チーム天狼院

【「最近小説読まない」という方へ】京大文学部生、文学への愛を語ってみました。《三宅のはんなり京だより》


「大人になって、あんまり小説を読まなくなったなー……娯楽として読むなら漫画やドラマでいいし、教養つけたり何かを知ったりするとかいう『情報を得る』ために本を読むのは好きだけど……最近小説は読まないかな~」

ってことを言う人が時々いますね。言いたいことはわかります。うん。

しかしですね。ちょっとそういった方々に、私の文学への愛をぶつけてみようかと思いまして。今日は、私の文学へのきもちわる~い愛を、きもちわる~く語ってみようかと思います。ふへへ。

 

 

評論とか学術書、面白いですよね。

ビジネス本とか自己啓発本も、きっと即効であなたの役に立ってくれることでしょう。

本は、昔の人から、世界の一番遠くにいる人まで、さまざまな人の意見が聞けますし、たくさんのことを教えてくれます。これだけインターネットが発達しててもなお、本が重要な情報伝達手段であることに変わりはないと思います。

そこに書かれてある情報がほしくて、本を読む。

私もまぁ本を読む根本的な動機というのはそこにあるのですが、

文学のよさは、単に「情報を得る」だけじゃないところにあって、そして、だから自分は文学を専攻しているのだなぁ、文学から離れられないのだなぁ……とも思っています。

 

というのも、私が思うに、文学のすごいところは、どこまでいっても、人間ひとりぶんのサイズでしかない、ってとこだと思うのです。

 

たとえば評論などで、何かを説明する、明らかにするとします。

最近の社会でこんな問題がある、歴史上こんなことがあった、ほんとはこれってこういう仕組みなんだよ……とたくさんの「私の知らないこと」が語られます。

それは結局、社会とか歴史とかを、マクロの視点で見ることだと思うのです。

ひとつひとつの出来事や人間を点として、点がどのような動きをするのか、どうしてそんな動きになるのか。

私は概念とか分析とか抽象的な話がとても好きなので、そういった「大きな流れ」を追う本を読むのも、けっこう大好きです。

 

でも一方で、それだけだとどうしても、とりこぼしてしまうものがあるような気がするのです。

 

歴史とか社会といった大きな流れも、結局一個人一個人の意志と行動の積み重ねの結果でしかありません。

あとの人間からすると何か大きな集団や時代の意志みたいなものがあるような気がしますが、

リアルタイムの人間からすると、それぞれがそれぞれの意志を持った結果、それらがある方向に動いたというだけのこと。

個人個人の一生懸命生きた結果として、歴史ができるのです。

もちろんリーダーの意志が集団の行く末を決定することもありますが、それに従うと決めたもしくはそう行動したのは、そのリーダーの下につく人たちの個人のものでしょう。

 

だから私は、結局どんな意志も行動も、ひとりサイズのものでしかないと考えています。

 

そこで、文学は、基本的に個人というものを描きます。

孤独で、救いようがなくて、おばかで、でもなんだかんだ強くて、一生懸命なひとりの個人から見た世界を描くのが文学だと私は思っています。

でも、自分以外の一生懸命さは、どこまでいっても体感することができなくて、想像するしかない。

その手段として、文学を読むというのはとても有効な手段だと思うのです。

昔の人が何を考えてたのかとか、遠くにいる人が何を考えてるのかとか、文学を通してなら体感できる。

 

結局、大きな流れとともに、ひとりひとりの想いをひとつひとつ知っていく、読んで体感してみる、その営みが文学を読むということなのではないか、と。

 

その体感の中で私たちは、自分と重ね合わせたり、自分との違いを知ったりして、感銘を受けたり受けなかったりするのでしょう。

 

「この人が言うことが私はわかる!」とか「この人はそんな世界の見方をするのか!」とか思うことが好きだから。おっきな流れも面白いけど、私はそこですくいきれない個人個人の想いに興味があるから。

私は文学が好きなのだと思います。

 

 

まぁ結局何が言いたいかというと、わたしは本を読むのが好きだ~~~ということなのですが、しかしこの現代において、漫画も音楽も結局のところ本質的には文学なんじゃないかとも思っております。カテゴライズにあんまり意味はなくて、手段が文章か絵か音楽かってところの違いなのではないでしょうか。

 

 

さて、冒頭に述べた、「大人になって、あんまり小説を読まなくなったなー……娯楽として読むなら漫画やドラマでいいし、教養つけたり何かを知ったりするとかいう『情報を得る』ために本を読むのは好きだけど、最近小説は読まないかな~」とかいう意見の人に向けて、ですが。

 

……これ、実は昔の私のことなのです。

 

大学入って、なんとなく小説を読まなくなった時期がありまして。もう小説は卒業なのかな~とか思って、評論とか情報を取り入れるための読書ばっかしていたのです。もっといろんな知識入れたい~!とかなんとか思っていた気がします。

 

しかし。いやいやいやいや。今、昔の私に全力でツッコミをいれたい。

きみの!その!せまくて!おおざっぱな!価値観を!こんな繊細な世の中の切り取り方があるのかとか、世間ではこう言われてるけど実はこうなのかとか、人間の弱さとか強さとか、たくさんたくさん教えてくれる文学が世界にはまだいーーーっぱいあるから!!!!何いっぱい読んだ気になってんだ、自分!!!!!

と、今なら思うのです。

まだ読んでない文学、触れてない作者さんはたくさんいます。

だから、これからも私は文学が好きなのだと思います。

 

 

ちなみにちなみに、私が「文学のよさはここにあるんだよぅ」って思うきっかけになった本は、

イムレ・ケルテースさんの『運命ではなく』、米原万里さんの『オリガ・モリソヴナの反語法』あたりです。

とおおおおってもおすすめです。読んだらぜひ私と語りましょう~~ぜひ三宅までご一報くださいね!

そんなこんなで、冬の私の引きこもり度は加速していくのでした……。あらら。家の中の読書さいこう。

 

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2014-12-21 | Posted in チーム天狼院, 記事

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