ねえ、その言葉って、本当に自分の言葉ですか?《海鈴のアイデア帳》
「ねえ、その言葉、本当に自分の言葉?」
どこからか声が聞こえてきて、はっとする。
そんな瞬間があります。
それがよく起こるのは、誰かと飲みに行って、たわいもない話の中でちょっと真面目な話になるタイミング。
たまに私は呆然としてしまうことがあるのです。
「今、あなたが話していることの言葉って、ほんとうにあなたの言葉?」
もう一人の自分が、追及してくるのです。
天狼院書店ができて、現在3年目。
たくさんの本に囲まれ、たくさんの著者の方もいらっしゃいます。
ここは、すごく有益な情報に囲まれて過ごすことができる場所です。
偉大なる故人の考えも、時を経てもなお、本は我々に伝えてくれます。
残された数多くの名言・名文に、心震わされます。
これだけ著名な方の残した遺産や、生き様の結晶の宝庫にいると、私は生きている間にこれらの知識にどれだけ触れることができるのだろう? と絶望しそうになります。
同時に、世の中の流れは当然抑えておく必要がある。
話題のニュースや、SNSなんかで流行っているトピックも、チェックするようにしています。
ですが、ときどき、「あれ?」と思うのです。
これだけ情報の宝庫にいると、目に映る景色は充実しているので、実は気づいていないまま見過ごしているかもしれません。
しかし確実に、私は蝕まれていました。
今、自分が話している言葉って、ほんとうに自分の言葉なんだろうか? ということ。
それは、誰かと飲みに行って、たわいもない話の中、ちょっと真面目な話になるタイミングで起こりました。
「ねえ、じゃあ、海鈴は、どんな考えを大事にしているの?」
問いかけられた際に、私は呆然としてしまいました。
そこで答えようとした言葉は、頭には浮かびました。
けれど、浮かんでしまったことが、まずいのです。
なぜなら、そのとき私が返そうと思った言葉は、よくよく考えてみれば、どこかからのコピペにしか過ぎないものだったのです。
偉業を成し遂げた名人の考えや、言葉。
鬼才の人物が、試行錯誤の上、築き上げた理論。
それはすべて間違っていないはずですし、ほぼほぼ真理を突いています。
何より、分かりやすい。
そりゃあ、そうです。そのために、偉人は年月をかけてその理論にたどり着いたのですから。
ですが、「分かりやすい」に落とし穴があるのかもしれません。
分かりやすく、真理を突いているがゆえに、それが、あたかも「自分が考えたことのように」錯覚してしまう節があると思ったのです。
「自分はこう考えている」というのは、実はコピペによるただの窃盗で、もとは人様の考えを、あたかも自分の考えのように思い込んでいるだけかもしれない。
じゃあ、ほんとうの自分って、何を考えているんだろう?
自分が何を考えているのか?
今言っている言葉は、ただの誰かからの受け売りの言葉ではないだろうか?
誰かが言った言葉を借りて、あたかも自分が素晴らしい人間になったような気になっていないだろうか?
もしそうだとしたら、本当の自分は、思考停止している可能性はないか?
そう、気づいてしまったのです。
昔から、「自分の意見をはっきり持っている人」というのに強く憧れがありました。
それは本当に小さい頃からでした。
いつも「優等生なおりこうさん」でいようとするタイプだったので、その場その場を、当たり障りのない言葉でやり過ごしてきました。
だから、本当は自分が何を考えているのか。何を発言したいと思っているのか。
思考の深層の、核の部分まで、すごくすごく、自分でも気づかないうちに、厚い殻をつくっていました。
嫌なものは嫌。
世間とか関係なく、自分はこう思ったんだよね。
そうはっきりと言えている人が、羨ましいと思っていました。
だから、大きくなっても、なかなか「自分はこう思っている」にたどり着くまで、遠回りをしてしまうようだったのだと思います。
それが変わったのは、あることを始めるようになってからでした。
それは、「書く」こと。
ーーーだけ、では変わりませんでした。
「頭の中を書き出してみたら、自分が本当に何を考えているかわかるから良いよ」
そんなことを聞きますが、それだけでは不十分でした。
当たり障りのない発言でその場をいつも「おりこうさん」でやり過ごしてきた人間にとって、自分の核に触れるにはそれだけでは足りませんでした。
ちゃんとそれを「人の目にさらされるところに置く」ことをしてはじめて、変わったのです。
人に見られる文章を書くということは、結論を出さなければならない。
そうなったときに、人からの受け売りのコピペでは、ぜったいにうまくいかないのです。
何かしらの自分なりの答えを出さなければ、書き始めることすらできない。
ですが、その環境こそが、「答えを持つ人」になるには、必要たるものだったのです。
人に見られる、つまり、生半可なものは出せない。
良い意味での緊張感が、常に自分の思考のアンテナを張り巡らせていました。
「自分って今、何を考えているんだろう」
「ある出来後があったとき、自分の心の動きはどういうものだっただろう」
そんなことを注意深く、感じ取るようになりました。
そうすると、不思議なことに、なぜだか自信がついてくるのです。
書こうと思ったら、頭の中は「結局、自分ってどう思ってるんだ?」と、深く深く潜っていきます。
ひとつの物事について、自分の結論を出すということは、思った以上にエネルギーと時間を要するのだと、気づくようになりました。
ですが、正しいか正しくないかは別にして、そのとき自分が感じているほんとうの言葉にぶつかったとき、「これだ!」というキラッとした感覚が、とても気持ちよいのです。
これ以上、ぴったりというものがないというくらい、言い得て妙だ、という言い回しに出合ったとき、受け売りの言葉でできた自分ではなく、ほんとうの自分というのが、見えてくるのです。
「じゃあ、海鈴は、どんな考えを大事にしているの?」
いま、そんな問いかけをされても、昔のように困ることは、だいぶなくなりました。
自分の「核」は、これなのだ。
「私」とは、こうなのだ。
「書いて、見られる」ことをすると、一点の曇りもなく自分の考えを伝えられる状態で、持っておけるからです。
考えは時間とともに変化してもいいし、
偉人の名言からインスパイアされたものでもいい。
けれど、ちゃんと「自分で考えたよ」というフィルターを通した結論を、その瞬間瞬間で持っていることが、きっと重要なのです。
SNSやネットのニュースで、いろんな話題が私の体を通り過ぎていくけれど。
容易くコピー&ペーストで、面白いネタも拾えるようになっているけれど。
この時代、ちゃんと自分の言葉で伝えられる人こそ、強いように思います。
どうせ話すなら、その人生身の言葉がいいなあと思いますし、小さい頃の憧れは、今でもやっぱり、憧れであるのです。
自分の言葉を持っている人って、強くて、かっこいいなあと。
常に答えを持っている、そんな人に近づけるように、これからも書いていこう。そう思います。
今週から、天狼院スタッフ、順番に記事を書くことになりました。
わたくし山本は、火曜日担当。基本的に、火曜日・最低でも週1でお届けしていく予定です。乞うご期待をば!
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