自分の体は一生、取り替えられない
*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:田中望美(チーム天狼院)
ヨガ。
マッサージ。
整体。
ピラティス。
ストレス社会と呼ばれるこの時代に生きている私たちは、そういったもので体をほぐしたり、整えたりして心身ともに癒やすようになった。
毎日のように通いつめているダンススタジオで私は、やはり、体をメンテナンスするためのクラスをとっている。
そのクラスでは、一切踊らず、骨盤と筋膜にフォーカスして全身を土台から整える運動をする。つまり、マットを引き、寝そべって、1時間ストレッチをするということだ。
そのクラスを受けるたびに、自分の体がどれほど歪んでいて酷使されているかに気がつくし、日頃のメンテナンスがいかに大切かを思い知らされる。しかしなんと言っても、体が整うのはとても気持ちがいい。自分の体がリセットされスカッとした気分になるのだ。
私はこのクラスが好きで、先生もすきで、いつも前の方でレッスンを受けていた。
いつも体についての豊富な情報やアドバイスをくれる先生。
そんなある日のことだ。
レッスン中に先生が何気なく言った一言が、私は体のことだけでなく、人生全てに通じるものかもしれないと思った。
普通に考えれば、自分の体と向き合い、整えていくレッスンだけれど、これはもしかすると、すべての人の人生において重要なことを教えられている気がしてならなかったのだ。
「自分の体は一生、取り替えられないからね」
機械みたいに部分交換なんてできない。一生この手、この足、この頭、この体と付き合っていかなければならない。だからメンテナンスすることが大事だし、大切にしないとボロボロになってしまうんだよ。ダンサーは特に、普通の人がしないような無理な動きをするからメンテナンスがなおさら必要になってくる。
私は、確かに、とうなずいた。
そう言われれば、あたり前のことであるが、
当たり前のことを人に言われて初めて、その当たり前のことについてよく考えていなかったと分かったのだ。自分の体を粗末にしていたかもしれないと思わされたのだ。
歯だって同じだ。永久歯が生えてきたら、もうその歯の代わりは生えてこない。だから、きちんと歯磨きをしなければならない。虫歯になったら銀歯か入れ歯だ。人工的な代わりがあるだけまだマシかもしれない。けれど、肉体は本当に代わりがない。死ぬまで一生この顔でこの骨で、この筋肉と付き合っていかなければならないのだ。年齢と共に必ず衰えてゆくものであるから、今から大切にして置かなければ、いつかきっとガタが来る。そうなった時に困るのは、他の誰でもない、自分自身だ。人は、今が大丈夫だとついつい無理ばかりしてしまうが、それが続きすぎると後が大変なことになる。そうならないためにも、努力する必要があるのではないだろうか、と私は思う。
だが、なにも、体だけの話ではない。
替えられないものは、まだある。
「自分」という存在も一生取り替えられない。生きている限り、どんなに嫌でも付き合っていかなければならないものである。
自分が自分であるという定めから逃れられないのだ。
自分という人間がずっと大好きだと思えればいいが、そう思えないことも多々ある。
だからこそ、なるべく楽しく生きていたいし、輝いていたいと願うのだろう。
そんなふうに、離れられないものって、多くある。
それはルールだったり、常識だったり、運命だったり、あるいは自分がそうでなければならないという意志だったり。
家族だって、血がつながっているという事実からは逃れられない。時間という概念だってそうだ。時はどんどん進み続ける。
けれど、
「縛られている」あるいは「繋がっている」
と、どう捉えるかは、その人が決めることだ。
だからこそ、私はダンスの先生が言った言葉に心がピクッとなった。
自分が自分に産まれてきたことに、意味があるとかないとかはわからないけれど、
どうせこの時代、この場所に産まれてきてしまったのだから、精一杯生きたい。
ああ、生きている。幸せだなと思えるように日々生活したい、と。
自分という存在からはどう足掻いても逃れられないのだから、いっその事諦めて、発想を転換しようと思う。
さて、どうやってこのどうしようもない自分を、可愛がってあげようかな、付き合っていこうかなと。
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