チーム天狼院

【「立教女子」、入りました!】それでも私が、彼女たちを天狼院に呼んでしまったワケ《まみこ手帳》


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我ながら、思います。

あぁ、なんて馬鹿なことを。こんなことさえ、しなければ……。

 

「あとはもう、懸念があるとすれば……人手、なんだよね」

私がこのヘンテコな本屋、天狼院書店にスタッフとして合流してから、約半年が経ちました。
それからというもの、私はここで、目もくらむほどの急スピードで移り変わる進化の過程を目の当たりにしてきました。

8月の大改装を経て大きく生まれ変わった「東京天狼院」。
そして9月に続けてオープンした「天狼院STYLE表参道」と「福岡天狼院」。
つい先日、予約受付を開始して約50時間で当初予定していた販売数の1000冊があっというまに完売してしまった「糸井重里秘本」。
11月に豊島公会堂を借り切って打ち出される大イベント「天狼院大文化祭」。
そして、相変わらずパワフルに稼働を続けるあらゆる部活動。

天狼院書店はこれからさらに、世間に対してそのポテンシャルを余すところなく披露していきます。そしてそのための舞台は、すでに揃っているのです。

ただ、現実問題。
このままではどう考えても人手が足りない。

拡張期に入った天狼院書店には、すぐにでも新たな才能が必要となりました。

 

「誰か、まみこの友達で、天狼院の戦力になりそうな人っていないの?」

私が動いたきっかけは、店主である三浦さんの一声からでした。

「戦力……。どうだろう……ちょっと、探してみます」

私は大学の知り合いと広くつながっているSNSを使って、それとなく呼びかけてみることにしました。

「うちの本屋のインターンに興味ある人、いないかなー?」

そんな具合に。

知り合いのなかで、きっと興味を持つ子がいそうだと思ったのです。

しかし、私はシビアに構えました。

天狼院の仕事は決して甘くはありません。生半可な覚悟では、すぐに振り落されてしまうでしょう。

その上、あちこちを駆け回り、多忙をきわめる店主の三浦さんが、面談のために時間を割いてくださるのです。
たとえ食いついてくれたとしても、三浦さんの時間を無駄にするような子であれば、私に連絡をくれた段階で丁重にお断りするつもりでした。

ところが、そんな心配は無用でした。実際に反応をくれた二人はどちらも、前々から同じ学部で深く関わりがあり、十分に信頼のおける子たちでした。

ぜひ、一緒に働きたい!

私はすぐに三浦さんにつなぎました。

 

それから、もう一人。
私が以前、天狼院のホームページに投稿した文章に目を留めてくれて以来、すっかり意気投合した女の子がいました。

彼女もまた、同じ大学の、同じ学部に所属している後輩でした。
一緒に飲みに行ったり話したりしているうちに、私は彼女のことを「気配りができて、それでいて、どこか肝が据わっている頼もしい子」と心の内で評価するようになりました。

引き入れるなら、「今」しかない。

私は彼女に連絡をとって、状況を説明しました。
話はトントン拍子に進み、すぐに三浦さんとの面談の日程を押さえました。

こうして天狼院書店には、私の紹介を通じて、新たに三人の女の子が仲間入りしたのです。

 

めでたしめでたし。

 

……では、ありませんでした。じつは。

きっとこんなこと、言わなければ誰にもばれることなんてないでしょう。

天狼院のために、有望な人材を三人も連れてきた。

彼女たちの能力が本物であれば、これはある意味、私の手柄とも言えるかもしれません。
しかし、私はそれほど穏やかな人間ではありません。爽やかな人間でもありません。

私が彼女たちを天狼院に呼んだ本当の理由。呼んでしまった本当の理由。

私はただ単純に、気の知れた仲間と楽しく仕事がしたかっただけではありませんでした。
だってこの紹介には、私にとっての、ある重大なリスクがあるのですから。

 

天狼院のスタッフは皆、才能豊かで、クリエイティブなメンバーばかりです。

天狼院で働き始めてから1か月ほど、「同年代で、こんなにすごいことをしている人たちがいるのか!」と心地よい刺激を受けると同時に、私はぐるぐると悩みました。

じゃあ、私は……?
私はここにいてもいいのだろうか?

