チーム天狼院

私を甘やかすレシピ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高野 いづみ(チーム天狼院)
 
「あぁぁ〜〜 なんでこんなにしんどいことって重なるの……!」
 
その日は、朝から何もかもがうまくいかない日だった。
目が覚めた時には起きるべき時間をすぎていて、急いで支度して家を出た。
駅までの道を駆け抜け……あ。やばいスマホ忘れた。
スマホを忘れちゃ仕事にならないと、回れ右をして猛ダッシュ。
家に着いてスマホを手にした瞬間に待ち合わせ相手に謝罪のメッセージを入れる。
せっかく急いで家を出たのに……。と凹みつつ、今度こそ池袋へ向かうべく駅へと道を急いだ。
 
アポの後に向かったバイトもその日は散々。
時間は全て噛み合わないし用意していた心づもりも吹き飛び周りに散々迷惑と心配をかける始末。
結局その日は、ここでバイトを始めてから一番私の出来が悪い日となり、
「社長に報告書を提出するので、今日の経緯を教えてください」との店長からのお言葉に縮み上がることとなった。
 
しかも、その報告書と反省文を書くのは私ではなかった。店長だ。店長は店舗の管理からイベントの企画運営集客までいつも走り回っているほど忙しいことを私は知っている。申し訳なさにさらに身が縮む。
 
ぎゅうぎゅうに身を縮めながらも業務を進めようと金額の計算をしていると、今度はレジの数字が合わない……しかも16000円。この金額はただごとではない。今まで見たことないレベルの誤差! え、なんで!!?? なにか……何かが間違えている……。
必死で何度も計算をし直し、メモを見直し。他のスタッフにも確認を繰り返し、計算し直して……でも合わない。
どんどん身は縮む。心臓の鼓動は大きくなる。
なんの金額だこれ……と困窮し諦めて社員さんに報告すると
「あ、これ昨日の売り上げの一部じゃない?」
とあっさり解き明かしてくださった。
 
安心してぶわっと全身の力が抜けて行く。と同時に情けなくて恥ずかしくて仕方ない。
あぁ……つかれた……。
社員さんにひたすら頭を下げつつ退勤し、帰路につく。
 
バタバタしてた分帰りがだいぶ遅くなったな……。
家でご飯を作るつもりでいたけど、さすがにそんな体力今日は残ってない……。
節約したい意思はあったが思考がまとまっていないのでうまくお店を決めることができず、散々迷った挙句ラストオーダー直前のレストランに入って一人で夕食をかき込んだ。
 
あー。今日はうまくいかない日だったなぁ……。
つかれたなぁ……。
こんな日に一人でご飯食べてるの寂しいなぁ……。
もちろん反省はしてるけど、誰か……甘やかしてくれる人がほしい……。
「おつかれさま。頑張ったね」って優しい手で頭を撫でてくれる人がほしい……。
 
そんなことを考えたところで誰も思い当たらないし、仲良い女友達に頼ろうにも弱音を吐けるような友人たちは奇跡的なタイミングで軒並み彼氏がいることに改めて気づいてしまった。
別に、この歳になって恋人がいることで優劣がつくなんて全く思わないけれど、
時折、自分には甘えられる存在がいないことが寂しくなる。友人たちが羨ましくなる。軒並みだと一人で勝手に寂しくなる。
 
レストランを出たところで一人でとぼとぼ帰ることに耐えられなくなって、怒涛の勢いで友人にLINEを送りながらエレベーターに乗り込んだ。
今日は失敗が重なってしんどかったこと、身を何度も縮ませていること、でも1日乗り切ったこと、彼氏ほしくなるなぁなんて恋バナのような愚痴のようなつぶやきも。
 
エレベーターが1階で止まって、扉が開いたので降りようとふと目を上げたら……Ohなんてこったなんでこのタイミングでここでキスしてんの!!? 
 
私のメンタル模様とのタイミングがドンピシャすぎて大きくダメージを受けた。
もうここまできたらなんだか笑えてくる。
 
さぁ家に帰って寝るまでにあとは何があるかななんて気分は上向きになり、ようやく落ち着いて帰れると思ったら、気づくと逆方面の電車に乗っていた。
まじか。
次の駅で降り、正しい方向の電車に乗りなおそうとホームのベンチに腰をかけると、隣のお姉さんが体調悪かったらしく、吐いていた。
まじか。
隣にいてしまったのも何かの縁かと自動販売機で水を買い、渡そうとしたところでお姉さんは私の声に気づかずふらっと別のところへ行ってしまった。
 
手には行き場を失った水のペットボトルが残っている。
 
こんな日は。
ちょっと遠回りしてコンビニに寄ろう。
自分を甘やかすにかぎる。
好きなジュースと、好きなお菓子を買って。
レジ前の唐揚げも衝動買いしちゃって。
お行儀悪いけど、歩きながら食べるのだ。
だんだん楽しくなってきてちょっとスキップなんてしながら。
もうひと……あ、爪楊枝折れた。けど気にしない。
数歩前を歩いてるおっちゃんが、腕に抱いた犬とずっといちゃいちゃしてるけど気にしない。
 
無事に家に着いたから、怪我しなかったから今日はラッキー。
明日は、きっといい日になる。
 
***

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