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チーム天狼院

福岡天狼院スタッフ伊藤です 〜元警察官で元航空管制官の書店員〜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:伊藤千里(チーム天狼院)
 
 
 
「で、いつから来れるの?」
 

天狼院書店の採用面接、三浦社長の第一声はこれだった。
 
 
 

2019年11月、私は航空管制官として福岡空港に勤務していた。航空管制官というのは国土交通省の公務員で、空港に飛んでくる飛行機に無線を使って離着陸の指示を出す仕事である。
 
 

航空管制官という仕事をざっくりいうと、空に何百、何千も飛んでいる飛行機を絶対にぶつけないように、安全にかつ効率的に空港まで誘導する仕事である。
 
あたりまえだが、この「絶対にぶつけない」というところが最優先。毎日、何万人という乗員乗客の人命を預かっているので、「世界で最もストレスフルな仕事」とも呼ばれている。
 
 

でも、私はそんな「世界で最もストレスフル」な仕事を非常にエンジョイしていた。 

私が働いていたのは、福岡空港の管制塔。 
博多駅から地下鉄で10分というアクセスが最高な空港で、管制塔の窓から空と大好きな飛行機たちをみながら、パイロットと無線交信をする。
 
 

管制官の仕事は専門的なので、大工さんのように「徒弟制度」みたいなところがある。もちろん基本的な知識や技術はみんな同じように教科書やシミュレーターで学べるのだけれど、もっと管制がうまくなりたければ、細かいテクニックは先輩に教えてもらうか、見て技術を盗むかのどちらかになる。 

私の一番の師匠は、定年間際のベテラン管制官だった。 
彼は「見て盗め」のスタイルで、細かいところはほとんど教えてもらえなかったが、毎日のようにこれだけは言われていた。 

「福岡空港に飛んでくるパイロットから『この管制官に管制されてよかった』と思われる管制をしろ。パイロットがフライトをエンジョイできることを一番に考えろ」 

私は管制がそれほどうまいわけではなかったが、この教えだけは耳にタコができるくらい言われ続けたので、どんなときも「パイロットがエンジョイできるように」を考えて管制をしていた。
 
 

2019年10月、福岡空港に赴任して3年目を迎えた。 
管制の業務はひととおりできるようになり、緊急事態が発生しても慌てなくなり、そして新人の教育訓練も任されるようになった頃、私は悩んでいた。
 
 

「私は航空管制という仕事は大好きだ。空港も飛行機も好きだ。実際に会ったことはないけれど、声でパイロットがフライトをエンジョイする手助けをすることにやりがいを感じる」 

「……でも、退職まで管制官をやっていても、飛行機を安全で効率的に声で誘導する能力しか身につかない」
 
 

そうなのだ。 

私は当時32歳。 
どこかで聞いた話なのだが、私達30代の女性が将来、90歳まで生きている確率は90%以上と言われているそうだ。
 
 

私は、めちゃくちゃ健康オタクである。 
食事は摂取する栄養素の種類や質まで考えるほどで、運動も定期的にジムで筋トレをしていて、さらに自宅で毎日ストレッチもしているなど、とにかく「健康」に気をつけている。だから、ほぼほぼ100%!! 90歳以上まで生き残る自信がある。
 
 

将来的に、定年が65歳になったとして、そこから30年以上、どうやって生きていくのか。
飛行機を管制する能力しかないのに…… 

いや、飛行機を管制する能力「しかない」わけではない。 
訳あって、私は航空管制官になる以前は、警察官をしていた。 
だから、道案内とか、落とし物とか、逮捕とか、取り調べとか、家宅捜索とか…… 
ついでに、襲ってきた相手を制圧して捕縛することはできる。 

でも、警察業務と航空管制業務はできるけど…… 
それって、実社会での市場価値めっちゃ低いよな… 
日常生活でほぼほぼ役に立たない技能だよな…… 

もっと、「ひとりで生きていける力」がほしい…… 
わたしはそう焦っていた。  

そんなとき、天狼院書店を知った。
 
 

きっかけは「秘めフォト」だった。 
その「秘めフォト」を入り口に、私は書店のくせに「いや、何屋なんだよ!」とツッコミどころ満載の天狼院書店にハマっていった。そして、2019年8月開講の「ライティング・ゼミ」も受講した。
 
 

そして、店頭や通信の画面の向こう側で見かける天狼院スタッフや、ホームページの記事などを読んで、 
「こういうところで働けたら、いいなあ。きっと『ひとりで生きていける力』がバリバリ身につくのだろうな」
とぼんやりと思っていた。
 