皆ほど読書家でもないし、特技もないし、これといった個性もない。
平凡で、地味で、面白味がない。
私なんて、いてもいなくても変わらない、薄っぺらい人間なのではないか。

それでも、半年ここで働いていくうちに、だんだんと自分なりの立ち位置が見えてきました。

いわゆる「早稲女(ワセジョ)」の多かった天狼院スタッフの中で、「立教女子」という新たなブランドをもっていること。女子大生というキャピキャピしたイメージからはギャップのある、ビジネス書好きの「現役経営学部生」であること。
皆のような華やかさはないけれど、自分の仕事を確実に、地道にこなす常識人。
徹底した「ふつうの人」。
クリエイティブにはなれなくても、他のメンバーのもつ強烈な才能のスキマを埋めるような、つなぎ合わせるような、そんな役割を担えるのかもしれない。

そうだ、これでいい。

私は天狼院の皆とはタイプが違うから。

そんなポジションに収まってしまえば、結構楽でした。
ある意味で、他のメンバーと競う必要がないからです。

だから、これでいい。

そんなふうに、思っていました。つい最近までは。

しかし、目まぐるしく進化していく天狼院書店と向き合いながら、私はやがて気づいてしまいました。

頭の片隅にあった、違和感。

ねぇ、本当にこれでいいの?

きっとこんなこと、言わなければ誰にもばれることなんてないでしょう。
しかしこの際、言ってしまいます。

私は本来、負けず嫌いで、嫉妬深くて、
もっと上へ上へと、のし上がりたい……そんな激しい執着心をもった人間なのです。

気楽な居場所を見つけて、ぬくぬくと収まってしまった自分。

それもひとつの自分であることに変わりはないのだけれど。
やっぱりなんだか、違うんじゃないか。

もっとこう、憧れたり、焦ったり、妬んだり、人間臭い感情をぐるぐると巡らせながら、それでも食らいつこうと必死にあがき続ける自分。
とても綺麗とは言えない、醜い自分。

醜いけれど、どうもしっくりくる。
そんな自分を、もう一度引き戻してみたい。

じゃあ、どうすれば?

今回の、紹介という話が挙がったのは、まさにそんなことを考えていたタイミングだったのです。

 

我ながら、思います。

あぁ、なんて馬鹿なことを。

私はとても優秀な三人の女の子を天狼院に連れてきてしまいました。

優秀なだけでなく、きっと「天狼院らしい」人材になるであろう三人です。

彼女たちさえいなければ、私の安寧の立ち位置は、きっと守られるというのに。

ある種のブランドのような「立教女子」であることも、マネジメントやマーケティングをかじっている「経営学部生」であることも、もはや私だけの武器ではなくなりました。

逆もまた然り。

それは大学の中でも言えることでした。
「天狼院っていう面白いところで働いているらしい」という肩書きも、すでに私だけのステータスではなくなりました。

うかうかしていると、地道に築いた私のポジションなんてものは、あっというまにかっさらわれてしまうでしょう。

あぁ、こわいこわい。

いつ奪われてしまうのかと、私はひやひやしています。

それでも同時に、あの人間臭い、熱い気持ちがわいてくるのです。

 

どんなに居心地がよくたって、ひとつのところにとどまっているのは、きっと性に合わない。

私はずっと邁進していたい。何かに魂を燃やしていたい。

だから、三人を引き入れました。

そう。彼女たちは、私にとっての着火剤なのです。

 

だけどじつは、それだけではありませんでした。

彼女たちが仲間入りしたことで、思わぬ側面でもうひとつ。
この天狼院書店の中で新たな火が、ついてしまった……かも、しれません。
にこにこと表面上では笑顔を浮かべながら、水面下では、バチバチと燃えさかっている……かも、しれません。

察しのいい方は、もうおわかりでしょうか。

 

そうです!

 

天狼院スタッフの大半を占めていた、あの勢力……。

 

このたび、「早稲女(ワセジョ)」に対抗して……、

 

「立教女子」、入りました!

 

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