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チーム天狼院

元管制官的「わかばマーク(新入社員)」の教育方法 〜元警察官で元航空管制官の書店員vol.2〜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

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記事:伊藤千里(チーム天狼院)

「どうしたらいいいと思う?」

「わかばマーク」からの質問に、私はいつもこう問い返す。

天狼院書店に入社する前の3年間、私は福岡空港で航空管制官をしていた。航空管制官というのは、パイロットと無線でやりとりし、飛行機を空港まで安全かつ効率的に誘導する仕事である。

3年目にもなると、新人管制官の教育も任されるようになった。

管制官としては3年目、社会人としては10年目。航空管制官をする前のキャリアは警察官だったが、これまで「新人の教育」をしたことはなかった。

警察官のときは、訳あって立場上「年上の部下」(つまり、自分より経験も知識も上の人)しかいなかった。

だからいままで、自分より年下の部下を持ったことがない。

仕事で、誰かに何かをイチから教えた経験はない。

新人の訓練って……どうやればいいの?

いままでは、自分に与えられた仕事をこなしていればいいだけだった。

誰かに何かを教えるって言われても……

いや、「教える」のは簡単なのだ。

「これはこういうふうにやるって決まっている」

「こういうときは(私は)こうする」

「いつもこうしている」

「それはここに書いてある」

っていうのを淡々と伝えていけば、一応「教えている」ことにはなるのだろう。そして、新人はある程度、「管制官っぽい」仕事ができるようになるだろう。

「でも、それは違うよな……」

実際に、新人管制官の訓練を監督してみて、1日目。

「これはなにか違う」と、私は悩んでいた。

私自身、もちろん「一人で」管制をする資格を与えられている。航空管制をするには全世界共通のルールが決められているのだが、そのルールも把握している。そのルールに基づいて、安全かつ効率的に飛行機の管制をすることはできる。

だから管制官になって3年目、新人の訓練を監督をする資格を与えられたのだ。

でも、私は航空管制がそれほど上手ではない。

「航空管制が上手」とはどういう状態か想像しづらいかもしれないが、管制官は「職人」だと思ってもらえればわかりやすいと思う。

職人といえば、例えば、大工さん。

私は大工の経験はないので想像だが、現場で親方や先輩から一通りのことを見て学べば、ある程度「大工の仕事」ができるようになるのだろう。でも、「その他大勢の大工」から頭ひとつ抜けでた大工というのは、他の大工から見て明らかにわかるものではないだろうか。

私は「管制」はできる。

でもそれは、あくまで「その他大勢の管制官」の一人であって、他の管制官からみて「あいつは飛び抜けて管制が上手」と思われるような管制のスキルはないと思っていた。

だから、そんな私が自分のやり方をただ教えているだけでは、自分のコピーを作ることになるだけだ。

コピーというか、もともと質の良くない私のコピーを作ろうとしているのだから、もっと劣化したものを作り出してしまうかもしれない。

新人管制官には「その他大勢」から抜きん出る才能があるかもしれないのに、その可能性を奪いたくない……こわい。

どうしたらいいんだろう……

私は管制のことで迷ったら、「管制官の師匠」に相談することにしていた。私の師匠は、2年前に定年退職したおじさんなのであるが、現職のときは、もちろん「飛び抜けて管制が上手い管制官」だった。

師匠の教えは、こうだ。

「自分を超える後輩を作りたかったら、基本だけ教えて、あとはとにかく自分で考えさせろ」

それから私は訓練監督のやり方を変えた。

訓練のときに新人から、

「伊藤さん、この場合どうしたらいいですか?」

と聞かれる。

そうすると、私はいつも、基本的なルールだけ教え、必ずその後に、「どうしたらいいと思う?」と問い返した。

管制官でなくても、いまはいろんなことが調べればすぐわかる時代である。とりあえずわからなかったら「ネットで検索」すればいい。

だから今の人(と言っても私も30代なのであるが)は、「聞けばすぐ答えがもらえる」と思っている人が多いように思う。実際、私も師匠の「自分で考えさせろ」という教えを受けるまでは、「聞かれたらすぐ、答えを教えた方がいい」と思っていた。

質問に行ったのに、ひたすら「どうしたらいいと思う?」と問い返してくる先輩を、新人は、「やり方知っているのになんで教えてくれないんだ」と思ったことだろう。

きっと「伊藤さんに訓練を見てもらうと答えを教えてくれないからめんどくさい」と思われただろう。

私自身も、新人に「めんどくさい先輩」だと思われることはちょっと嫌だった。はっきり言うと、「答えをすぐ教えた方が早い」と何度も思った。

でも、それよりも、後輩を私の劣化コピーにしてしまうことを絶対に避けたかった。

だから管制官を退職する最後の日まで、私は「どうしたらいいと思う?」の教育姿勢を貫いた。

管制官を退職し、私は先月、天狼院書店に入社した。

いま、福岡天狼院のスタッフとして働いているが、入社わずか一ヶ月後の4月1日、新入社員「わかばマーク」が福岡天狼院に合流した。

この「わかばマーク」。たびたび「伊藤さん、これどうしたらいいですか」

と聞いてくる。

そんなとき、私は最低限の情報だけ与え、

「どうしたらいいと思う?」そう問い返す。

多分、「わかばマーク」は

「この先輩、何も教えてくれねーな、めんどくせー」

と思っていることだろう。

この教育方法が正しいのかどうかもわからない。

でも、私が「わかばマーク」に言いたいことは一つだけ。

「少なくとも、私を超える後輩になれ」


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***   この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いてます。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2020-04-12 | Posted in チーム天狼院, チーム天狼院, 記事

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