 

ああ……思っているだけならこんなことにはならなかった。 
思っていることを口に出したのが間違いだった。 

2019年10月。 
そのころ、ちょうど、天狼院書店のスタッフ募集の記事を読んだ。その直後に秘めフォトで三浦社長にお会いする機会があった。
 
 

「わたし、警察官と航空管制官しかやったことないんですけれど、天狼院書店のスタッフやってみたいんですよね」とポロッと言ってしまったのだ。
 

その時は、ほんとうに「ポロリ」してしまった程度で真剣に考えていなかったのだが、なんと、後日、連絡があり、三浦社長と面接することになってしまったのだ。
 
 

「いや、私、警察と管制しかできないって言ったよな。誰かと間違えてるとかかな? もちろん天狼院書店で働きたいけれど、面接アピールする技能とか……体力と精神力くらい?」  

そして2019年11月。 
志望動機もそこそこで、どんなキャリアをアピールするかも定まらないまま迎えた面接の日。
 

お会いした三浦社長の第一声は、 

「で、いつから来れるの?」 
だった。
 
 

そこで心が定まった。もうこの道に行ってしまえと思った。 
はっきり言って「もう、どうにでもなれ!!」だった。
 
 

「わかりました。明日、勤務先に『辞職願』出してきます」
 
 
 

こうして私は「福岡天狼院」のスタッフとして2020年3月から働いている。 

警察官と航空管制官しかやったことがないので、毎日わからないことだらけだ。 
書店員としての業務、カフェの業務、イベントの企画、SNSでの告知……やることは山のようにあるけれど、わからないことばっかりだ。毎日手探りでなんとか乗り切っている。
 
 

ついでにいうと、私はいままでWindowsユーザーだったが、天狼院スタッフはみんなMacなので、ノリでMacを買ってしまった。だからいまだに私のMacさんともほとんどわかりあえていない。
 
 

わからないことだらけでも、やらないといけないことはゴマンとある。 
もちろん他のスタッフに聞くこともできるのだけれど、迅速な対応を求められる場面では、自分の手の内にあるものでなんとかしなければならない。 
それはまるで、家にダンナが急に上司を連れてきて、作り笑いで「ツマミ用意しますね」と冷蔵庫を開けたら中には玉ねぎとタマゴしかないという残念な状況を、自分のいまある能力でなんとか乗り切ろうとするのと似ている。 
(ちなみに私は独身なので、こういう状況に遭遇したことはないのだが)
 
 

福岡天狼院スタッフになってから、こういう状態に何回も遭遇してきた。 
でも追い込まれると、人間、あるものでなんとかしようとするものである。
 
 

天狼院スタッフになるまで、警察官と管制官のキャリアなんて役に立たないと思っていた。 
でも考えてみたら、今までずっと「緊急事態」に対処することが私の仕事だったのだ。 
事前に決まっていることなんて、何一つなかった。
 
 

警察官のときは、 
突然、110番通報が入る、臨場したら相手が包丁持って立っている、目の前で乱闘が始まる、「もう死にたいんです」と交番に泣きながら来る人がいる……
 
 

管制官のときだって、 
突然、離陸した飛行機のエンジンから火を吹いたと通報が入る、乗客の具合が悪いので最優先で着陸したいとリクエストされる、天気が悪くなって着陸ができない、レーダー画面が落ちる……
 
 

そうだ、私はいままでずっと極限状態になんとか対処することを仕事にしてきたのだ。 
私は、警察と管制しかできないわけじゃなかった。 

だから、きっと大丈夫。 
天狼院書店でやっていける!! 

管制官の師匠からの教えは、 
「福岡空港に飛んでくるパイロットから『この管制官に管制されてよかった』と思われる管制をしろ。パイロットがフライトをエンジョイできることを一番に考えろ」 
だった。  
管制官は退職してしまったが、「福岡天狼院」が私の新しい空港だ。 
ここに来てくれるお客様は、ご自分の人生のパイロットだと思っている。
 
 

だからこの場所、福岡天狼院を、
いつでも飛んで行きたい空港にしたい、
離陸するのをエンジョイできる空港にしたい、
安心して着陸できる空港にしたい  

「福岡天狼院」を、そんな場所にできる管制官……じゃなくて、書店員になろう。 
いまは、そう、決めている。
 
 
 

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***   この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いてます。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。   http://tenro-in.com/zemi/103447

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2020-03-25 | Posted in チーム天狼院, チーム天狼院, 記事

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