ひたすら!!「推しの航空機」!! 〜元警察官で元航空管制官の書店員vol.8〜
*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:伊藤千里(チーム天狼院)
「はぁ〜あの銀色のエンブラくん、めっちゃイケメン!!」
天狼院スタッフになる前、2020年2月、
つまり結構最近まで私は航空管制官として福岡空港に勤務していた。
航空管制官とは、国土交通省の職員である。仕事内容を一言でいうと「パイロットに安心を与える仕事」
つまり、航空機同士の安全な間隔を設定するため、無線を使用してパイロットと通信し、離着陸の順位付けや許可、経路や高度などの指示を行うのが航空管制官の仕事である。
こういうと小難しい仕事に聞こえるが、要は
「たくさんの人が乗っている飛行機を絶対にぶつけないように、安全に声で誘導する」
これが、航空管制官の主な任務である。
ちなみに旅客機のことを、私達は「飛行機」ではなく、「航空機」と呼ぶので、以下、「航空機」と呼ぶようにする。
一度、管制官は一日にどのくらいの人命を扱っているか計算してみたことがある。
福岡空港に離着陸する飛行機は、一日に約400機。
半日で交代する仕事なので、一日に200機ほどの管制を担当することになる。機体の大きさ、混雑具合によって乗っている人数はことなるものの、だいたい100人が乗っていると計算すると、一日に約2万人の人命を預かっていることになる。
冷静に計算したときは、結構震えたものだ。
2万人て……
一日に2万人も人の命を預かる仕事って他にあんまりないのではないか。お医者さんでも一日にこんなに人命預かっていないだろう。もちろん、航空機っていうのは世界で一番安全な乗り物ではあるんだけど、それでも人命を預かって仕事しているのは結構プレッシャーであり、それが航空管制官は「世界で一番ストレスフルな仕事」と呼ばれる所以でもある。
そんな「世界で一番ストレスフルな仕事」、航空管制官。
私は自分の仕事が大好きだったし、楽しいと思っていたし、とても誇りに思っていた。
この仕事が楽しいと思えるポイントはたくさんあるのだけれど、一番は「美しい航空機が目の前で見られること」
毎日管制塔から航空機たちを眺めていると、みんな大きさも、顔(コクピットの部分)も、翼の形もことなっていて、なかには「この子が好き」と思える航空機が出てくる。要は「推しメン」ならぬ、「推しの航空機」だ。
今日は、その中から、「推しの航空機」の一つ……
イケメン! 銀色のエンブラエルについて語りたい。
……といっても、私は航空機の性能にあまり詳しくない。
エンジンが〜とか、航続距離が〜とか、そういうのは苦手。
なんと言っても航空管制官になった理由が「前職(警察官)が激務すぎて辞めたかったから」だから、もともと航空機に詳しかったわけでもない。
ボーイングとエアバスの違いもわからないまま、管制官試験になんとなく受かってしまったので、最初はB737とB777の違いすらわからなかったくらいである。
(ちなみにこの2機、大きさがまっっっったく違います。今見たら一瞬で判別できます)
空港に勤務するようになってから、毎日のように航空機を見るようになった。そうしてやっと航空機の違いが見分けられるようになってきたころ、完全に「見た目」だけで好みの航空機……つまり「推しの航空機」ができてきた。
それはまるで「外見」だけで男を判断するようなものだった……といまは思う。
そんな中で私の、一番のお気に入りは……
福岡空港ナンバーワンイケメン航空機!!
フジドリームエアラインズの10号機(機体色:シルバー)
エンブラエル ERJ-175
(注:個人の感想です)
フジドリームエアラインズは現在、16機の機体を所有している。所有している機体は「エンブラエル」というブラジルの会社が作った機体である。大きさはB737より一回り小さいくらいで、乗客は70人くらい乗れる。
ところで、全日空(ANA)の機体を思い浮かべてみてほしい。機体は白、尾翼は青。尾翼に白い色で「ANA」とロゴが入っている統一されたデザインを思い浮かべたと思う。
でも、フジドリームは、16機すべて色が違うのである。
色が違えば、表情もそれぞれ違う。
赤、青、ピンク、緑……いろんな色があるのだが、そのなかで一番フジドリームの機体を「イケメン」に見せているのが「10号機 シルバー」なのだ。
福岡の空は白い。大陸から黄砂とかが流れてきて、空が青色になることはほとんどなく、いつも白く光っている。
その白い中に銀色の10号機は飛んでくる。
管制塔からは空にまぎれてほどんど見えない……特に銀色の10号機は……
しかし、着陸し、滑走路から離脱して、誘導路を走って駐機場に向かっているとき、その銀色のたたずまいは、ただただ……イケメン!! の一言に尽きるのだ。
管制塔から見ていて、彼(10号機)と目が合う(正確にはコクピットの窓が見えるだけなのだが)
そうすると「はぁ〜あの銀色のエンブラくん、めっちゃイケメン!!」と毎回ドキドキしていた管制官は多分私だけだと思うのだけれど、そのくらい「推し」というか大好きな機体だった。
こうして、私は「推しの航空機」を愛でることで、「世界一ストレスフル」な航空管制の仕事を毎日楽しんでいた。(もちろん、責任をもって仕事していましたよ! 念のため)
著作権などの関係で写真を載せられないのが残念なのだが、ぜひ「10号機」のイケメンぶりを、検索して、みなさんにも共有したい!! という思いからこの記事を書いている。
現在、フジドリームの機体は、新型コロナウイルスの影響で全便運休しているとのことである。
海風が強くなる日中、福岡空港に着陸する航空機はちょうど福岡天狼院の真上あたりを飛ぶルートを通る。
はやく、運航再開して店の上を飛んでくれないかな……福岡天狼院も早く再開したいな!! と毎日心待ちにしている、今日このごろである。
さて、次の「推しの航空機」は……
また、次回!!!
■ 伊藤千里(福岡天狼院スタッフ)
1987年生まれ。同志社大学法学部卒。
両親が公務員のためか「安定、慎重、無難」がモットー。大学卒業後は警察庁に入庁するが、霞ヶ関のブラックな勤務に疲れ果て、28歳の時「世界で最もストレスフルな仕事」と呼ばれる航空管制官に転職。
2019年8月から天狼院ライティング・ゼミを受講したことがきっかけで、天狼院書店店主三浦からスカウト(?)を受け、2020年3月より福岡天狼院スタッフとして勤務。
趣味は、筋トレ、ストレッチ。健康、美容、栄養オタクで、将来的に「峰不二子」になると決めている。
【5/16(土)】19:00~ 一日で!! ライターとして生き残る「とっておきの秘伝の奥義」を学ぼう 「フリーライター入門講座」(通信限定)
*** この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いてます。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
天狼院書店「京都天狼院」 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
天狼院書店「プレイアトレ土浦店」 〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
【天狼院書店へのお問い合わせ】