チーム天狼院

わたしが天狼院書店のアルバイトを辞めた理由《海鈴のアイデアクリップ》


天狼院

天狼院書店のアルバイトを辞めました。
振り返ってみると、初めて天狼院に足を踏み入れた日を、昨日のことのように覚えています。

私が「天狼院書店」を知ったきっかけは、友達の紹介でした。

「次の日曜日にイベントやるから、来てみない?」

書店で、イベント。売り場の一角にでも広いスペースがあるのだろうか。
そう思いながらふらっと行ってみて、驚きました。
外から見ると、どうも怪しげな黒い看板が立っていました。
池袋の中心から少し外れた場所にある、知らないビルに入っていくのには、すこし・・・いや、かなり勇気が必要でした。
おそるおそる階段を上り、「東京天狼院」と刻印されている透明な扉を押し開けると、

「いらっしゃいませー」

一番最初に声を掛けてくれたのは、すごく感じの良いお兄さんでした。

思ったよりこぢんまりとした店内。
所狭しと本が並べられていて、秘密基地のようなワクワク感がありました。奥に進むと、なぜか、コタツもあります。

「来てくれてありがとう!」

私を呼んだ友達が、店の奥から出て来てくれました。
私はその時すでに懐かしい感じを覚えていました。友達のよく見知った顔を見たからではなく、天狼院という場所そのものに、です。
初めて入ったのに、まるで元から自分の居場所だったかのような感じがしていました。
オレンジの光が、「おかえりなさい」と言っているようでした。

店の奥には、ほとんどスキンヘッドの頭に、ひげを生やした怪しげな風貌の男の人がおりました。

「あそこにいるのが、三浦さんだよ」

そのころ私は、将来の仕事をどうするか悩んでいました。
留学でずっと一年間苦楽を過ごした友達には「出版関係の仕事に興味がある」と打ち明けていたので、彼女が「三浦さんに聞けば何か分かるかもしれない」と、話してくれていたのでした。

初めて顔を合わせるなり、三浦さんは、赤いメモノートを片手に、私にさまざま質問をしてきました。

「得意なこと、ある?」 
――ダンスとか、絵を描くことですかねぇ。高校まで、陸上やってました。
あ、大学のサークルでは、英語劇をしてました。

「やりたいことってなに?」
――将来、出版関係の仕事に興味があるので、なにかできることからやりたいですね。

面接ともなんとも言えないような感じの質問がつづき、ふむふむ、と三浦さんはノートに私の情報を書き込んでいきました。

「オッケー、そしたら、海鈴、記事書いてみてよ。自己紹介の記事!」

そうして次の日、授業前にふらっと顔を出し三浦さんに記事のコツを教えてもらいました。
完成した私の記事がアップされるのをドキドキしながら待っていたのが、まるで昨日のことのようです。

でも、それだけでは「天狼院」がどのような形態をしているのか、全貌が見えませんでした。

何かイベントをやっていようものなら、お手伝いをしながらさまざまな著者の興味深いお話を聞きました。
なにやらたくさんやっている「部活」や「ラボ」にも、ひととおり参加しました。
特に用がなくても足を運び、先に働き始めたスタッフを見て、どんなふうに振る舞っているか学びました。

最初は本当に、イベントでもただお手伝いばかりでしたし、インターンという形だったので、報酬をもらえるような技量もありませんでした。

さまざまな部活や、ラボのマネージャーをするスタッフを見て、いいなあ、とは思っていましたが、それ以上に、ここで化学反応的に起こる、非日常な出来事に携われることが楽しく、多くの時間を過ごすようになっていました。

天狼院で使う時間を増やしたいと、3か月後には、元々やっていたもう一つのバイトを辞めていました。

でも途中、悩んだこともあります。
多くのスタッフが記事を書いていて、その中でパッとしない自分。
三浦さんから「これ、やってみない?」と言われ二つ返事で引き受けた企画も、うまく形に出来ない自分。

何がハマるか分からないから、挑戦できることはすべてやっていくことが必要だとは思っていたけれど、やっぱり「ハマらない」状態は、苦しいのです。

そういう状況では、天狼院に足が向かない時もあったけれど、それでも救われたのは、いつもと変わらないチーム天狼院の顔があったからでした。
少しご無沙汰になったときでも、「お、海鈴―!」と、いつもと同じように迎えいれてくれる。

たったそれだけのことに、どれだけ救われたことか。

 

天狼院は、まるで『天空の城ラピュタ』のドーラ一家です。

刻々とうつり変わる状況に、ドーラ・・・いやいや、三浦さんが
「40秒で支度しな!」
とでも言うような号令によって、全員が一丸となって、お宝を手に入れるべく作戦を遂行するのです。

本当につぎつぎと、冗談じゃなくつぎつぎと、面白いことが降りかかってきます。

そのスピードに、振り落とされないように。

たくさんの「面白い!」に必死にしがみつき、このやろー! と、負けじと応戦してきた結果、私は、いつの間にか天狼院書店のアルバイトを辞めていました。

アルバイト
1 本業や学業のかたわら、収入を得るための仕事をすること。また、その仕事をする人。
(出典:コトバンク)

わたしは、「収入を得るための仕事」をやっているのではありません。
この仕事が面白くて、やりたくてやっているのです。

シフトは入っていますが、週に3,4日ほどですし、フルタイムでもありません。けれど、それ以上に天狼院で何かできることを少しでもやりたくて、シフトの入っていない時間でも来てしまいますし、自分から「これ、やりたい!」とイベントを企画しています。

目の前のことに、ひたすら、喰らいついてみる。

そうして、いつの間にか、できることも、やれることも、後輩も、増えていました。
大きなイベントや業務を任されるようになったり、学生のうちではなかなかできない経験をさせていただいています。

小遣い稼ぎの「アルバイト」という認識は、いつの間にか消えていました。

私こそが天狼院書店を動かしているのだという意識が、芽生えていました。

 

天狼院という場所は、学生にとって、いや、きっと学生だけでなくすべての人にとって、本当に可能性に満ち溢れたところだと思っています。
自分が何に向いているのか初めはわからなくても、とにかくやってみることで、自分が何に「ハマる」のか見えてくる。その挑戦のチャンスが、ここには溢れています。

その「何か」を本気で見つけたいのなら、天狼院というフィールドは、あなたの翼を広い大空へと羽ばたかせる追い風となることでしょう。

しかし、風はあっても、翼がなければ、飛べません。

翼を生やす方法は、簡単です。
今、自分にできる目の前のことをやってみること、なのだと思います。

そうすれば、いつの間にか、白鳥のような美しく大きな羽が、あなたに備わっているはずですから。

* * *

11/16-18に行われる「天狼院の大文化祭」にも、たくさん携わらせていただいています。
面白いコンテンツが、こんなに一堂に集まって良いのでしょうか!? というくらい、です!
われわれ『ドーラ一家』が、ここでしかできない体験を提供いたします!!

「天狼院の大文化祭」特設ページ

大文化祭

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