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チーム天狼院

父は魔法使いだったのかもしれない。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

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記事:松下広美(チーム天狼院)

「私だって、稼いでるのに!」


もう10年ほど前のことだろうか。
父に対して、そう思ったことがある。
いや、もしかして、口に出してしまったこともあったかもしれない。

父に対しては、いつまでも反抗期だった。
世間で言われる思春期の反抗期の方が、まだマシだった。
まだ自立も何もできない子供が騒いでいるだけの話だから。
成長するにつれて、大人になるにつれて、「あのときは反抗期だったなー」なんて呑気な話ができるようになればよかった。

でも、違った。

歳を重ねるにつれて、ひとりの足で立てるようになるにつれて、反抗が強くなった。

「いつでもこんな家、出ていけるから!」
「おお、出てけ出てけ!」

いや、こうやって書いていると、高校生とその親、くらいの会話レベルなのだが、30を過ぎた娘と父の会話なのだ。
とにかく顔を合わせると反発し、同じ家に住みながらも、口もまともにきかなくなっていた。

父は、バイク屋をしていた。
自宅の一部を店にしている、町のバイク屋さん。

祖父が自転車屋をしていたが、父が12の時に亡くなった。
父の兄がその跡を継ぎ、店をやっていた。
しかし、父の兄は家出をしてしまい、結局、父が継ぐことになったそうだ。
父が高校を卒業するかしないかのときだった。
それから、高度経済成長を経験し、バブルを経験し、不景気を経験し……。
いろいろな時代にもまれながらも、店を潰すことなく、実際潰れそうだったとは思うけれど、死ぬまで店を守っていた。

ひとつの場所しか知らなくて、ずっと商売人だった父にとっては、私はどう写っていたのだろう。
娘とはいえ、大学も出て、会社というところで働き、それなりに給料をもらってくる。
しかも、自分は「稼いでいる」と思っている。

お互い、わかりそうでわからない者同士、似ていて、似すぎているから反発した。磁石が反発するように。

「稼いでいる」か。

よく、そんなことが言えたな。

当時は、給料をもらっていて、お金を持っていることが「稼げている」ことだと思っていた。
自分のお金で、好きなことができて、会社にいて仕事さえしていれば、生活に困ることなんかない。それでいいと思っていた。

でも、違うってことに、最近気付いた。

きっかけは、なんだっただろう。
もしかして、父だったのかもしれない。

今年、父の七回忌だ。

わかっているつもりだったけど、何もわかっていなかった。
自分で立つということを。

父が亡くなって、家の経済的なことを考えることが増えた。
私が支えないと、稼がないと、と改めて考えると、私は稼げるのだろうかと、思った。

会社に所属して、与えられた仕事をこなしていけば、それなりの報酬はもらえる。確かに、その報酬で困ることはない。
困ることはないけれど、何か違うと思った。

それが何かがわからない。

父は、どう、稼いでいたのだろう。
自分の腕ひとつで。

単純に、バイクの修理とはいうけれど、父に直せないバイクはなかった。
どんなに動かないエンジンだって、分解して掃除をし、部品を入れ替え、組み立てれば動くようになる。
何も知らない人にとっては、魔法使いのようにも思えただろう。

そう技術と腕はあった。

技術と腕の、売り方を知らなかったんだろうな、と俯瞰してみると、思う。
もしかして、バイク何でも直せます! なんて出したら直しに来る人だっていただろうし、技術を使えば、直せたものはバイクだけではなかっただろう。

私は、と考えてみると、お金を作り出すだけの、そんな技術も腕もない。
会社から放り出されたら、何もできない。
放り出されなくても、今は大きな会社だって、いつ無くなってしまうかわからない時代だ。

だから、「稼ぐ」力を身につけなければならない。

そう思い、前の会社を飛び出した。
まだまだ、自分で稼げる力は身につけていない。

でも、そのうち、ちゃんと「稼げるようになった」と父に報告したいと思う、

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