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チーム天狼院

いつも楽しみに作っていたあの「制作物」の正体。 陽キャとか陰キャとか、気にせんでいいとよ。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:斉藤萌里(チーム天狼院)

 

陽キャか陰キャかと言われれば陰キャ。
美人かブスかと言われたらブス。

小中学生の自分は、およそこういう人間だった。
髪の毛は天然パーマでうねっていて、特に前髪のうねりが大嫌いだったけれど、中学生までは「ストレートパーマ・縮毛厳禁」だったから、髪の毛をいじることができない。雨の日は憂鬱だったけれど、晴れの日でも収まらない髪の毛のうねうねは、ストレートでさらさらの髪の毛に生まれ変わりたいと毎日切望するほど嫌だった。

 

小学生や中学生って、なんでも人間を二分したがる。
例えば陽キャラ(元気で明るい性格をしている人)と陰キャラ(地味で目立たず大人しい性格をしている人)に分けるのがその一つだ。
たぶん私は後者に当てはまっていた。
小学校から、絵を描いたり教室で本を読んだりするのが好きだった。外で元気に走り回るのは性に合わなかったし、毎週一回昼休みに行われるクラス全員参加の遊び——レクリエーションでドッジボールをするのは吐くほど嫌いだった。
ボール投げるのが下手な上に、最後までボールに触らずに逃げ惑うため、結果的に最後まで自陣に生き残るタイプ。最後はダ外野からの期待も虚しく、結局あっけなくボールを当てられて死ぬ役だ。何回やっても同じパターン。ほんと、この世にドッボールを生み出した人が憎くて憎くて仕方がなかった。

 

まあ、それでも小学校まではまだいい。
皆まだ心が擦れてなくて素直だったから、「人種差別」というものを明確にしようなんて空気はなかったから。「あの子変わってるな」と思うことはあっても、「みんなで仲良くしましょう」という先生たちの言葉を素直に飲み込み、一応レクリエーションの時に誰か一人を省くなんてことはしなかった。少なくとも、私が通っていた小学校では。

 

しかし、中学に上がると話は違う。
皆、「一端の大人」の気分でいる。小学校を卒業したということが、ある種の自信に繋がっていたんだろう。「もう中学生だし」「髪の毛ぐらいいじってもいいでしょ」「校則はやぶるためにあるんだ」と、訳のわからない正義感であふれた空間。
そんな中、私は学級委員や生徒会役員を務める、いわゆる「真面目ちゃん」だったわけだ。しかも、部活は構内一厳しいと言われる吹奏楽部で、規則や校則は絶対に破れない立場だった。一度生活検査に引っかかろうものなら、その日の部活に来てはいけない決まりになっている。それがまだ、真っ当な理由でならよかった。例えば、明らかにスカートを短くしているとかベルトをしていないとか、誰が見ても「それは違反っしょ」って分かるぐらいの。
 
だが、私の通っていた中学校では、謎に校則が厳しく、「髪の毛一本、目に引っかかってる」という理由で罰にされたことがある。一本って何!? そんなの、日によって違うやん!! 今日は一本出てたかもしれないけれど、明日は出てないかもしれんやん! それはヒドイ。昨日一生懸命前髪切ったんだよ。前髪切るの、ほんと神経使うし、大体は切りすぎて超ブサイクになる。年頃の女の子なんだから、自分の顔はとても気になる。前髪だけでも印象はだいぶ違う。その印象ができる限り悪くならないように、最大限の注意を払って切ったの! なのに、たったの一本で校則違反って言われるのは心外すぎる。昨日の前髪との奮闘の時間、返してよ。
……なんて、いくら心の中で抗議しても無駄だった。いくら普段の生活態度が良くても、学級員や生徒会役員をやっていても、髪の毛一本の罪は重い。その日はあえなく部活に欠席した。我ながら屈辱的だった。周りを見回すと、明らかに自分より前髪が長い人がいる。検査中だけヘアピンで止めて、長いのがばれないようにしている人がいる。ずるい。そんなの。誠心誠意闘った自分が、馬鹿みたいじゃないか。

 

