言葉の組み合わせがほんとうに美しい。情景がありありと想像できる。
この曲に出てくる人は、孤独を抱えながら、「君」を少しでも分かろうとしてるんじゃないでしょうか。「君」を見るのも、あくまで「遠くから」なんですよね。このあたりが、「ノルウェイの森」と重なります。
歌詞だけじゃなく、メロディも美しい。本を読みながらずっと流していたくなるほど。哀しさのなかに、洞窟でポッと灯るロウソクの明かりみたいな暖かさもあります。

余談ですが、村上春樹作品とスピッツの曲は多くの共通点があるような気がします。
比喩が直接的でないところ、単語の組み合わせの感じ、当たり前のように唐突に出てくるちょっとエロティックな表現、死の匂い・・・などなど。
私だけでしょうか? どっちか好きな人はもう一方も好きな確率が高いような気もします。

3.スピッツ「ハチミツ」(アルバム『ハチミツ』収録)
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  よしもとばなな「High and dry(はつ恋)」(文藝春秋)

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私がこの組み合わせを選んだのは、ずばり本の中のあのフレーズです。キュウくんが運転する車の助手席で眠りにつく、そのときの表現がまさに、「ハチミツ」。
何度も聴くたび思うのですが、「ビスケットのしけってる日々」っていう表現が大好きです。あと、歌詞に「仔犬」が出てくるのもキュウくんを想像させて、よいですね。小説内で、キュウくんが仔犬のように描写される場面があるのですが、その部分はこの本の中でも一・二を争うきゅんきゅんポイントです。
甘酸っぱい気持ちを取り戻したいあなたは、ぜひ一読を。

 

単品で読むだけでも、小説はじゅうぶん楽しめます。場合によっては必要ないかもしれない。けれど、一見まったく共通性のなさそうな「曲」との化学反応を見つけたときは、正規の発明をしたかのような感動が味わえます。バックグランドミュージックで流すと、さらに小説の世界にどっぷりと潜っていけそうです。

今回は、私の完全なる独断と偏見で、テーマ曲と小説をピックアップしましたが、「いや、この作品にはこの曲の方が合う!」「こんな組み合わせもあるよ!」などなど、新しい意見もありましたら、ぜひ、お待ちしています。
そしてスピッツ好きで本も好きな方。天狼院書店でお待ちしております。

 

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