「プロフェッショナル」果てなき芸道、真(まこと)の花を/狂言師・野村萬斎《スタッフ石坂》
僕は日本人であるにも関わらず、恥ずかしながら日本の伝統文化、能と狂言の違いが分かりませんでした。
今回の「プロフェッショナル」は能ではなく、狂言師の野村萬斎さん。その野村萬斎さんが所属する「万作の会」に、狂言とはなにか、書かれていますのでまずは狂言について学んでみましょう。
狂言は600年ほど前、室町時代に能とともに成立し、現在はユネスコの世界無形文化遺産として登録されています。
能の内容は悲劇的なもので、舞踊を中心とした幻想的・象徴的な劇であるのに対し、狂言はセリフとしぐさを中心とした写実的な喜劇です。
日常生活の中の、庶民誰もが持っている生活感情を笑いで表現しています。
「宿命に生きる」
狂言は代々口伝で伝承されてきました。生まれた瞬間から狂言をやる宿命に生き、父万作から子萬斎へ。そして萬斎自身が父となり、また息子へと伝承していきます。自分のすべてを弟子である息子に教えますが、自分が教えていないことを始めた時、息子はライバルへと変わります。
狂言の家に生まれた瞬間から自分の人生が決まっています。当然子供時代は「なぜ自分は狂言をしなければならないのか」理解できません。
日々稽古をしながらも、学校では狂言の話題を避けていました。当時は狂言を嫌っていた時期でした。
にも関わらず、普段の所作に狂言の型が見え隠れしてしまいます。その瞬間、
「僕は、狂言サイボーグだ」
と感じてしまいます。
しかし17歳の時、型通りに動くのではなく、型が自分を動かす感覚を覚えます。この瞬間狂言が面白く感じはじめました。
もちろんそのままうまくいくかというと、そうではありません。
22歳で壁にぶつかります。
ある演目で、父が演じていた狐を萬斎が演じることになりました。しかし型どおりに演じるだけでは表現できないものがあったと気がつきます。父にはまったく近づけていないと。
それもそのはず、万作は20回以上狐を演じてもなお満足できず、試行錯誤を繰り返すほど研究に研究を続けていたのです。
「どうして僕は狂言をやらなくてはいけないの?」
そして萬斎自身も父となります。
息子が3歳になり初舞台を踏む。息子にも同じ道を歩ませることに
「これでいいのか?」
当然この悩みもあります。
息子に「どうして僕は狂言をやらなくてはいけないの?」
そう聞かれた時、萬斎はこう答えました。
「僕もそう思っている」
萬斎自身も、未だに狂言を演じる理由は分かりません。しかし狂言を演じることでしか、答えはつかめない。だからこそ狂言をするのだと。
「ライバルへ」
今回、萬斎は秘曲「狸腹鼓」を演じることになりました。これは一子相伝の秘曲です。父から子一人にしか伝承されない演目です。父万作から子萬斎へ伝承された演目。
萬斎は以前もこの演目を演じたことがありますが、その時はただ父の型を踏襲しただけでした。しかしそれでは演じきれない場面があると感じます。そこで、父から伝承された型をやめ、自分の型を使い、自分の考えるように演じることにしました。
そして舞台上で自分のオリジナルの型を使って演じた時、萬斎は「万作の子」から「万作のライバル」となったのです。
今僕は天狼院書店で、たくさんのことを学んでいます。店主三浦からはもちろん、天狼院にいらっしゃる様々な方が色々なことを教えてくださいます。
僕はまだまだ子供です。教えてもらったことができるようになるだけでなく、教わっていないことまで出来るようにならなければ。
いつの日かライバルになれるように。
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