あなたが結婚したら、嫁入り道具としてこの本を贈るね《リーディング・ハイ》
記事:のんさ~ん!(リーディング・ライティングゼミ)
「人生思い通りにならんで当たり前」
私はこの言葉にどれほど救われてきたのでしょう。
一年前、私は大失恋をしました。初めてこんなに恋愛というフィールドで苦しい思いをしたと思います。だから、一年前が今までで一番、怒涛の恋愛をしたと自分では思います。もちろん、私なんかよりもっとつらい思いをした人もいるでしょうし、私の話を聞いたら、そのくらいでへこたれて、そんなの普通にあることだよ、という人もいるかもしれません。でも、私にとっては、大袈裟かもしれないんですが、その時は本当につらく、これまでにないほどどん底に落ちていました。
いつも、どんなにへこんでもご飯はたべるのに、そのご飯さえおいしく感じず、食べたくない。徹夜なんて全くと言っていいほどできないのに、色々なことを考えてしまい、朝まで眠れなかった。学校でも、授業に集中できず、失恋したことばかり考えてしまってとてもつらいので、寝ることでつらさを紛らわさなければならなかった。友人に優しい言葉をかけられただけで、ドバーッと涙が出てきてしまう。本当に、自分がこんな風になるなんて、思いもしませんでした(笑)自分が、こんなに弱いなんて思ってもみなかったんです。
居てもたってもいられなくなって、私は最後の手段として、お母さんに電話しました。最後の手段というのは、私が恋愛に関して家族に話すということがないからです。お付き合いしている人がいるというのは報告していましたが、最近どうなの? みたいな話や相談は、恥ずかしいし、なんか気まずいため、そういう話を避ける雰囲気が私の家族にはあったのです。だから私がこんな状況であることは、全くもって知らないはず。なのに、そういうときに限って、私のお母さんは不慣れなラインを送ってくるから、お母さんってすげーって思うんですが。
最初に送られてきた、「最近調子どう? ごはんたべてる?」という生存確認のためのメッセージの返事は、「調子いいよー!」で返す。全然元気じゃないし、ご飯も食べていないのに。
次の、「今日何しよると? 戸締りして、夜更かししたらだめよー」のお決まりメッセージは「うん!」と無難に返す。こんなやり取りをしていたら、いつもお母さんが、口癖のようになんかあったら絶対言わやんよ、と言っていたのを思い出し、もう駄目だ! 電話しようっていう気持ちになったのでした。
私はすべてを吐き出しました。本当につらいんだ、悲しいんだ、と。すると、私のいつもと違う悩み様に、お母さんは、笑いながら一言。
「それはぜいたくな悩みよ」
えええええ? いつも全くへこたれたところを見せない娘が、意を決して、泣く泣くお母さんに悩みを打ち明けているのに、それ?? でも、と言いかける私に、お母さんは気にせず、
「世界にはご飯も食べれん人がおるとよ。それに比べたら、のんは贅沢よ」
いや、確かにそうなんだけど……
でもつらいんだよ。初めてこんな気持ちになったから、どうしたらいいのかわからなくて、弱ってるんだよ。と訴えると、
「のん、最近、がばいばあちゃんの本ば読みよるね? もう一回読み直さんね。人生は思い通りにならんで当たり前よ。なんでなんでって考えたもわからんとやけん、とにかく働けってがばいばあちゃん言いよったやろうが。それか、たまには実家に帰ってこんね」
「そっか……うん、ありがと」
私はそう答えるしかありませんでした。電話を切って吐き出すだけ吐き出して、お母さんの声に安心したのか、少し元気を取り戻しつつありました。
考えてみれば、がばいばあちゃんの言った通りです。
人生思いどおりにいいかなくて当たり前。思い通りに行くことの方が少ないし、難しいのです。でも、思い通りにならないからこそ、思い通りになったときがとても嬉しいのであって、思い通りにばかりなってしまったら、人生つまらないよな、そう思いました。
さらに、今回の大失恋で、自分が知らないうちに、いかに相手に依存していたかが分かりました。このままじゃだめだ。私はもっと自立して一人でもしっかり立っていける女性になろう! 自分磨きを始めるための、いい機会だ! そう思うことができたのです。
それからというもの、落ちるところまで落ちたので、少しずつ、でも劇的に私は変わっていきました。今までぼやっと思っていた長期休みに海外に行くという目標を明確にし、英語を積極的に話す環境に自分の身を置いたり、大好きな本を素敵な書店で読みまくったり、様々なイベントに参加したり、おしゃれに気を遣って見たり。全部、自分を忙しくすることで、心にぽっかり空いた穴を埋めるためにしたのかもしれません。でも、がばいばあちゃんの本を通してお母さんが言ってくれた、人生思い通りにならんで当たり前という言葉を胸に、強く生きていこうと、前に前に踏み出して行けたのです。
私はお母さんの言った通り、久々に実家へと帰り、ゆっくり落ち着いた時間を家族と過ごしました。帰りはいつも、お母さんが駅まで50分という道のりを車で送ってくれのですが、その移動中お母さんはこう言いました。
「世の中にはいろんな人生についての素晴らしい本がたくさんあるけど、お母さんはがばいばあちゃんの本一冊持っときさえすれば、十分だと思う。あれは、がばいばあちゃんっていう、少なくともお母さんたちよりかは人生経験豊富な人が言いよった言葉やけん、説得力があるよ。それに、シンプルで本質をついとろうが。いろんな悩みとかが生まれても、これ一冊持っとけば、ヒントが見つかるし、自分の悩みがちっぽけにみえるよ。やけん、のんがお嫁に行ったら、この本ば嫁入り道具として贈るたい(笑)」
確かに、どんなに巧みな人生を成功に導くための技法を知るよりも、色んな人生経験が詰まった、たった一言の言葉の方が、人の心を打つのかもしれません。
私は実際に、がばいばあちゃんの本を通したお母さんの言葉に心を打たれ、前向きな気持ちになり、以前より格段と強くなれたと思います。
人生にはまだまだたくさんの試練が待ちうけています。夢を追いかけては挫折し、結婚し子どもを産むことで、様々な問題にぶち当たり、自分が思いもしないような困難にも襲われるかもしれません。でも、そんな時、私のお母さんが嫁入り道具として私に贈るであろう、がばいばあちゃんの本があれば、どんな困難もいろんな見方ができ、乗り越えられそうです。
そして私がお母さんになったとき、こう言うのでしょう。
「人生思い通りにならんで当たり前たい。がばいばあちゃんの本ば読まんね!」
と。
「読/書部」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、スタッフのOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
また、直近の「リーディング&ライティング講座」に参加いただくことでも、投稿権が得られます。
【リーディング・ハイとは?】
上から目線の「書評」的な文章ではなく、いかにお客様に有益で、いかにその本がすばらしいかという論点で記事を書き連ねようとする、天狼院が提唱する新しい読書メディアです。
【天狼院書店へのお問い合わせ】
TEL:03-6914-3618
天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021
福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL 092-518-7435 FAX 092-518-4941
【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
【天狼院のメルマガのご登録はこちらから】