言い訳の達人《天狼院通信》
たとえば、誤って湖に落ちたとします。
その場合、人はどうするでしょうか?
溺れないように、必死で手足をバタつかせて、沈まないようにするでしょう。
それなのに、手足をバタつかせることもなく、
「湖に落ちてしまいました。どうすればいいでしょうか?」
と、聞いてくる。
そんなケースが多いように思えます。
今、天狼院では日に日に規模が拡大し、スタッフの数も増え、僕の目がなかなか行き届かなくなる部分も多くなってきました。
日々、
「どうすればいいでしょうか?」
のSOSが入ります。
しかし、そのほとんどは、手足をバタつかせることもなく、ただ、助けを求めてくる。
つまり、考えていない。
考えることを、放棄している。
しかも、考えていない自覚がない。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
とは、山本五十六の言葉とされていますが、今は、昭和初期ではない。
そんな悠長なことを言っていられる時代ではない。
中でも、天狼院の規模と速度を考えていると、そんなことをしていたら、全体で沈んでしまう。
沈みたくなければ、自分でまずは手足をバタつかせる必要がある。
そして、どうすれば岸にたどり着けるのか、自分で考える必要がある。
「どうすればいいでしょうか?」
は、よくよく、考えた末に、ほとんどの場合、極めてポジティブに発する必要がある。
手足をバタつかせず、考えもせずに出た末の「どうすればいいでしょうか?」の先には、決まって、言い訳が待っている。自己の正当化が待っている。そして、それが癖になると、「言い訳の達人」ができてしまう。
「言い訳の達人」は、その船の進行速度を著しく低下させる。
「前年比を達成することができなかったのは、近隣に競合ができたからです」
もっともらしく聞こえるが、その近隣は4キロ先だったりする。
「言い訳」は、やっかいなことに、他人ばかりではなく、無意識的に自分自身も騙すことになる。
そして、それが癖になる。
たとえば、大企業と言われる場所でなら、実は、この「言い訳の達人」は出世したりもする。
つまりは、これが擬似的に「政治力」に似たような作用をするからだ。
逆に、自分で考え、結果を出す、本当にできる人たちが、「言い訳の達人」たちの結託の前に、出世ラインの外に追いやられたりもする。
映画『天空の城ラピュタ』でいうところの、空賊ドーラ一家のような天狼院では、「言い訳の達人」はいらない。そんなのゴリアテのムスカの元でやってくれ。ただし、ムスカによって「人がゴミのようだ(by『天空の城ラピュタ』)」と、ラピュタの半球から落とされても知らない。
おそらく、きっと、今は自分で手足をバタつかせて、自分の頭で考えなければ、沈んでしまう時代です。
これまでの時代、たとえば高度経済成長期の時代ならば、湖の底は浅かったので、あるいは、バタつかせなくとも「どうすればいいでしょうか?」で良かったのかもしれません。
ところが、これからは違う。
湖の底は、もう足がつかないくらいに深くなっている。
「どうすればいいでしょうか?」
と言われ、手足のバタつかせ方を教えに向かっている最中に、いや、手足をバタつかせればいいじゃない、と伝える前に、おそらく、溺れてしまう。
では、ポジティブな「どうすればいいでしょうか?」にはどんなかたちがあるでしょうか?
「今から戦力を集中したいので、やらないことを決めたい。そこで、仕事の仕分けをしたい」
そう宣言して、いくつかの業務をその対象として挙げました。
普通なら、はい、わかりました、とクローズに向かうはず。
けれども、ある子は、僕にこんなことを言う。
「たしかに、これまでほとんどアクティブになっていなかった有料メルマガですが、実はキャンペーンで獲得を頑張っていた時よりも、倍の数が契約されています。そして、月にこれくらい利益が出ています」
と、有料メルマガが生み出す収益を僕に見せました。
思ったよりも、多い。
その子は続けます。
「それで、内容も間違いないので、試しに、昨日もう一度、天狼院のメディアで告知してみたんです。そうしたら、また2件増えていました。これを続けていくと、面白いことになります」
たしかに。
たとえば、週に2件ずつ増えていったとしても、月に8件くらい増えることになります。そうすると、1年に換算すれば、100件の増加数になります。月々のメルマガの収益も、そうなると、無視できない規模になってきます。
ただし、と僕が懸念を口にする前に、その子は続けます。
「それに、来月から編集業務を次世代エースの子に移管しますから」
そう、それ。
エース級の社員の戦略が収益率が低いところに割かれると、全体的な収益をみると、これはやらないほうがいいということになります。
けれども、そうでなければ、やらない理由はない。
エース級の社員の労働生産性を温存できて、収益が増えていく。
という図式が成り立つことになりますので。
その子は、そこまで説明すると、最後に僕に決断を求めます。
「どうしますか?」
経営者として、断る理由がありません。
「続けていこう」
たぶん、考えるとは、こういうことです。
そして、仕事とは、こういうことを言うんだと思います。
少なくとも、天狼院においては。
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