チーム天狼院

結婚もしていない私だけれど、この前、頭から子どもを産んだ《海鈴のアイデア帳》


キーボードを打つ手が、かすかに震えていた。
ファイルを開いた画面の前でこんなに興奮したのは、ほとんど初めてのことだった。

私が参加していたのは、2017年の初めに発足した『READING LIFE』の編集会議だった。まもなく、2014年以来2冊目となる天狼院の雑誌『READING LIFE』の制作が始まるという。
天狼院スタッフと、雑誌作りに携わりたいというお客様が集まっていた。

私には、どうしてもやりたいと思っていた企画があった。
『READING LIFE』の制作が開始すると決まっている前から、こんなことが何かしら紙面にできたらいいな、と思っていた案件だった。
いつのタイミングにか絶対に実現したいと思っていたけれど、まさかこんなに早くピッタリのタイミングが来るなんて、思いもしなかった。

私は京都天狼院のオープンにあたって京都に異動してきてから、この1つの店舗にどれだけのプロが関わっているかを見ていた。

100年も昔からある町家をリノベーションし、人の集まる場所として再生させる、職人さん。
草木が伸び放題で、2階までツタが壁をはっているほどめちゃくちゃな状態だった中庭を、情緒ある坪庭に変えてしまった、庭師さん。

オープンの準備期間中、間近でそのお仕事ぶりを見ていたのだが、それが本当にすごかったのだ。
人の手によって生まれ変わるとは、まさにこういうことか、と思った。
完成したもののクオリティが、前の姿からは想像できないほど素晴らしいものだった。
日に日にできあがっていく店舗や、庭のようすを見て、ああ、と思った。
ストイックに、その道を極め、完成に妥協を許さない。
「職人」とは、なんて格好いいんだろう。

町家も、坪庭も、「京都」を象徴するものだ。
いまや世界都市となり、日本人だけでなく世界の人から見られているのが、京都という場所だ。
そこで生きる職人さんは、並大抵の覚悟ではないのだろう。
一切の妥協なく、ただその完成度を高めているのだろう。

こんなにも素晴らしい空間を作り上げてしまう技術。
作業服で工具を持ち、手先を見つめる真剣な眼差しが、私の心を打った。

だから、どうしても聞いてみたいと思ったのだ。
ここ、「京都」という地で、職人という道を選んだ、その訳を。

迷いはなかった。企画タイトルまで決まっていた。

【京職人の「はたらく手」】

その道一筋で生きる職人さんの「はたらく手」に、どうしようもなく尊敬と、憧れの念を持っていた。
私が、京都に来たからこそ聞いてみたいと切望していたものを、そのまま出した。

「いいね! 面白い。連載ものにできそうだね!」

編集長・三浦のOKが出た。晴れて、企画が紙面に載ることになった。
ほころぶ顔を抑えられなかった。これでやっと、積年の想いが実現するのだ。

そうして、企画から紙面のデザインラフ、写真、インタビュー、文字起こし、編集、校正まで……私がこのページに関わったのは、デザインを除くすべてだった。

企画OKが出てから、京都天狼院を手掛けた工務店さんの職人さんにアポを取り、実際にお話を伺った。
ある程度、頭の中で構想はしていったが、インタビューの中で新しく膨らんできた話があると、当初の構成だけでは足りなくなった。
「面白い!」と思うエピソードが出てきたとき、それを紙面のうちどれくらい割いて、どのように写真を配置するか瞬時に見積もる必要があったのだ。

インタビューをしながら同時に、カメラマンもやった。
新しいあのお話が出てきたから、きっとこの写真があったほうがいいだろう、と、必要なカットを即座に判断しなければならなかった。あとで足りなかったからといって、別日で「もう1度お願いします」だなんてできないのだ。

雑誌づくりとは、最強の「即興性」が求められるものなのだと知った。

職人さんには、その建物だけでなく、実際に足を踏み入れる人々のことを考えているからこそのお話を、伺うことができた。その裏の苦悩も、努力も。

人柄と想いを、まっすぐ・読みやすく伝えるには、どんな紙面構成がいいのか。
どの言葉を見出しにピックアップしたら、言いたいことがいちばん伝わるだろうか。
どの写真を使ったら、いちばん人柄が、雑誌を見る人にも届けられるだろうか。

実際にインタビューを終えてからというもの、ますます強くなった職人さんへの尊敬と憧れの念だった。
「伝われ!」という想いを込めて、編集をした。

構成を考えて考えて、これだ、というところまでまとめた文章、紙面の設計図であるデザインラフ、使用する写真。すべての素材をデザイナーに送った。私ができるのは、ここまでだ。

しばらくして、メッセージが入る。

「『京職人のはたらく手』、デザイン上がりました」

pdfを開く手が少し震えていた。胸の鼓動が早くなったのがわかった。
アイコンをクリックし、画面いっぱいに広がった画を見て、身ぶるいがした。

それは、雑誌だった。

言い方がおかしいかもしれないけど、「それは、雑誌だった」のだ。

はじめは「これがやりたい!」と、自分の頭の中にしか存在していなかったものが、現物となった瞬間だった。

そして最近でいちばん、嬉しかった瞬間だった。

前々からほんとうにやりたいと思っていた企画の段階から、インタビュー、構成、写真撮影、ラフ、編集、校正まで、子どもを育てるように成長させた紙面。
ゼロから育てることが、こんなにも素晴らしいことだなんて。
頭の中のアイデアが、しっかりと重みのある実物になるのが、こんなにも快感だなんて。
愛情こめて育てた雑誌が、店頭でお客様の手に渡ることが、こんなにも幸せなことだなんて。

まだ結婚もしていないし、子どももいない私だけど。
きっと「我が子のよう」とは、こういう気持ちのことを言うのだろうなと思う。
その雑誌は間違いなく、私の頭の中から生まれた子どもだった。

私は知らなかった。
雑誌づくりが、こんなにも幸せをもたらすものだなんて。

時間も、手間もかかるし、細かい作業は多いし、入稿前は寝られない日が続いたけれど。

それでも、自分の頭の中にしかなかったアイデアが具現化される瞬間は、
「ああ、私、人間に生まれてきて、よかった」と思うほどの、喜びをともなう体験だったのだ。

 


 

雑誌『READING LIFE 2017秋号』、編集部員、求ム。

 
http://tenro-in.com/zemi/37776

 

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