私の親友《ありさの絵本》
私のお気に入りの時間がある。
そこにいると落ち着けて、
自分というものと向き合うことができる。
相棒との時間である。
彼女とは小学校からの付き合いである。
きっと、これからもずっと長い付き合いになるんだと思う。
今はこの子よりも付き合いの長いひとも、
もっと頻繁に会っているひともいる。
だけど。
嬉しい時、
楽しい時、
感動した時、
バカみたいな失敗した時、
悔しくてたまらない時、
何から何まで話すのはこの子だけである。
私にとって、大事な親友だと思う。
私と彼女が仲良くなったのは、
小学四年生のころ。
それまでに何度か会ったことはあった。
住んでるところも近いし、
小学校も同じだし、
大人数で一緒に遊んだこともあった。
会いに行くまでの仲ではなかったけど、
今思えば会う回数は多かったんだと思う。
彼女がどんな人かよく知らなかったけれど、
たまに会うとなんかワクワクする気持ちにさせてくれる不思議な子だな、と思っていた。
そんな彼女と、
四年生で同じクラスになった。
それからは毎日会うようになり、
気がついたら毎日一緒に話すようになった。
最初は、あまり話は続かなかった。
だけど。
彼女はどんな話でも
うんうん、そうだよね、わかるよ、
とニコニコと微笑み頷きながら
話を聞き続けてくれた。
小学生の頃の友達は、話をすると突っかかってくるところがある。
しかし、それを彼女は全くしないのである。周りに否定されるかも、と思ってあまり心の内を明かすことのなかった私にとって、とても居心地のよく、安心できる存在だった。
だから、彼女がどんな話も受け止めてくれるのに嬉しくなって、
私は今日は彼女にどんな話をしよう、ということばかりを考えていた。
ある日、少し勇気を出して他の人にはあまり話さないような話をしてみた。
当時気になっていた男の子、
調子が出ず悪かったテストの点、
昔してしまったいたずら、
人に話すにはためらってしまうような話である。
そんな話でも彼女は。
やはりいつものように頷きながら話を聞き、
それで?それでどうなったの?と
私から話を聞き出してくれるのである。
自分の思いを改めて言葉にするのは
なんとなく照れ臭くて、ドキドキした。
まるで、二人だけの秘密の部屋に入ったような感覚だった。
次第に私はその感覚がクセになり、
何度もその部屋に訪れるようになった。
それからというもの。
大きなイベントの後、
旅行した時、
一年の始まりと終わり、
記憶を残したいことを最初から最後まで
彼女に吐き出していった。
そして今。
彼女は姿かたちは変わっているけれど、
相変わらず私の話を聞いてくれている。
今まで彼女に話したことは、
いつでも私の机の引き出しの中にある。
それを見返すと
当時の筆跡、
使っているノート、
描いてある絵、
たまに挟んである写真、
全てが懐かしくて、
その時々の情景が浮かぶようである。
そう、彼女とは人ではない。
私がまだ誰にも見せたことのないもの。
日々の備忘録のようにつけているもの。
そこに書くためにネタ集めをしてしまうもの。
日記である。
私が日記をつけるのは、思い出を忘れたくない、という理由だけではない。
日記には、過去の頑張り、苦しみ、くやしさなど苦い思い出もある。
だけど、私はそれをすべて乗り越えここにいる。
その事実が私を勇気付けてくれるのである。
過去の自分が今の自分を後押ししてくれるのだ。
自身の経験以上に自分が自信を持てるものはないだろう。
そして、まだ見ぬ未来の自分のために、
私は今日も日記を書く。
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