しかし心ではわかっていた。
世の中そうやって、迫りくる試練にズルをしてでも打ち勝とうとする人こそが、生き残る仕組みになっているんだって。「いつも前髪下ろしてるよね」と生活指導の先生から突っ込まれようと、「え〜いつもこうですよ」とへらへら答えながらも決してヘアピンを取ろうとしない人が、勝ち組になるんだって。

 

私は負け組だった。
いくら真面目に過ごしても、成績いいねと褒められても、中学校というこの社会においては、完全に敗北していた。
小学生の時から変わらずに昼休みは図書館で過ごしたし、文章を書いたり絵を描いたりすることが至上の楽しみだった。誰かとたくさんお喋りするよりも一人で何かを一生懸命つくっている時間の方が、断然喜びにつながった。

一人で文章を書いて、一人で絵を描いて、仲の良い友達にだけそれを見せて、感想をもらう。文章は、たいていの場合何かのお話だった。当時はまっていた漫画の二次創作だったり、オリジナルの作品だったり。物語の精度はまあ中学生クオリティだった。挿絵付きの小説というのが私にとっての制作物だったけれど、それの名前を私は知らない。ただ、自分の持てる技を存分に発揮して制作した物。友達は、私の制作物をもらうのを毎回楽しみにしてくれていた。だから余計に頑張ってつくった。
部活終わりに学校から帰るともう夜も遅い時間だったので、「制作」をするのは学校での休み時間だった。クラスメイトたちが昼休みに友達と駄弁ったり運動場に遊びに行ったりしている時間に制作をした。
相変わらず、身なりに気を遣いたいけれど、性格上できない。陸上部やサッカー部に所属している「イケてる」女子たちのスカート丈は皆揃って短かったし、髪の毛が長くても結んでいなかった。窮屈なベルトはしないし学校指定の鞄は改造されてぺしゃんこだ。
この年頃の社会はとても不公平で、理不尽。規則をやぶっている女子たちの方が、皆からすれば「正解」で、そういう子たちがいつだって「可愛い」と褒めそやされ、男の子からも人気が出た。学級委員の真面目ちゃんで天然パーマの私は、そういう「正解」の輪からはかけ離れた存在だった。

 

それでも私は、「制作」することをやめなかった。
これをやめたらなんだか自分が保てなくなる気がしたし、何より単純に楽しかったから。
大学生になると、フリーペーパーサークルに入り、冊子のデザインをした。初めて触るデザインソフトは難解で難しかったけれど、慣れてきてある程度デザインができるようになると、振り分けられた担当のページをデザインし終えた時の喜びはひとしおだった。

自分だけなんだろうか。
こんなふうに、こちゃこちゃと文章を書いたり、絵を描いたり、挙げ句の果てにそれを誰かに披露してみせたりするの。それを楽しくて生きがいだと思っている人間は。

 

そう、疑問に抱いていたことが解決したのは、つい最近のことだ。
「ZINE講座?」
天狼院書店のHPで発表されていたその講座を見たとき、「なんだろう」と思い、ページを開いてみた。その頃はまだ天狼院書店に転職していなくて、さらに以前ここでアルバイトをしていた時にはなかった講座だった。
HPを覗いてみて、びっくりした。
そこには、絵を描いたり文章を書いたり漫画を描いたりするのが好きな人が、自分らしい冊子をつくって販売してみよう! という趣旨の内容があった。
ZINEとはMAGAZINEからとった言葉で、自分の好きなことを好きなように表現してつくる冊子だと書いてあった。
これだ。
自分が今まで何か分からずに作っていたものの正体。まぎれもなく、このZINEに近いものなんじゃないだろうか。
周りからどんなに陰気なやつだと思われていてもやめられなかった創作の正体。
自分の好きなことで、自分を表現できる場。
小中学生の時は全然知らなかった。大人になったいま、ようやく知ることができた。

 

「好き」を貫いていい。
陽キャとか陰キャとか、周りからの評価なんて気にせんでいいとよ。
誰かに、そう言われた気がした。

 
 
 
 
***   この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いてます。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 

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2020-04-28 | Posted in チーム天狼院, チーム天狼院, 記事

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