チーム天狼院

おばあちゃんは僕より若い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:上山泰世(チーム天狼院)

※この話はフィクションです。
先日の深夜バイトの帰り、兵庫の田舎で農業をしているおばあちゃんから電話がきた。
おばあちゃんが僕に電話して来るときは緊急事態のときだけのはず。
「何か事故や事件に巻き込まれたのかな」と思い慌てて着信にでた。

「もしもし、おばあちゃん大丈夫? なんかあった?」

「もしもし、おはよう。おばあちゃんです。今日からスマートフォンに変わりました。じゃあまたね」

そう言って一方的に電話を切られた。
その後すぐにLINEがきた。
おばあちゃんからだ。もうLINEを覚えたのか。
「おばあちゃんです。また操作教えもらうね」

「まじか……」

どうやら近所の友達に勧められて「パカパカ」とか「ガラケー」と言われていたガラパゴス携帯からスマートフォンに変えたらしい。しかし、僕の記憶ではメールひとつ送るのにやっとだったおばあちゃんがスマートフォンなんて使えるのか。
少し、いや、すごく心配である。
この間にもおばあちゃんが危ない詐欺や請求などに遭ってないかすごく不安だった。
その週末、僕はおばあちゃんにスマートフォンを教えるために兵庫県まで車を走らせた。
おばあちゃんの家はいつ見ても渋い雰囲気が漂っている木造2階建の住宅である。駐車場もとても広く。よくアニメなどに出てくる古い家そっくりである。
「もう3年は行っていないな」
そんなことを考えているとおばあちゃんの家についた。ついた瞬間衝撃を受けた。ドアが自動ドアに変わっている。木造の古い住宅に最新の自動ドアが設置されているのである。恐る恐る中に入るとルンバとペッパーくんが出迎えてくれた。僕の知っている限りペッパーくんを自宅で所有しているのはおばあちゃんだけである。玄関だけで衝撃続きの家の廊下を進んでいくと、リビングにたどり着いた。
「おばあちゃんきたよー」
部屋を一歩入るとまた衝撃が走った。
50インチの薄型テレビが設置されていたのだ。しかも4kでよく見ると3Dテレビである。このお店でしか見たこともないようなテレビで若者のようにおばあちゃんは戦闘ゲームをしていた。

「おばあちゃん何してるん!」

「え、あんた知らんのこのゲーム。みんなしてるやろ」

もちろんそういうこと聞いているのではない。

「なんでこんなに部屋の仕様が変わってるの?」

「こんなって……。そんな変わってないやろ」

僕が帰らなかった3年間の間に木造住宅は少しずつ改造されていたらしい。
そんな衝撃もあったのだが、本来の目的であるスマートフォンの操作を教えることを忘れないうちにさっさと始めようとゲームをしているおばあちゃんを催促させ、僕のスマートフォン教室が始まった。

「おばあちゃんスマホは初めてやんな? ならまずは操作方法から説明するで」

「まずはここのボタン押したら電源が入って、アプリ入れる時はここの画面押すねんで」

僕は基本の操作を教えようと初歩の初歩から始めた。
おばあちゃんは最新家電中心の生活をしてるだけあってスマートフォンの操作の授業はスムーズに進んだ。

一通り操作を終えると、僕は「バイトがあるから」とおばあちゃんの家を後にした。

後日おばあちゃんからまたLINEがきた。

「スマートフォンってすごいんですね! ブログ始めたのでよかったら読んでください」

おばあちゃんは毎日農業ブログを更新するようになった。

農業のノウハウそして簡単な料理のレシピを紹介しているブログである。

このブログがまさかの大ヒット。

1日およそ10万人が見るブログと化した。

見ているのは主婦層だけでなく一人暮らしのサラリーマンの方などもこのブログを参考にしているという。

実際一人暮らしの僕も参考にしている。

簡単でかつ美味しい料理がいくつも載っている。

このブログを機におばあちゃんは一気に有名人となり、最近では本を出版してブログの書き方教室まで開いている。
スマートフォンの使い方を教えていた僕は今やおばあちゃんの生徒となり、他の人同様にブログの書き方教室に通っている。
ぼくの生徒だったおばあちゃんはついに先生になった。
まさに主客転倒とはこのことである。
少し悔しかったが嬉しくもあった。
3年前、おじいちゃんが亡くなってひとりぼっちになってからあまり人と関わらなかったおばあちゃんが教室を開いて生徒さんと会話している。
この3年間で1番いきいきしたおばあちゃんをみれた。

***

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