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チーム天狼院

お酒はルールを守って楽しく飲みましょう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:秋田珠希(チーム天狼院)

最近の女子大生の中では、やけ酒が流行っているんだろうか。
「もう飲まないとやってらんないよ」
この言葉を、何度聞いたかわからない。

数日前、私は友人とお酒を飲んだ。
彼女は幼馴染の大学生で、たびたびこうして会っている。
その日、彼女が飲むペースは早かった。
頼むのは、ワインに焼酎、日本酒など、アルコール度数が高いものばかり。次々とグラスを空にしていく。

彼女は真面目な女子大生だ。もちろん成人済みで、ベロベロになるまでは酔わない。お酒に強く、自分の飲める量はわきまえている。
だから、飲んだ翌日の授業は遅刻せずに出席する。授業中寝ることもほとんどない。
それにしても飲みすぎだ。花の女子大生に、やけ酒は似合わない。体にも負担がくるだろうに。
友人として心配になる。

お酒を飲みながら、私たちは色々な話をする。
友人の話、授業の話、バイトの話、サークルの話など、話題は尽きない。
加えて、大学が違う彼女と私は、大学では共通の知り合いがいない。
おおっぴらに愚痴が言えるというわけだ。
先日飲んだ彼女の愚痴は、主に周りの友人のことだった。
「その子、自分の話はすごく話すくせに、人の話はまるで聞かないのよ」
「ほうほう」
「例えば、バイトが大変だったって言うのね。いかに大変だったかをたくさん話すの。そしたら聞いた方はお疲れって言うじゃない。大変だったねって」
「そうだね、なぐさめるね」
「それなのに、私も実は忙しかったことがあってって言うと、みんなそうだよねって言うんだよ。みんな同じだよねって」
それでまた自分の話に持って行くの。私には話すなってこと?
そう言って彼女はため息をついていた。
彼女は話をよく聞く人だ。
相手のどんな話も丁寧に聞く。言葉にきちんと反応を返す。
彼女の周りの子は、話しやすかったんだろうと思う。何だって聞いてくれる相手だと思っているのかもしれない。
「私は当然だと思って話を聞くけど、相手はそう思ってないんだなって考えるとちょっと悲しいよね」
話がひと段落した時に、彼女はお酒をあおって言った。
幼馴染の例を出したが、彼女だけではない。私の周りのやけ酒している女子大生は、だいたいこんな具合だ。

相手にきちんと向き合おうとすると疲れる。
それは私も身に覚えがある。
二年前、塾講師のバイトをしていた時のことだ。
私は授業の度、どうすればスムーズに授業が進むか、必死で考えていた。生徒に担当の講師を振り分ける仕事をするようになってからは、それぞれにとってどうするのがやりやすいか考えた。
そうしたら、自分のダメさ加減に落ち込んだ。仕事が終わらない。
バイトにはだいぶ慣れたはずなのに、仕事は増えていく一方だった。なぜって、慣れるほど色々なことに気がついてしまうから。
生徒に頼まれたことをこなし、他のアルバイトの頼みになるべく応え、社員に言われた仕事をこなす日々。
「あ、これあの子に教えてあげたほうがいいな」
「新しい担当生徒のこと、連絡しておこう」
「あの人この生徒を担当したくないって言ってたけど、どうしようか」
「この人これやっといてって言ってたっけ」
講習期間も重なって、3日連続で23時前まで教室にいたこともある。9時半に授業は終わるのに。
相手のためを思えば思うほど、相手に振り回されていく。
こちらが勝手に気を回しているだけだから、相手を責められない。もう気遣うのはやめようと思っても、クセになっていてやめられない。
その時の私は、愚痴も言えなかった。他の講師や社員を責めるのは筋違いな気がしたし、愚痴を言う自分が許せなかったから。
我慢するしかない。手際よくできない私が悪い。「私は頑張ってます」とアピールしているわけじゃない。紛れもなく、事実だ。
「なんでみんなはできるのに、私はできないの」
「大丈夫、私はまだ頑張れる」
そう自分に言い聞かせた結果、私は体調を崩してバイトを辞めた。
自分が責任を持ってやっていたことを、全部放り投げた。慕ってくれていた生徒も、信頼してくれていた同僚も、全部。
ちゃんと向き合おうとして、失敗して、逃げた。でも別に誰かときちんと向き合うことが悪かったんじゃない。
一番向き合わなきゃいけなかった、弱い自分を見ないふりしていたのだ。

「はああー、しんどい……大学生面倒くさい……」
彼女たちの愚痴を聞くと、私はバイトをしていた頃を思い出す。
そして却って安心する。
愚痴が言えるだけいい。人間、毒を吐かないと生きていけない。現状を改善することも大切だけど、たまには弱い自分を出すことも必要だ。
だから、いいのだ。やけ酒しても。
弱い自分が出てくるのは、頑張っている証拠なんだから。
「もう一杯飲もうかな」
そう言って、彼女は再びメニューを開いた。
万が一潰れたら、なんとか私が連れて帰ってあげよう。そう心に決める。

***

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