手から分かるわたし
＊この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事；鈴木佑香（チーム天狼院）
「また切ったの？？！！」
「この前も絆創膏貼ってたじゃん。もう」
アルバイト先のお蕎麦屋さんで、店長に怒られてしまった。
わたしはよく手に小さな切り傷を作ってしまう。この前は薬指にできたささくれを取ろうとして失敗したし、昨日は急いでファイルを取ろうとしたら爪の付け根に直撃して薄皮が切れちゃったし。プリントを渡すときに擦れてしまって手のひらを切ることなんてよくある。C1000レモン（最近お風呂上りに飲むのがマイブーム）を飲むとき、蓋で指を切ってしまうし。いわれてみればいつもどこかの指に絆創膏を貼ってる気がする。
でも、どれもこれもそんなに深い傷ではないからいつもあんまり気にしなかった。それに、手って、人が動作するときに物と接触するのが１番多いのだから傷ができやすいのはしょうがないでしょ？って思うのだけど。
「しょうがないじゃんって思ってるでしょ。しょうがなくても女の子なんだからもっと大事にしなさい」
また怒られちゃった。店長ってば、なんでそんなに手にこだわるんだろう……。
「ハンドクリーム塗ったりしないの？」
ハンドクリーム、家にあったかな。
家に帰ってから店長に言われたことを思い出して、ハンドクリームを探してみたけど、一向に出てこなかったので諦めた。
そういえば手があれてるからハンドクリームこまめに塗ろうって、切り傷できる度に思うのだけど、少ししてハンドクリームを塗る前にハンドクリームを買うこと自体忘れちゃってる。それで、最終的に買いに行くのが面倒になって、結局ハンドクリームのこと自体忘れちゃってる。わたしの面倒くさがりが原因でささくれは後を絶たないのかも。
うーん。そんなに手あれてるように見えるのかな。なんて思って自分の手をまじまじと見た。
あれ？わたしの手ってこんなんだっけ？
また知らない間に切り傷増えてる。これは……、多分紙で切れちゃったんだろうな。
よくよく考えたらこの切り傷だって丁寧に物を取ればできないわけで、わたしの横着な性格が切り傷を増やしているのかも。
どれもこれも大雑把でおっちょこちょいで面倒くさがりなわたしの性格がそのまま手に出てる。自分の身体だから当たり前なのだけど、「あなたってこういう性格よね」って言われてるみたい。なんだか笑っちゃう。『手』にわたしのこと全部書いてあるんだもん。
もしかしたら、顔を見るより、たくさん話すより、手を見たほうがその人のこと分かっちゃうのかもしれない。
そういえば、この間一緒にご飯を食べた彼は「オレ、潔癖症なんだよねー」と言っていたけど、ふと手を見たら指の爪が伸び切ってたから「絶対潔癖症じゃないなこいつ！」って心の中で叫んだし。「わたしガサツだからさー」なんてよく言ってるあの子は、いつもかわいいマニキュアを塗ってて、小さなとこにもオシャレに気を配ってるんだな。 素敵だな。 って思ったし。わたし自身もそうなのだけど、楽器をやってると手にどれだけ練習したかが出る。弦楽器だったら、弦を抑える指の皮が厚くなったり、重さで指が太くなったり。
鉛筆の持ち方でだってペンだこができる位置は人それぞれ違うし。思いついただけでもこんなにその人の好きなことや性格が手には直接影響して目に見え てくる。
手は物と接触するのが１番多い部位だから、１番見えてないようで自分が出る。初めましてって、手を握り合う握手だって手からのほうがその人のことがよくわかるから手を握り合うんじゃないかな。なんて。
店長がなんであんなに『手』についてお節介なこと言ってたのかなんとなくだけど、分かった気がする。そりゃあわたしだってガサツな女の子だななんて思われたくないし。もっと自分の『手』大事にしなきゃいけないな。
そうと決まれば明日早速ハンドクリームを買いに行かなきゃ。
ついでににめんどくさがりな性格も直ったらいいんだけどな。
《終わり》
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